プロローグ
おかえりなさい。
体は大丈夫ですか。
また少し体調を崩していたようですので、正直、心配していました。
あなたは、目を離すとすぐに頑張りすぎてしまいますね。
私との生活を豊かにするためとはいえ……過労は、どうしても健康を害してしまいます。
気を付けてください。
しかし……一概に、あなただけの責任と言い切ることはできません。
一緒に暮らしている私の健康管理が及ばなかった、ということでもありますから。
そこで一つ、提案があります。
私の隣へ座ってください。
はい。
さて。提案なのですが……
結婚しませんか。
話が飛びましたね。順を追って説明します。
あなたと同棲を始めてから、そろそろ半年経ちます。その間、特に問題なく、二人で生活できてきたと思っています。
ここは、お互いの認識に齟齬はありませんか? ……分かりました。
あなたは、性格的に、どうしても頑張りすぎてしまうようです。
だから、私がしっかりと健康を管理できるような環境を作り上げたいのです。
要するに、これから生涯、あなた専属の看護師として過ごそう、ということです。
専属といっても、続けられる限り、看護師の仕事はしようと考えていますが。
それに、“結婚をしている”という事実は、早く帰宅するための、よい口実になるでしょう。
以上のことから、結婚するのが良いのではないか、という結論に辿り着きました。
とはいえ。あなたも、突然こんなことを言われて、困惑するのは分かっています。
一生を共に過ごすのですから、心の準備は必要でしょう。
私も、同僚から、スピード結婚に関する弊害を聞いたことがあります。
そこで、提案なのですが……
今日から一週間、“結婚している”という体(てい)で、生活するというのはいかがでしょうか。
そうすれば、具体的なイメージができます。実際に結婚したあとの、理想と現実のギャップに、悩まされることもなくなるでしょう。
もちろん、これはあくまで提案です。
あなたが嫌というのであれば、他の手段を考えますが……いかがでしょうか。
……ああ。失礼。言うべきことを言っていませんでした。
もちろん、結婚を提案するのは……
私があなたを愛しているから、というのが、一番の理由ですよ。
よろしいですか?
……結構。
ん……
んちゅ……んちゅ、んちゅう……んちゅ、れろ、れろ、ちゅう、ちゅう、んちゅう、んちゅう……。
はぁ……。
では、早速、本日から来週まで……
私とあなたの、疑似新婚生活を始めるとしましょう。
よろしくお願いいたします。