Track 1
■01
ぶっは~、あっぶなー。
風呂で寝るとこだった……は~~、ビールビールっと……
あと、なんかツマミは……お~。
唐揚げ発見。
いいよいいよ~♪
んふふ。
んしょっと……はぐ!
んぐっ、んぐっ、ん~~っぷはぁ!
あーっ美味い!
明日が休みだと思うと、ビールもひときわ美味しいわね~。
さてと、唐揚げは……うーん。
あっためるの面倒くさいからこのままでいっか。
今日揚げたやつだろうし……はぐっ、んぐんぐ。
んむっ、美味い!
いやいや、我が弟ながら、なかなかのお手前で……むぐむぐ、んむ。
あ……起きてたんだ?
はいはい、ただいま~……この唐揚げ、食べていいのよね?
はーい、いただいてまーす。
あんたも食べる?
……じゃあ飲む?
はぁ、何よ。
ノリ悪い。
んぐっんぐっ、ん~っくはぁ!
はふ~、いや~。
残業後のビールと唐揚げは最高……あぁ、別にあっためなくても美味しいわよ?
いつもありがとうね~。
あんたがいてくれて助かるわ。
つっても、帰りにコンビニ寄らなくてもいいってだけだけど~……んふふっ。
ん?
何よ、そんな不満げな顔……え?
違うって何よ……話し?
あたしに?
何の?
あぁ、はいはい。
んじゃ、黙ってるから、何?
うん……部屋を?
出てく……出てくって、この部屋を?
何よいきなりね?
え……あー、そっか。
もう卒業だっけ。
うわー、もうそんな時期だっけか。
んは~、時間経つの早すぎ……まだ春になってもらっちゃ困るんだけどなぁ。
いやね?
取引先が……って、そうじゃなくて。
何よあんた、ここ出てくの?
そっか、就職決まったしね。
家賃くらい自力でなんとかなる、か……ふーん。
ま、そりゃそうよね。
一人前の男なら、いつまでも姉ちゃんの家に居候とか、恥ずかしいもんね?
……ま、清々するわ。
なはははは。
ふーん、そう……家は?
もう決まってるの?
……まだ?
何よそれ、相変わらずグズね。
あんたの仕事先って、確か……え。
大学より近いんじゃないの?
あははっ、何それ、笑える。
だったら出ていかなくても……あー、うん。
ま、そういうのじゃないか。
はいはい、一人暮らしねー、一人暮らし……うーん……べ、別に何でもないわよ……清々するわって言ってるの。
やっと大学時代みたいに気楽な一人暮らしに戻れるわ。
まったく、あんたと来たらあたしが就職していい部屋に住み始めたと思ったら、いきなり居候しに来てさ?
いい迷惑だったわよ。
私立なんて入るからお金かかっちゃったんだからね?
あんたもがっつり働いて、姉ちゃんみたいにさっさと昇進して、お母さんたちにお金返すのよ?
親孝行、したい時に親はなし。
なんて情けないじゃない……まぁ、うちほどじゃないけどあんたのトコも一流企業だし?
ちゃんと努めてれてば大丈夫でしょ。
せいぜい頑張んなさい……ん?
何よ、浮かない顔ね。
は?
大丈夫って何が……あたし?
何よあんた、あたしの生活の心配してるわけ!?
馬鹿ね、子供じゃないんだからどうとでもなるわよ。
それに大学生の時は一人暮らししてたんだし。
そ、そりゃ、今の仕事は忙しいけど……そのおかげでお金はあるんだから、衣食住で困ることなんてないわ。
え?
そ、それはないけど……別に、自炊しなくても食事はできるでしょ?
洗濯だって、く、クリーニングで……掃除は、休みの日に……ハウスクリーニング頼めばいいじゃないの!
……はぁ!?
そ、そんなことあんたに心配される必要ないわよ!
ったく!
ちょっと社会人になるからって、あたしと同じ立場になれるとか思ってるワケ?
あんたみたいなヒヨッコに心配されるほどあたしは落ちぶれてないわよ!
ん?
……ま、まぁね?
心配してくれるのは、そりゃ……わ、悪かったわね、まともにスーパーで買い物もできなくて。
野菜や魚の見立てができる大学生男子の方がおかしいと思うんだけど?
……はいはい。
ふ~~……まぁいいわ。
それじゃ明日、買い物に付き合いなさい。
就職祝いに仕立てのいいスーツでも買ってやろうじゃないの。
いいからっ、お金持ちのお姉様に任せておきなさい♪