Track 6

メメ子、おめかし中

 買い物というから、美味いケーキ屋にでも行くのかと思ったら……  まさか服屋とはな。  服なんて着られれば何でもいいだろー?  なんなら、貴様の服を着ることになっても、別に気にしないぞ。  我は地が美しいし、どんな服でも似合ってしまうからな。  ……む。そういうものなのか?  あんまり見すぼらしい恰好だと、職質される可能性があるのか……。  人間どもの世界はなんだか世知辛いな。  まあ、そういうことなら仕方ない。我に最適な服を見繕うがいい。  できれば、動きやすくて軽い服がいいが……  ……ふん。色んな服があるんだな……。  一つ一つ色が違うし……素材も微妙に違う……。  …………。  ……あ。ねえ、これ! こういうのはどうだ? 我に似合う?  え? 試着……なんてできるのか。あっちか?  分かった。着てくるから待ってろ!  ……どうだ?  ふふん。我の元々のスタイルの良さが際立つな!  んー。でも……少しだけ大きいか? これ。胸の辺りがぶかぶかだ。  ……む。違うぞ。この服がデカいだけで、我が小さいわけでは決してない!!  ……あ。サイズ違いなんてあるのか。  じゃあ、それを着てみよう。  どうだ! これはサイズがぴったりだな!  んー。悪くない。色も派手過ぎないし、何より動きやすい。隠密行動に向いてそうだ。  うん。これにするか。買おう。  うん? 別に、これ以上悩むことなどないだろ?  さっと決めてさっと終わらせたほうが、時間の節約になるだろう。  普通の人間はそんなに優柔不断なのか?  ……ん? あぁ、そういうことか。  そうだな。せっかくだし、もう何着か買うか。  …………。  せっかくだから、貴様、何か我に見繕ってみろ。  貴様の審美眼を試してやる♪  …………。  これか?  ……む。なかなか悪くない。  着てみよう。  ……どうだ? 似合うか?  ふふん♪ そーかそーか。  ……うん。我もこれ、嫌いじゃないな。動きやすくていい。  しょうがない。貴様がそんなに良いというのなら、これも買うとしよう。  ふふふ。  ……うん? それは?  もう一着か?  それも貴様が選んだのか。  分かった。それも着るー♪  ……どう?  えへへー♪ そうかそうか♪  貴様、思ったよりも悪くないセンスだな♪  まあ……付き合いも長くなったし、我のことがよく分かってきたということか♪  ふふふ。褒めてやるぞ♪  よし♪ じゃあこの三着、買ってくるとするかー♪  うん? どうした。レジはこっちだろう。  ……え?  え。え。え。  ほ、ほんと?  買ってくれる……の?  え。なんだ。急にどうした。貴様。  最近の貴様、すごいケチだから……てっきり、我のバイト代から払わされるかと思ってたぞ。  ……でも、ほんとにいいの?  どうして?  …………。  ……ふふ。そうか。これは、あれか?  愛する者への贈り物……というわけか?  なんだなんだー♪ 素直じゃないな、貴様♪  最初から、プレゼントするから好きに選べ、って言ってくれたらよかったのにー♪  ……ふふ。ふふふ。にへへへ……♪  うん、じゃあ、そこまで言うなら仕方ないな♪  せっかくだから受け取ってやろう♪  さぁ、会計を頼むぞ♪  ……ふふ♪ 最初は、服なんてまったく興味なかったが……  こんな買い物もいいものだな♪  ふふ、えへへ、にひひひ……♪  …………。  なぁ、貴様? この後、すぐ帰るか?  まだ時間はあるだろう?  せっかく二人で外に出たんだし……  我、少し行ってみたいところがあるんだが……いいか?