プロローグ
ん? はい、こんにちは… あ、私あの子の姉です。
もしかして、妹の見送りに?
ん… 予定、変更になってね、昨日出発したんです。
仲のいい子達には知らせてたから、みんな来てくれて。
男の子も何人かいたけど…
そっか、君まで、連絡、いかなかったんだ… ごめんね。せっかく来てくれたのに…
わー…! ほら、君も入って。 こっち!
あー、もう、こんなに濡れちゃって。君も脱いで、上着。中で乾かしましょう。
うん、あがって。奥にどうぞ。
ガラーンとしてるでしょ。昨日まで賑やかだったのに、不思議な感じ。
引き取ってもらうものだけ、残してるの。
あ、そこのソファーに腰かけてて。
上着、こっちに干しとくね。
すっごい大粒。しばらくこんな感じかな…
はい、コーヒーと… 100%オレンジ。お好きな方をどうぞ。
コップもないし、缶のままだけど。
うん、どうぞ。
あ、電話。ちょっと失礼するね…
お母さん? あ、聞こえる? すっごい雨。
うん、時間まで、大人しく中で待ってます。
そっちは? みんな楽しんでる? そう。よかった。 今どこなの?
ん、しょっと… あ、飲み物、よかったらこっちもどうぞ。うん、遠慮しないで。
妹たち、引越しがてら、あちこち観光してて。みーんな旅行気分。
あの子も、はしゃいじゃって。ふふ。
…あ、ごめんなさい。君にとっては失恋、なのかな…
お話ししてても、なかなか目を合わせてくれない、恥ずかしがり屋さんだけど、
思い切って、見送りに来てくれたってことは…
あの子のこと、好き、だったんだよね…
…そっか。やっぱり。そうだよね。ちょっとデリカシーなかったね。ごめんね。