1
およ?そこの挙動不審な君~、そんなとこで何してんのー?
ここ、お店の前なんですけど~…
ちょ、そんな大声出してビビんなくてもいいじゃん
確かに急に声をかけて悪かったけどさ
んぅ?もしかして…アンタってここのお客さん?
…って何そんなに慌ててんのよー
ここって別に変なお店じゃないし、誤魔化す必要なくない?
もう~、はっきりしないなぁ
ほら、アタシと一緒に入れば問題ないっしょ!
は~い、一名様ご案内~♪
「いらっしゃいませ、Cure Sounds(きゅあさうんず)へようこそ…って、乃々亜(ののあ)!
この人はいったい…もしかして、店の前で客引きしちゃったの!?」
ち、違うってば音葉(おとは)~!
なんか店の前でキョドってから、声掛けたんだけどさ…
あれこれ言い訳つけて入ろうとしないし、アタシが強引に連れてきたって感じ
「強引にって…まだ心の準備が出来てないかもしれないのに…
うちの店員が大変失礼致しましたっ」
あれ、言ってなかったっけ?
アタシはここ「Cure Sounds」で働いてる店員なんだよね
ちょうど出勤しようとしたらアンタを見かけて、声を掛けたの
「自慢げに言ってるけど、シフトに入る時間ギリギリだよ?
お客さんへの説明は私がやっておくから…ほら、早く着替えて準備準備っ」
えへへ、ありがと音葉~♪
それじゃあ、あとは任せたっ!
「…こほんっ
改めまして、Cure Soundsへようこそいらっしゃいました
私、今日は受付をしています音葉っていいます
どうぞ宜しくお願いしますね
ふふ、乃々亜のことビックリしちゃったでしょ
パッと見、ギャルって感じなんだけど…ここで働いてる子なんだよね
あんなノリだけどさ、凄くいい子だから、怖がらないで楽しんでいって欲しいな…♪
さてと、あの子が準備してる間にお店の説明だね
ここCure Soundsはお客さんに対して、音による癒しを与える施術を行なっているんだけど…
あ、ホームページでチェックしてくれてるんだね
ありがと~♪
そうそう、特殊なマイクを使って、お客さんが気持ちよくなれるような音を聴かせていく感じっ
よくあるマッサージ店とは違って直接触れることはないし、ヘッドホン越しにただ音を聴いているだけ…
ざっくり言っちゃうと…「音フェチさん向けなお店」だね
かくいう私もそんな音フェチさんでさ、川のせせらぎとか自然の音が癒されるかな…
このお店に来たって事は、きっとお客さんもそうなんでしょ?
あはは、やっぱり~
ここに来てくれる人は何かしら音で癒された経験があるんだよね
そういう人が多いから、サービスを受ける前に…はいっ
このチェックシートに好みの音の傾向を書いてもらってるんだけど…お願いできるかな?
「自然カテゴリ」とか「動作系カテゴリ」…他には「特殊カテゴリ」とか色々あるから、特に好きなものを選んでね
もちろん、興味があるものでも大丈夫だよ♪
お客さんがこれを機にハマっちゃう音になるかもしれないし…
ん…
ぅん…
あ、その「店員さんにおまかせ」ですか?
これは、担当の店員がその場のノリでやってくれるもので…
どんな音になるかはその時にならないと分からない…みたいな感じだね
え、これを選んじゃって本当にいいの?
初めてのお客さんでこれはチャレンジャーすぎるっていうか…
そ、そっか
気弱そうに見えて結構行くとこ行っちゃう感じなんだね
ん…
んぅ…
あ、書き終わりました?
ふんふん…うん、大丈夫そうだね
これを担当の店員に渡してくるから、あちらの施術室へどうぞっ