プロローグ 魔王プエル、監禁室その1
【プロローグ】*魔王城、地下監禁室にて
《古い頑丈な扉が開く音、足音が近づく》
[魔王プエル]:
やぁ、元気かい? 勇者くん。
調子はどうだい?
キミから採取した不死のエレメントだけど、あれは中々のものだ。
とってもおいしかったよ?
《手足の拘束を外そうともがく ギリギリギリ…》
おっと、無駄な抵抗はしないほうがいい。
体力がもったいないからねぇ?
キミの手足に巻き付いている蔦(つた)は、アルラウネのものだ。
簡単にはほどけない。
《勇者 ……》
キミがここに来る少し前のことだけど、生態実験をしたんだ。
僕の呪術で強化された『アルラウネの蔦(つた)』は、予想以上に頑丈でねぇ?
そのとき縛り付けてあったミノタウロスの体から、バリバリ音が聞こえたよ。
体中(からだじゅう)の骨が砕(くだ)けて、目や口や耳や鼻や…色んなところから血を吹き出して死んでしまった。
つまりさ、そういうことなんだ。
《勇者 ……》
暴れると絞(し)まるよ?
《ギリ、ギリリ…》
まぁ簡単には、殺さないけどね? ふふっ。
さてと、本題に入ろうか?
キミのエレメント、確かに上質なものだ。
飲めば体中(からだじゅう)の細胞に力がみなぎる。
けど…何かがたりない。
キミがまだ若すぎるからかなぁ?
コクがたりない気がしたんだ。
のど越しにこう…からみつくような濃厚な味わいっていうか、あとから鼻腔(びこう)をつきぬけて来るような、芳醇(ほうじゅん)な香りというか…。
これは多分、経験によるものだと思う。
キミはもっといやらしい経験をしないとねぇ?
心の底から射精の悦(よろこ)びを知らないオスには、濃いやつは出ない。
《勇者 ……》
だからさ、搾精ポンプは外してあげるよ。
《グチュ…ブヂュ…》
誰かの手でしごいてもらおうか?
キミが僕へ向ける反抗心の源(みなもと)になっている、あの子のこと…。
《勇者 …!》
ふふっ、急に目が輝いたねぇ? わかりやすい。
確かキミの世話係で回復役のプリーストだった、ローラとか言ったっけ?
まだ思う存分ヤってなかったんだろ? あっはは。
《勇者 …っ》
ネクロマンサーは死霊をあやつることができる。
キミたちパーティが道中に出くわしたスケルトンやゾンビも、僕が造った。
《勇者 ……》
わかるかい? アンデッドの目は僕の目だ。
だからキミたちパーティのすべてを、僕はいつだって見ることができた。
この東方ルートが容易に攻略できるなんて、計算違いも甚(はなは)だしいよ。
アーク・ネクロマンサーは、どんな勇者も追い詰めてゆくことができる。
呪縛(じゅばく)のプエルを舐めてもらっては困るよ?
ふふっ。
いいパーティだったけどねぇ?
あっはは、あはははっ。
《勇者 ……》
キミに時間をあげる、僕は辛抱(しんぼう)づよい。
ここにある500本のボトルすべてに、キミのエレメントを注(そそ)ぐんだ。
それができたらキミを人大陸(ひとたいりく)に帰してあげてもいい、「語り部」としてね。
100本も越えれば、きっと熟成したエレメントを出せるはずさ。
一晩眠って体力を温存しておくといい。
そうすれば、感動の再会がまっているよ?
じゃあね、また会おう。
《一瞬で消える》
つづく