領主さまに呼ばれて…
【ミリア】
いらっしゃいませ……お待ちしておりました
【ミリア】
どうぞ、領主様がお待ちです
私の後に続いてお進みくださいね
【ミリア】
ふふっ、そんなに天井を仰ぎ見ながら歩くと怪我しちゃいますよ?
手を繋いで……横並びに行きましょうか
【ミリア】
あら、とても柔らかくて小さい……でも、震えてる
……緊張してらっしゃるのですか?
【ミリア】
大丈夫ですよ、領主様はお優しい方ですから
……ちょっとSッ気の趣味が強いかもしれませんけどね
【ミリア】
あぁ、いえいえ……こちらの話です
あ、着きましたよ。ここが、領主様のお部屋になります
【ミリア】
領主様、客人をお連れいたしました
【ヴィエラ】
入りなさい
【ヴィエラ】
ようこそ我が根城へ
遠慮することはないわ、傍にいらっしゃいな
【ヴィエラ】
ふふっ、キョロキョロしてかわいい子だこと……
ミリア、ご苦労様。お下がりなさい
【ミリア】
承知しました……ご用命の際はお声がけくださいませ
【ヴィエラ】
あの子はね、私の愛娘なの
今は勉強のために給仕をさせているけれど、いつかは私の後を継ぐわ
さて……キミをここに呼んだのは他でもない
キミと、キミの恋人が近々結婚するという報告を耳にしたから
この地のしきたりは知っているでしょう?
そう……結ばれる男女の初夜を前に、その地の領主に身を捧げなければならない
初夜権……キミは納得して、ここまできたのかしら?
それとも……彼女に泣かれ、心にモヤを抱えたまま応じた?
……その様子を見ると後者のようね
問題ないわ、それでいいの。なんの疑問も抱かないほうがどうかしてるもの
そうね……ではまず、事の成り行きから始めましょうか
この制度、元々は逆でね……男の領主が、女性の初物を頂くための制度だったの
どこのヘンタイが作ったかわからないけど、理由はこう
姦通していない女性は魔を宿すから、取り除くという話
バカみたいでしょ? でも、まかり通るの
前領主もそうだった、たくさんの女の子の初めてを貪っていったわ
私もね、その被害者……なんの疑いもなく捧げてしまった
でもそれが間違いだってことに気づいて、説得して……みんなで反乱を起こしたの
発案した私がリーダーとなり、決起してくれた住民を率いた
男も女も関係なく、老人も入り混じって……
女の怒りよりも、男の怒りが凄まじかったわ
初夜を捧げることが無意味だと知ったとき、くすぶっていたものが爆発した
彼女を持つキミならわかるんじゃないかしら?
愛する者を、くだらない制度のために他の男に捧げなければならない気持ちが
逆もしかり……キミの彼女も、本当はここに、キミを送りたくはなかった
その現状をね、当てはめれば想像しやすいと思うの
とても悩んで、相談して、送り出してもらって……
キズモノになって帰って、ぎこちなく過ごして……
それが原因で別れてしまった者もいるし、親も……
手塩にかけて育てた娘が、愛する夫以外に抱かれるなんて……この上ない苦痛
そうして猛り狂った住民に前領主は攻められ……
大した軍を保有していなかったおかげであっさり落ち、投獄
そして私が新たな領主に選ばれて……制度をかえた
それが、逆初夜権……私が、男の子の初めてを貪るの
フフ、ヘンな話でしょう? どうしてこうなったのか……
本当はね、制度そのものを白紙にしてやろうかと思ったんだけど
そうね……その話の続きは、もうちょっと後にしましょうか
さぁおいでボウヤ……私の隣へと……