『おはよう、人間♪』
……あ。おはよー、人間ー。
料理の音で起こしちゃったかー?
まだ早いから、もう少し寝てても大丈夫だぞー。
んー。起きる? そーか?
ん……
……ちゅっ。
えいっ。
ぎゅーーーー。
ふふ。早起きできて偉いぞー、人間。
余(よ)が、ぎゅーってしてやる♪
えらい、えらい。
まあ、本当に無理はしなくてもいいからなー。体がしんどいときは、寝るのが一番だし。
それに……昨日は、夜遅くまでしちゃってたしなー? ふふ。
……おっと。フライパン焦げちゃうな。
……ん? あぁ、これ?
うん。一応、魔法だよー。シンプルに火を出す魔法。
出力を調整すれば、料理くらいならできるし、たまに使ってるんだー。
あんまり使わないと、体が鈍(なま)っちゃうしなー。
ガス代も節約できるだろー。ふふ。
朝ご飯、もうできるから、座って待っててなー。
はい、コーヒー。
砂糖とミルクはどーする? ……うん、わかったー。
よいしょ、っと。
それじゃ、食べるとするかー。
いただきまーす。
……人間。味は、どうだー?
美味しい? ……よかった。ふふ。
っていっても、簡単なハムエッグとサラダだから、味に差なんて出ないだろうけどさー。
料理なんて、こっちの世界に来てから初めてやったけど……なかなか楽しいもんだなー、これ。
余、最近、料理に凝るようにしてるんだ。
自分の食べたいものが作れるってだけで楽しいし……それに、人間が喜んでくれるからなー♪ ふふ。
何か食べたいものがあったら言ってなー? 余、ちゃんと調べて、頑張って作ってみるから。
……あんまり難しい料理は勘弁して欲しいがー。
ん? なんだー? 人間。
挨拶……? ああ、食べる前の、「いただきます」ってやつかー。
んー……人間に合わせたんだが、変か?
あぁ、確かに、魔界では、食事の前に挨拶なんてしなかったがー。
郷に入っては郷に従え、ってやつだ。
人間の家で暮らしてるわけだし、きちんとルールには従わないとなー?
それに……別に、余は嫌いじゃないしな、この挨拶。
生命には平等に感謝すべき、っていう考え方は、嫌いじゃないぞー、うん。
何事も平等に扱わないと、不和を産むんだ……。余も昔な……。部下にな……。うん……。
まあ、それはいいんだ。
ところで……人間?
今日は、会社に行くのかー?
んー。いや、今日は、月曜日ってやつだろー?
人間どもが、こぞって憂鬱になる日だろー。
お前も、辛いんじゃないかって思うんだがー。
あー。さすがに憂鬱そうだなー。
まあ、休み明けの仕事、っていうのは、いつだって憂鬱だよなー。ずっとお休みが続けばいいのになー。
……でも、会社に行くのか?
そうかー。人間は、ほんとに頑張り屋さんだなー。えらいぞー♪
余(よ)的には、そんなに嫌だったら、会社なんて行かないでいいんじゃないかー……って言いたいのだがー。
でも、人間が頑張りたいって思ってることだからなー。それを否定しちゃうと、人間ごと否定するようなものだからなー。
余は、見送るしかないのが、歯がゆいところだなー……。
……あ。そーだ。
ふふ。いーこと思いついたぞー、人間。
余、人間が出社するとこ、見守っててやるよー♪
つまり……人間の出勤に、付き合ってやる♪ ふふっ♪
そうすれば、少しでも、嫌な気分がなくなるだろー♪
んー? ううん、気にするなー♪
家事は帰ってきてからやればいいし……余がそうしてやりたいんだ♪
外に出るのは嫌いじゃないしなー。
だから、余についていかせてくれー♪
……うん♪ ありがとー♪ ふへへー♪
じゃ、余も出かける準備、するかー♪
まあ、でも、時間はまだまだあるし……。
まずは朝ご飯、ゆっくり食べような、人間ー♪