3-1 『風邪のときは寝なきゃダメ!』
おっかえりー♪
おっつかれー♪
さーさー♪ いつものハグしよっか♪ お姉ちゃんのおっぱいの中に飛び込んでおいでー♪
はい、ぎゅーーーーーーーーーーーー……っと♪
ふふっ。おかえりなさーい♪
それにしても、毎日毎日遅いねえ。今日は多分、終電ギリギリだよね?
ご飯は、お外で食べてきたんだよね? うん。電話してくれてありがとー。
そんじゃ、このままお風呂入って寝よっか? 明日も早いだろうし、ぐっすり寝ないとねー。
……ん? なぁに?
……これから、家でお仕事しなきゃいけないの?
どーして!?
……会社で仕事が終わらなかったから……?
…………。
だーめーでーすー。
お姉ちゃん、キミのこと離さないから。
今日はこのまま、お姉ちゃんと一緒に寝るよ! いいね!
いーえー。反論なんて聞きませんー。
家でまでお仕事なんてしたら、もう、お仕事しかすることなくなっちゃうぞー!
……別にさ? 毎日定時に帰ってきて、それで、何か月かに一回、どうしても終わらない仕事がある、っていうなら、まだギリギリ分かるけど……
毎日夜遅くに帰ってきて、それなのに家でも仕事しなくちゃいけないなんて……
そんなの、めっ、だよ!
というわけで、お仕事なんて放り投げて、このままお姉ちゃんと寝落ちしよう!
今日は、キミが寝るまで、お姉ちゃん、離さないからね!
まったく……。
キミを、三食しっかり食べさせることには成功したけど……今度は、しっかり睡眠をとる習慣をつけさせないと、いけないみたいだね……。
ほら、ベッド行くよ、ベッド! ついてきなさーい!
それで、服、着替える! スーツのままだと疲れちゃうからね! キミはいつもジャージで寝るんだっけ? じゃ、それをさっさと着る!
それから……
ベッドに、どーんっ、だー!
はいっ。今日はこのまま、キミがちゃんと眠るまで、お姉ちゃんがずーっと添い寝するからねー。しっかり見張るから、逃げようとしたって無駄なんだから。
えー? 歯磨き? まー、別に、一日くらい磨かなくたって死なないでしょ。
とにかく今日は寝ること! いい?
んもー。そんな顔しないのー。
本当に、キミは、自分のことに無頓着すぎ。
しっかり食べて、しっかり眠って、ストレスを溜めないのが、健康のためには一番でしょー?
生活するためにお仕事をしてるはずなのに、仕事のために生活を放り出すなんて、本当におかしなことだからね?
休むことは、生きていくために必要なことなんだよー?
それなのにキミは、お仕事を家にまで持ち帰ってきて……
あー、もう、なんかイライラしてきたー!
お姉ちゃん、結構怒ってるんだからなー!
このっ、このっ。キミなんか、お姉ちゃんの胸の中で、ぐっすり安らかに夢も見ずに八時間熟睡してしまえー!
はぁ……。まったくもう。
……本当に、キミは、真面目だねー。
でも、真面目すぎるっていうのも、不健康のもとだからね。
お仕事なんて、てきとーにやって、てきとーに帰ってくればそれでいーの。真剣にやるのは趣味だけでいーの。
それにさ。キミ一人でお仕事を抱えすぎると、周りの人は、キミが「お仕事を大量に振っても大丈夫なヤツ」だって思いこんじゃうよ? そうなると、どんどんお仕事が増えて行って、いつか潰れることになっちゃうよ?
だから、自分の限界の六割くらいで、もう無理ですって悲鳴をあげて、周りの同僚とかに押し付けるくらいでちょーどいいの。
キミは少し、賢くサボるってことを、覚えたほうがいいよ。
……うん。そーだね。そーいうわけだから、その第一歩を踏み出すことにしよっか。
明日、ズル休みしようぜー! 会社サボって、お姉ちゃんと一日ゲームしよっか♪
うんうん。決まり♪
うーるさーい。お姉ちゃんが決めたので、もう覆りませーん。
えー? 会社には、なんか適当に、「仕事で根を詰め過ぎて熱出て風邪引きましたー」って言っときゃいいでしょ。
どーせ、有給なんて腐るほど余ってるんじゃない?
大丈夫、ちゃーんとお姉ちゃんが電話してあげるから♪ 会社の人もさすがに、お姉ちゃん相手には文句言いづらいでしょ。
ふふっ。キミが出てこられなくなった、ってなったら、キミの仕事は別の人がやってくれるでしょ。
いいことづくめだねー! じゃあ、そーいうわけで!
ね?
うんうん。素直でよろしい。
それじゃ……今日は、明日の心配なんてなーんにもせずに、ぐっすり眠れるね。
……うん。ふふっ。よかった。
……あのね。お姉ちゃんは、本当に、キミが心配なんだよ。
キミに……毎日、幸せでいて欲しいの。
それだけなんだ。
……うん。ちょっと、熱くなっちゃってゴメンね。
ううん。いいの。
もう眠い? ふふっ。少し話し込みすぎちゃったね。すぐに寝かせるって言ったのにね。
うん。おやすみなさい。
…………。
……もう寝ちゃった?
……ふふっ。可愛い寝顔……♪
……ちゅっ。
……おやすみなさい♪