1.唐突な暗殺…ではなく逆夜這い
【かさね】
――動かないで……命までは取らないから
……ん、そう……それでいいの
そのままじっとしてて……
……意外ね、日本一の剣豪と謳われる人が、夜中の奇襲とはいえこうも簡単に……
どうして刀を傍に置いていないの?
こうして……命を狙われることなんてザラでしょう?
それとも……邪魔な者はすべて斬り捨ててきたの?
恨みを残さず……難しそうだけど、あなたならありえるかもね
まぁ、運が良かったのでしょう
おかげでこうして、あなたの命を握る立場になれた
……緊張しているのね……汗が噴き出てきてる
でも声を発しなかった……さすがだわ
声を出していたら、殺していたかもしれない
そんなの面白くないわ、お互いにね
この屋敷に、他に人はいない
あなただけ……入る前に確認させてもらったわ
……暗殺じゃないの、これは……夜這い
私はね、とある里を拠点とした、とある一族の者
忍者……くノ一……女しかいない、特殊な里よ
そこに住むくノ一はみな、男児を産むことができないの
強き外部の男と交わり、孕み、産み落とす……
そうして強固な遺伝子を繋ぎ、生き永らえている
そう……私は今宵、あなたの子種をもらい受けにきた
日本一の剣豪……その血脈を、私の中に欲しているの
いきなりのことで申し訳ないと思っているわ
でもこちらも必死……今だけ、弱き者として貪られてもらうわ