Track 1

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はぁい、ただいま~……いらっしゃいませ、部長。わざわざお越しいただいてありがとうございます。 さぁ、どうぞお上がりください。こちらスリッパです、どうぞ。 え、ずいぶんとラフな格好をしている、ですか? そうですか? でもお家ですもの、部長の下で働いていた時のようなスーツではありませんけどね、ふふっ……似合いませんか? 私のこういった姿をご覧になるのが初めてだから……そうですわね。部長には何度かお食事に連れて行っていただきましたけど……。 あら、立ち話だなんてはしたない。こちらへどうぞ。 そちらのソファへどうぞ。え、いつもは彼がここに座っているのだろうって、それはまぁ、2人きりの時はそうなりますね。でも今、彼は遠い異国の地ですからね……。 まったく、恨みますわ部長。せっかく私と彼の結婚が決まったと思ったら、彼を出向させてしまうなんて……。 えぇ、この仕事が将来の幹部候補には必須だというのはもう聞きました。 部長が意地悪で彼を出向させただなんて思っていませんよ。でも、私はもうすぐ退職してしまいますし、会社への不満はこうして部長に言うしかないじゃありませんか、ふふっ。 でも、部長には感謝しています。いつも彼の仕事状況を教えてくださったり、こうして私の心配までして訪問していただけて……。 可愛い部下同士の結婚なんだから当然だ、ですか? ありがとうございます。部長のそういう人情のあるところ、私はとても尊敬しています。彼もきっと同じ思いですわ。ですから、仲人は部長にお願いするわけですし……。 式の日取りですか? 彼が出向から戻らないと……あと半年ほどですよね。 それまでは寂しい独り暮らしですが、毎晩電話はしていますし部長も度々こうして訪ねていただけますし。 実家に戻っていようかとも思ったのですけど、せっかく彼が買ってくれたお家ですもの。彼がいない間も、しっかりと掃除しておかないと……実家では、掃除もできませんし。 あぁいえ、お手伝いさんがいますので……私が掃除なんてしたら、お手伝いさんたちが悲しげな顔をして言うんです、私たちの仕事を取らないでください、って……そんなつもりはないのに。 キミは本当にお嬢様なんだな? いやですわ部長、うちなんて大したことはありませんよ……祖父がほんの少し頑張っただけの成り上がりですから。私にはなんの財産もありません。 私が持っているのは、彼の愛情だけです。彼からの愛情、彼への愛情。これだけあれば、私たちは暮らしていけますから。 彼がお仕事をして、私は家を守る、それだけでいいんです。 え、子供ですか? いやだ恥ずかしい……そうですね、男の子と女の子1人ずつがいいかなと思ってるんですよ。 彼も微笑んで頷いてくれました。早く授かるといいねって♪ でも、彼のいない間に授かってしまっても困りますよね……。 え? 子供は天からの授かり物ですもの、もしかしたら彼のいない時にでも……。 え? まだ教えることがあった? 私にですか? 部長からの最後の教育……まぁ、退職する私に、部長自らまだなにかご教授いただけるんですか? 本当にお優しいですね。 でも、ご迷惑ではないですか? いいんですのね。 ありがとうございます。それでは、なにをお教えいただけるのでしょうか……夫との夜の生活について? 夜の生活……あぁ、なんとなく聞き及んでおります。でも詳しくは……。 そうだろうな、って……さすが部長。私の至らないところなどすべてお見通しですのね。 でも、部長に教えていただけれるのなら安心です。よろしくご教授のほどお願いいたします。 彼が帰ってくるまでの半年で部長の教えられるすべてのコトを私に教えていただけるのですか。ふふっ、すごい。彼が帰ってきたら、驚かせてあげられますね♪ ただ、どんなことをしても部長を信用して欲しい? そんなの当たり前じゃないですか、私も彼も、部長のことを誰よりも信頼していますわ……。 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

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