第1話「こころのすきま」
妹式失恋特効薬 台本
■1「こころのすきま」
あー、お兄ちゃん、おかえりー！
ん？どうしたの？なんだか元気がないみたいだけど……
「ほっといてくれ」って……
そんなことできないよ。
梨花の大好きなお兄ちゃんがこーんなに落ち込んでるのに、ほっとけるわけないじゃないかぁ……
ほら、逃げないのー
ね？ちゃんと梨花にお話ししてごらん？
もしかしたら力になってあげられるかも知れないし……ね？
それとも、どうしても言えない事なの？
梨花には……秘密なこと？
ふんふん……え？彼女さんと別れた！？
え……なんで……？
あんなに仲良さそうにしてたのに……
そっか……うん。そういうことも、ある……のかな。
大丈夫だよ、きっともっといい人が見つかるって！
お兄ちゃんは素敵な人なんだもん、気にかけないほうがおかしいよ！
「失恋して落ち込んでる時にそういう励ましは逆効果」……
……うん、そうだよね。ごめん……
……ね、お兄ちゃん？
もしよかったら……もし良かったらでいいんだけど……
梨花が彼女さんの代わりになってあげようか？
「寝言は寝て言え」？
違うよぉ、本気なんだよぉ！
梨花が、お兄ちゃんが彼女さんとしたかったこと、全部叶えてあげる。
だってまだまだ心残りなことがいっぱいあるんでしょ？
だからそんなに落ち込んでるんでしょ？
だから……お願い……
……梨花ね、羨ましかったの。
お兄ちゃんがいつも彼女さんのことを楽しそうにお話ししてるとこ見て、梨花、すっごく羨ましかったんだ。
こんなに近くにいるお兄ちゃんが、こんなに大好きなお兄ちゃんが、どうして梨花の彼氏じゃないのかなって。
いっつも言ってる大好きって、そういう意味なんだよ？おにいちゃん。
やっぱり気づいてくれてなかったんだね……
梨花は……梨花は本気、だよ？
だからこんなことだって……んちゅ。
できちゃうんだよ？
……ねえ……おにいちゃぁん……
梨花……ずっとずっと、お兄ちゃんの恋人になりたかったの。
お兄ちゃんみたいに大好きな人と兄妹だなんて、とっても、とっても嬉しいんだけど、
でも……切なくて……
だからね？彼女さんの代替品としてでもいいから、相手がいないちょっとだけの間でもいいから、梨花を彼女にして……欲しいの。
そしたら、お兄ちゃんの言う事なんだって聞くし、梨花にできることならなんだってしてあげるよ？
ダメ……かな？
「ちょっとだけなら」？本当に？
やったぁ！これでお兄ちゃんと恋人同士だぁ！
うふ、うふふふ～
お兄ちゃん、お兄ちゃん、おにいちゃぁん……
「近い」？
ふふ、これは恋人同士の正しい距離の在り方だよ？
そして……んちゅっ）
こんな風にちゅ、ちゅっ、ちゅぅ～って、恋人同士のキスをするんだ……
ほら、お兄ちゃん…………はぷ。
ちゅる、ちゅ、ちゅむ……ちゅ、ちゅう……
お兄ちゃ……んぷ、ちゅ、ちゅぷ、れりゅ……ぷは……
んふふ～、恋人同士って感じするね～
甘い、あまぁい……んぷ
ちゅる、ちゅ、ちゅむ……んぷぁ……はぷ、ちゅ、ちゅる……
ちゅ、ちゅるる、ちゅぅ……
お兄ちゃん、もしかしてこれがファーストキスなの？
そっか、前の彼女さんとはキスまでいかなかったんだ……
いいよ、梨花ならいっぱいさせてあげる。
いくらでもして……いいよ？
それこそ、夜が明けるまででも、ずっと相手してあげるよ……んちゅ
ちゅ、ちゅ、ちゅぷ、ちゅるる……んぷ、ちゅぷ、れちゅ……
梨花？梨花も初めてだよ？
当然だよ。だって梨花はずーっと、お兄ちゃんしか見てなかったんだもん。
他の人なんて興味ない。
お兄ちゃんだけが梨花にとっての男の人なの。
「初めてにしては上手」？
上手って、キスが？
んふふ～、こういうこともあろうかと、日々鍛錬を重ねていたのだよ、お兄ちゃん。
「具体的には」？
そりゃ……ね。いろいろだよ、いろいろ！
本を読んだり、実際にこう……れる、ちゅるる……
って、手を使って練習してみたり……って、なんてこと説明させるんだよぉ！
……もう、恥ずかしいからこの話は終わりー！
ほら、気を取り直して……ちゅぷ……
はぷ、んぷ、ちゅぷ、ちゅぴちゅぷ……んちゅぅ、ちゅ、ちゅう……
れりゅ、ちゅ、ちゅぷ、ちゅ、ちゅる……んちゅ、ちゅ、ちゅるる……
ぷはぁ……
はぁ……はぁ……
……梨花の気持ち、わかってくれた？
梨花がずっとお兄ちゃんに伝えたかった想い、伝わった……かな？
じゃあ、ほら。
「なにしてるんだ」って……
これは、"ぎゅーってして欲しい"の合図だよぉ。
恋人同士の挨拶は、キスとハグって決まってるんだよ？
ほらほら、お兄ちゃん。ぎゅーってして？
梨花を、彼女さんに送るはずだった愛情で、いっぱいにして？
えへへ……ちょっと痛い……
でも、お兄ちゃんの気持ちが伝わってくるみたいで、きもちい……
んふふ～、お兄ちゃん、大好き！