病み巫女の奏でる前奏曲(物語冒頭)
――時は平安
鷺宮神社には一人の巫女が居た
鷺宮家の当主であり
神主の男に恋をしていた
当主には妻が居た
叶わぬ恋であると知りながらも
巫女は想い続けた
寵愛を受けられずとも
生涯をかけて想い続けると決めた相手
しかし
その終わりはあまりにも唐突だった
満月の綺麗な夜だった
当主夫妻は不在
巫女は一人で留守を任されていた
深夜
外に誰かの気配を感じた
とは言え
山の中にある神社の離れ
時折
野生の獣たちがうろうろとしている
いつもの事なのであまり気にはしなかった
それが悲惨な結末の引き金とは知らず床につき目を瞑ったその時
突然影が襲いかかる
慌てて目を開けると
視界に入って来たのは小汚い男の姿
如何にも下品そうな男だった
身の危険を感じ声を上げようとするが
布のような物を噛まされてしまう
そして
その陵辱劇は幕を開けた
巫女は泣いた
愛する当主様の為にと守り続けた純潔を奪われ
全てが崩れ落ちた気がした
陵辱は数刻に及んだ
既に巫女にはまともな思考能力などなく
自らその惨劇を求めてしまっていた
獣のように求め貪り
ただ獣のように喘ぐ
男はそんな女を
ただひたすら犯し続けた
それからどれ程の刻が過ぎただろうか
その男は死んでいた
他ならぬ巫女の手によって殺されたまともな理性など無く
あらゆる快楽を求める
殺戮により得た快楽
なら
自らを殺せばどれほどの快楽を得られるのだろうか
巫女は
無意識に刃物で自らを貫いていた
そして笑う
ただひたすら笑う
喘ぎ、苦しみ、それすらも快楽に変え
こうして巫女は齢 19 年という短い生涯を終えた