Track 10

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本編B 我慢ルート TRACK4:『プロローグ お嬢様の憂鬱』

※通常ルートのTRACK6と同じ内容になります。 ―――――――――――――――――――――――― ■夜 杏樹の自室にて ♪SE:扉をノックする音/こんこん 【杏樹】 「あいてるわ」 ♪SE:扉をあける/がちゃ 【杏樹】 「あっ、じいや……。あら本当、もうこんな時間だったのね……」 【杏樹】 「ココアを淹れてくれたの? ありがとう、いただくわ」 【じいや】 「そろそろお休みになられますか?」 【杏樹】 「ええ、もうベッドに入るから……そうね、カップは明日の朝、下げて頂戴」 ♪SE:扉がしまる/……ばたん 【杏樹】 「……はぁ。こんな時間……もうこんな時間なのよね」 【杏樹】 「うううっ、今日もかかってこなかったじゃない……」 【杏樹】 「なによっ、もぅ……! せっかく私の番号教えてあげたのにっ! 一週間もかけてこないってどういうことなわけっ!?」 【杏樹】 「初めてっ、家族以外の人、アドレス帳に登録できたのに……うぅっ」 【杏樹】 「着信音とか、写真とかもちゃんとっ、ちゃんと変更して……あいつの……ぐすん」 【杏樹】 「ずずず……ううっ、ココアおいしいわ……」 【杏樹】 「脈……ないのかしら……」 【杏樹】 「ずずずっ……熱っ……」 【杏樹】 「……電話が来た時のために、ちゃんと……話題も考えて、全部まとめてあるのに……」 【杏樹】 「……最初は、今なにしてたのか聞かれるでしょ?」 【杏樹】 「そうしたら……こほん」 【杏樹】 『あら? あんたにしては良いタイミングでかけてきたじゃない。私はお風呂から出て、髪を乾かしてたところよ? セクシーなネグリジェ姿だけど、あんたには刺激が強すぎるかしら?』 【杏樹】 「こう、大人な女性の魅力で主導権を握るじゃない? ほんとはパジャマだけど……電話だからわからないものね」 【杏樹】 「それから、世間話を挟んでだんだんとムードのある話で盛り上がって……」 【杏樹】 「いい雰囲気になるんだけど、ここで焦ってはだめ。巧みな恋愛の駆け引きで、あえて電話を終わらせようとするのよ」 【杏樹】 『あら、もうこんな時間。つい話しすぎてしまったかしら』 【杏樹】 「もちろん、あいつは話を終わらせまいとするわ。私ともっと話したいはずだもの。そこで私はすかさず……」 【杏樹】 『んふふっ。そんなに一人が寂しいわけ? しょうがないわね、今度は私からかけてあげるから……ね?』 【杏樹】 「これよこれ! 今度は私からの電話を待って、あいつが気持ちを募らせるのよ!」 【杏樹】 「……なーんて、考えてたけど……ずずっ……はぁ……」 【杏樹】 「……うぅ」 【杏樹】 「……うぅうああっ、もおぉおっ!」 【杏樹】 「なんで私がこんなにやきもきしなきゃいけないわけっ!? こんなのあいつの役割じゃないのよぉ!!」 【杏樹】 「そもそもっ、受け身の作戦が間違いだったわ! 私から電話しちゃえばいいじゃないっ」 【杏樹】 「そうよっ、なんでそうしなかったのかしら。こっちから電話をかけて、ペースを握ってやればいいんだからっ!」 【杏樹】 「ただ、この携帯のアドレス帳から、あいつをえっ、えらんっ、で……」 【杏樹】 「はっ、発信ボタン……ああうっ、これ押したらあいつにっ、あいつに……うぁっ、あっ、ああぅっ……!」 【杏樹】 「うう……忘れてたわ。恥ずかしくて電話できないから、待つことにしたのよね……はぁ……」 【杏樹】 「ずずずっ……」 【杏樹】 「ううっ……でも、このままじゃ……いつまでたっても進展なさそうだし……」 【杏樹】 「……ずずずっ……あら? なにかしら、カップの下にメモ?」 【杏樹】 「じいやの文字だわ。『お嬢様なら大丈夫です 勇気をお出しください』? ……じいやったら……」 【杏樹】 「うん……」 【杏樹】 「すーっ、はーっ……。すーっ、はーっ……」 【杏樹】 「そうよっ! 勇気を出しなさい杏樹! 大丈夫よっ、いつもどおりでいいんだからっ!」  【杏樹】 「素直になれなくたって、失敗したって、それでも受け入れてくれたのがあいつじゃない! だからっ、だからこんなに、こんなに好きになっちゃったんだからぁっ!」 【杏樹】 「強気でっ、いつもどおり……文句の一つでも言ってやろうじゃない!!」 【杏樹】 『おそいっ! 何秒待たせるつもりよっ!!』 -おしまいっ!-

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