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あら……こんな山奥に、珍しい。 もしかして、旅の途中ですか? 宿をお探しで。まあ、そうでしたか、道に迷ってしまったと……。 ええ、目的地はこの山の先にある、大きな街でしょう? 二股の道を間違えてしまったようですね。 最近は、街への道もだいぶ整備されて、ここに迷い込む旅人も減ったものですけれど、 ごくたまに、あなたのように迷い込んでしまう方もいらっしゃるんです。 もう夜も遅いことですし、よろしければ、私の宿へおいでになりませんか? ふふっ……申し遅れました。 わたくし、この山奥でひっそりと宿を営んでおります、ヤコと申します。 さあ、こちらへ。夜は冷えますでしょう。 早く温まって、ゆっくりとお休みになって下さい。 このような山奥に……こんな集落があるなんて、驚かれましたか? 実は、ここは口伝えでしか知られていない、花街なんです。 街を追われた人たちが、ひとり、またひとりとここへ集まり…… そして、いつしか街になったんです。 ご覧のとおり、こんな山奥でしょう。 生きていくためには、こういう形での繁栄しか方法がなくて。 それでも、少しずつ評判を聞いた方がいらしてくださるようになったので、 今ではこのように華やかな街になったんです。 この街の噂、聞いたことはございませんか?まあ、そうですか。 この先の街へ行かれる方には、そこそこ名のしれた土地なんですよ。ふふっ。 まあ、もともとそういった目的の方にしか知られていない土地でしたし、 旅で迷いこんでしまったあなたにとっては、不思議な場所ですよね。 昔話が長くなってしまいましたね。 さあ、どうぞ。中へお入り下さい。 今夜は珍しく、お客様もあなただけですので、どうぞ自由におくつろぎ下さいませ。

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