焼き上がり
いかがですか、お味は。
……わたしの感想ですか。
……率直に申し上げて、風味も食感も最低です。
生地の段階で店長の我慢汁と精液をたっぷり吸ったパンなのですから、当然の結果ですね。
パン生地に店長の精液を練り込むつもりは毛頭なかったのですが、性欲に溺れる店長の姿があまりにも気持ち悪かったので、つい。
……店長。
店長はパンがお好きですか。
パン屋の店長がパンに対して欲求を抱くことは、ごく自然なことだと思います。
パンは食べるものですが、パンに対して湧き上がる欲求は、食欲だけではありません。
自分で作るパンの質への欲求。食べる人を満足させたいという欲求。パンを配置して売り場を構成する欲求。こういった心理的な欲求は、はじめから持っていなくとも、当人の気持ち次第で、後からいくらでも付け足すことができます。
しかし店長の場合は、性欲という生理的な欲求が後から生まれたわけです。
店長は、パンに対する欲が深すぎるあまり、心理的欲求だけではその穴を埋めることが出来ず、無意識のうちに性欲を生じさせてしまった、のかもしれません。
その性欲を……パンではなく女性に向くように矯正するか、あるいは意識的にパン作りへのエネルギーに変換することで発散していただければと思ったのですが、どちらも成功とは言いがたい結果に終わりましたね。
……とりあえず焼いてはみましたが、やはりこれは失敗作ですね。
店長のおちんちんと一緒に捏ねた生地ですから、美味しいパンになるはずがありません。
調子にのって30個も焼いてしまいました。
…………お食べになるのですか。
ふむ……。
……店長。わたしが間違っておりました。
食べられるパンは、失敗作ではない、と、思います。
あむ……。