Track 1

1-1.『先生のお胸に甘えてください』

 こちらへどうぞ。  はい。靴を脱いで、あがってください。  改めまして……  わたくしをご指名いただき、まことにありがとうございます。  よろしくお願いいたします。  では、早速。  はい。どうぞ。  ええ。わたくしの胸の中に。  お互いの体をくっつけて、体温を感じあう……。ハグは、癒しの基本です。  どうかご遠慮なさらず、わたくしに甘えてくださいね。  はい。来てください。  ぎゅーーーー……。  お客様。  いえ……。僕ちゃん。  先生の胸の中に、よく来てくれました。恥ずかしがらずに、ちゃんと、ぎゅっとできましたね。  えらい、えらい。とても偉いですよ。僕ちゃん。  いいこ、いいこ。  ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーーー……。  はい。僕ちゃんも、先生の腰に手を回して、力を込めてください。  もちろん。おっぱいに顔が当たっても、大丈夫ですよ。  大人の人はともかく……“僕ちゃん”は、そんな遠慮なんてしないでしょう。  ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅ~。  頭、なでなでさせていただきますね。  なで、なで、なで、なで……。  それで……。  何か、お外で嫌なことでもあったのですか? 僕ちゃん。  いえ。なんだか、少しだけ暗い顔、されていましたから。  よかったら、先生に話してみてください。  話すだけで楽になる……ということもあるでしょう。  それに……事務的保育園の先生相手なら、僕ちゃんも話しやすいでしょう?  先生も、僕ちゃんがよわーくなってるところ……誰にも言ったりしませんし、笑ったりしないことを、お約束します。  ただ、ぎゅ~~~っとしてますから。  ゆっくり、自分のペースで、お話ししてくださいね。  はい。  はい。  なるほど。  そうですか……。  それは……お辛かったですね。  ええ。  はい……。  そうでしたか。  いえ。話してくれて、ありがとうございました。  本当に、よーく頑張りましたね、僕ちゃん。  とっても偉いですよ。えらい、えらい。  周りの人がなんて言おうと……僕ちゃんがとっても頑張り屋さんなこと、先生は、ちゃんとわかっていますからね。  いいこ、いいこ。  ……ひょっとして、泣きたくなってきましたか?  いえ。我慢なんてしないでください。泣くのを我慢するのは、体に毒ですよ。  このまま、先生のお胸の中で、泣いてくださいね。  エプロンが汚れることなんて、気にしないでください。  先生、僕ちゃんの顔、見ないようにしますから。それなら恥ずかしくないでしょう?  泣き止むまで……僕ちゃんの頭、ずーっとなでなでしててあげますね。  よーし。よーし。  よし、よし。  よーく頑張りました。  えらい、えらい。  本当に、僕ちゃんは、えらいですよ。  泣き疲れちゃったら……ぎゅってしたまま、ねむねむして大丈夫です。  いっぱい泣いて、いっぱい眠ったら……  きっと、気分が楽になってると思いますから。  はい。  好きなだけ、先生に甘えてくださいね。  よーし。よーし。  よし、よし。  えらい、えらい。  僕ちゃんは……とっても偉いですよ。