5.1 乳首責め
5.1
「乳首責め」
……なんてことを思っていたのだが。
優衣の手は体の上からどくことはなく、すすす……と下っていく。
パジャマの上から体を撫で、下腹部を撫でた辺りで股間に期待する
電気が走った。
その期待に応えるように、優衣の手は躊躇なく股に到達する。
優衣は何も言わない。
無言のままふにふにと触ってくる。
壊れやすいものを扱うように、ふわふわと揉む。
刺激としては大したことはないだろう。
それでも、優衣に触られているとなれば反応してしまうのも仕方な
いわけで。
【優衣】
「……固くなってきた」
肩口でボソリと呟き、布の上からでも輪郭を帯びてきた逸物を鷲掴
みにする。
そこから軽く上下され、ただ興味本位で触る動きと違うことに気付
く。
優衣の目的を悟って少しもしない間に、腰のゴム紐を掴み下ろされ
る。
股座が晒され、少しひんやりとした。
感嘆詞のような溜息を吐かれる。
【優衣】
「……寝ててもおっきくさせちゃうのねー……」
まあ起きてるんですけどね。
そんなことは知る由もない優衣は、勝手に逸物に触れる。
ピクンと跳ねるのは優衣に直で触られたから。
別に起きているからとかは関係ない……はず。
【優衣】
「太くて、こんなにおっきい……男の人ってみんなこうなのかしら。
それとも、兄さんだけ……?」
みんなそうじゃないかと思うんですけど。
【優衣】
「まあ、別にいっか。……誰かと比べられるわけじゃないし」
いや、将来的には比べる日がくるんじゃないですか?
比べられる日が……。
……。
妹の相手と比べられるとか、なんか複雑だな。
【優衣】
「ふふっ、……相変わらず元気ねー。そんなに妹の手でしてもらうの
が嬉しいのかなー……?」
寝ているということもあり、試しに逸物で返事をしてみる。
【優衣】
「……ん。言葉が解るのかしら」
ぴこぴこ
【優衣】
「……」
真剣そうな声。
この調子で行けば、チンコと対話できると思い込む優衣が出来あが
る。
【優衣】
「ちんちんさーん。おちんぽさーん」
ぴくぴく
【優衣】
「……」
いけるか。
【優衣】
「まさかね」
無理だったか。
【優衣】
「気持ちよくて跳ねてるだけ、言葉が解るわけないか」
まあそうなんですけどね。
でも意図的に動かすことも可能なわけで。
たとえば、何の意味もなしに常時跳ねさせることもできるわけよ。
こう、ピコピコピコピコ! ……と。
やってみたが、優衣は動き回るペニスを可笑しそうにするだけだっ
た。
面白くない。
ここはもう素直に身を任せることにするか。
【優衣】
「……寝てても、気持ちいいなら射精をするのかしら」
射精……するんじゃないか。
夢精って言葉があるくらいだし。
【優衣】
「兄さんの声とか動きを見る限り……自分で射精を完全にコントロー
ルできている様子ではなかったし」
【優衣】
「脊髄反射のような構造ならば、身体的快感が高まれば射精まで至る
はずよね」
射精のメカニズムは保健体育で習ったような、習わなかったような。
【優衣】
「……ふふっ、兄さんには申し訳ないけど……こういう方法で性処理
を行えば、意図せず性欲の発散に繋がるってことにも成り得るかも」
【優衣】
「心は満足していないけれど、体は適度に発散して~……ってね。
兄さんも恥ずかしい思いもしないし、一石二鳥……?」
それは……あまり嬉しくないような。
今は寝たふりをしているわけだが、もし熟睡している間にそんなこ
とをされていたとすれば……何か勿体なく感じる。
そう思ってしまう自分に嫌気も差すが、どうしようもない。
【優衣】
「くすくすっ。……まあ、兄さんはもう恥ずかしいなんて思っていな
いみたいだけど」
そ、それは、まあ。
【優衣】
「妹の手を使って……恋人みたいに精を絞ってもらうことに……幸福
感を抱いているみたいだし」
【優衣】
「……ね。にーさん」
……まさか、起きてるのに気付かれたか。
意識して息を潜める。
冷静に、冷静に……呼吸を整えて、感覚を研ぎ澄ませて……。
そうしていくと、逸物への刺激を素直に受け止める形になった。
下腹部が過度の快楽を嫌がって、自然とうねる。
不自然な動きと捉えられてしまうかと思ったが、優衣は気にしてい
ないみたいだ。
関心の矛先は別の個所に向けられていた。
【優衣】
「ぁ……エッチなお汁がでてきた」
我慢汁が湧き出始めたことを目敏く見つける。
【優衣】
「これは……気持ちよくなっている証拠……――あ、そうだ。
パジャマを肌蹴させておかないと」
ぷちぷちとボタンを外していく。
暗闇の中でも目が慣れているのだろう、特に苦戦することはなく俺
のパジャマは開けられた。
【優衣】
「兄さんってば、すごく飛ばすんだもの。……いつもはそんなに飛ば
ないって言うけど、そんなの有り得るのかしら」
【優衣】
「私を使って射精をするだけで……いくら興奮するからと言って、精
液の飛ばし方まで変わるものなの……?」
【優衣】
「……ふふ、どうなの? ねえ、にーさん?」
【兄】
「……」
あ、あれ? やっぱり……バレてる?
【優衣】
「……頬っぺた」
つんつん
【優衣】
「ぷにぷに」
【優衣】
「つんつーん」
【兄】
「……」
どういう反応を取ればいいんだろう。
少し口元がピクピク動くくらいなら、セーフ?
【優衣】
「ん~……」
【優衣】
「兄さんの……胸板」
【優衣】
「……くすっ、板ってほどでもないわね。
あー、いやでも……女性と比べれば板みたいものか」
【優衣】
「ふふっ、乳首もこんなに小さい……。一体なんのためについてるの
かしらね……つんつん」
【兄】
「っ……」
【優衣】
「?」
指の腹で乳首を転がされる。
乳首を始点に、断続的な電気が体を巡る。
【優衣】
「体が……びく、びくって震えてる」
【優衣】
「……くに……くに」
【兄】
「ぅっ……」
【優衣】
「ぁ」
しまった、声が出た。
【優衣】
「いま、声が……」
【優衣】
「兄さん……?」
今さら起きれるわけがない。
『寝てふりしてましたー、ごめんちー☆』とか無理がある。
【優衣】
「寝て……る……?」
また頬を突かれる。
冷静に、表情は固めたまま。
いや、逆に頬を突かれたことによる反応を示したほうが自然だろう
か。
よし、反応を示そう。
むにゃむにゃ。
【優衣】
「……ふうん」
なにか収穫を得たような声を出す。
【優衣】
「男性に乳首がある理由って、こういうことだったのね」
【優衣】
「そっか……」
得心がいったのか、心の声を反芻するように口に出した。
そこから何やら不敵に微笑むと、もぞもぞと動き始めた。
わざわざ横になっていた体を起こし、四つん這いになる。
そのまま何を思ったか、胸元に顔を寄せた。
【優衣】
「ん……」
柔らかな唇が当てられる。
上唇と下唇に乳頭が挟まれ、軽く転がされる。
ぞわぞわとした感覚。
見計らったように、ちう……と吸われた。
ほんの軽く吸われただけ、音もそんなにしなかった。
それでも、上体をびくりと震わせてしまう。
その様子を見てクスリと笑うと、右手を再び逸物へ伸ばした。
こちらも軽く上下される。
しかし、続けざまに乳首を吸われ、俺はだらしなく息を吐いた。
暗い視界の中で、優衣がちらりとこちらを見上げたかと思うと再び
目を閉じて乳首への口づけを始めた。
二度、三度と乳首を吸われる。
何かを吸い出そうとするほどの強さはなく、指先についたソースを
取るときのような優しいタッチ。
その優しさに微睡んでいたところで、乳首の周りをくるりと何かが
這った。
『舌だ』と思ったころには、もう優衣の口の動きは変わっていた。
【優衣】
「ん、える……れろれろ……ちゅ、ちゅる……
……ん、はぁぅ、ぅえるぅ……」
乳輪に付着した自身の唾液を戻すために、口を今まで以上に開いて
吸い付いてくる。
唇の表面ではなく内側の粘膜で乳首全体を口に含まれ、そして先ほ
どよりも強い力で乳首を吸われる。
堪らず声を上げてしまう。
【優衣】
「ちゅ、ん……? ……くすっ」
優衣は何も言ってこない。
ただ微笑むだけ。
代わりに、しっかりとした手つきで逸物をシゴき始めた。
乳首に与えられた刺激は電気のように体を駆け巡り、それが陰茎に
到達した途端にすべて快感へと変換されていく。
俺は戸惑っていた。
逸物と同時に乳首を責められるのがこんなに気持ちいいものとは…
…。
【優衣】
「ちゅ……ちぅ、ちぅちぅ……ちゅ、ぴ……。
……んひ、立ってきたー……」
あー……と口を開けながら舌先を震わせて乳首を弾いてくる。
控え目な水音とともに芯から疼いてくる快感。
鋭い快楽信号が肩を震わせ、声を絞り出させる。
堪えようとしてもわずかに漏れてしまう。
逆に声を出すほうが、どうしてか快感が増すのだ。
どういうロジックか解らないが、快楽とともに声を出すことが相乗
効果を生むらしい。
いまさら口を噤んで声を堪えても変に思われるだけ。
睡眠時なら、体の異常を素直に受け止めるはずだ。
【兄】
「くっ……ぅ、ぁ」
【優衣】
「んー……?」
吸い付きながら喉を鳴らしている。
声帯を震わせる微妙な振動が伝わってきて、なんとも気持ちいい。
【優衣】
「ちゅ、ちゅぴ……んぇろ、ぇろれろれろぉ…………ちゅるる、
ちゅっ、ちゅッ……」
熱いとさえ思う優衣の舌が、ぬめりをもって乳輪を描くように回る。
舌を固くしてピンっと乳首を弾かれると、堪らず息を吸った。
【優衣】
「んふふー……乳首がそぉんなに気持ちいいの? んふ。
……可愛い。女の子みたいね……」
【優衣】
「はぁぅむ……」
【兄】
「ぅ、くぁ……っ」
視界が暗いなか、声を出されながら咥えられると今からされる行為
を色濃く連想してしまって……駄目だ。
頭が溶けそうになる。
もともと微睡みのなかにいたんだ、ぼやけた意識のなかでこんな甘
ったるい行為をされると自我を保つので精いっぱいになる。
【優衣】
「にいふぁ……ん、ちゅ……ちゅ、はぅむ、ちゅ……ぁむ、
んれぇるれろぉ…………にぃふぁ……んんむ、ん」
【優衣】
「ちゅ、っ、ちゅッ……ぴちゅ、ぴちゃ…………ちゅ、ぁ……。
おちんひん……きもひぃ……?」
俺に直接訊いてきているんだろうか……?
寝てるのに?
【優衣】
「んふ、ひ……。
んん~…………えるれろぇろ……ぁぁ……ぴちゃぴちゃぴちゃ……」
優衣の舌の裏からぴちゃぴちゃと音が鳴る。
柔らかくした舌の腹が乳首の右に左に動き、捏ねられる。
連続する堪らない刺激に肩が強張ってくる。
喉で声を押し殺すが構わず優衣は弾いてきた。
【優衣】
「ちゅる、ちゅぅぅ……っ、ン……。きもひぃ……?
おひんぽ……ん、んんぅっ……んふふー、びくびくひたぁー……♪」
【優衣】
「にぃふぁんお……ひんぽ……きもひぃーんだあ……。
んふ、ぇへへ…………ぇろ、れぇろぉぉお……ちゅ、ちゅぴちゅ」
“気持ちいい”
そう口にされると、気持ちよさを自覚してしまう。
悦楽の深みにハマっていく感じ。
同時に陰茎を扱かれ、奥で煮えたぎる精液が飛び出すのを促されて
いく。
我慢できない……!
【優衣】
「ちゅ、んん……ちゅ、ちゅ……ン。……ひんぽぉ……ちゅ、ちゅぅ
……おひんぽ、ン……ぇろるぅ……ん、にいふぁーの、ちんぽ……」
【兄】
「あっ……! ぁ、く、ぅ……はぁッ……!」
【優衣】
「ん……ん……ちゅるちゅる……っ、ちゅ、ぷっ」
口を放すと、少し乱れた息が胸元を撫でる。
冷静そうな様子に反して、優衣の手は絶頂を迎えさせようと素早く
動いていた。
優衣は耳元に口を寄せると、囁く。
【優衣】
「にぃさあん」
【兄】
「っ……!」
ぞわりとした。
囁き声が脳髄まで心地よく響く。
【優衣】
「せぇし……出して?」
脳へ直接、射精を促される。
【優衣】
「妹の手でシゴかれながらぁ……どぴゅっ、どぴゅっ♪ って……
して?」
【優衣】
「ほら、……どぴゅっ♪ どぴゅーっ♪ って」
【優衣】
「どぴゅっ♪ ぴゅっ♪ ぴゅぅーっ♪ ぴゅっ、ぴゅっ♪ あっ♪
ぁっ、ぁっ……♪」
ビュッ! ぴゅるるるっ! ぴゅる、ビュッ! ビュッ!!
【優衣】
「ぴゅっ、ぴゅっ♪ どぴゅーっ、どぴゅ、ぴゅぅーっ♪
ぴゅぅぅ~っ♪」
声に導かれるままに精液を優衣の手に掛けていく。
俺が自分でしているところを見ていたからだろう、射精のタイミン
グに合わせて手を細かく動かしてくれる。
絶頂の脈動の一つ一つが快感で、幸福だった。
【優衣】
「ぁ……」
手元をチラリと見て、嬉しそうに口角を上げた。
【優衣】
「たくさん出たぁ……。えへへ……気持ちよかった?」
な、なんだ? 優衣の様子がなんかおかしい。
こんな子供っぽい笑い方をするやつだったか?
語尾も上げて、嬉しげに……まるで猫撫で声だ。
【優衣】
「……兄さぁん」
【優衣】
「大好き……」
【兄】
「ぇ」
いま……なんて……。
【優衣】
「……くす。くすくすっ」
【兄】
「ぁ?」
【優衣】
「ほら、やっぱり起きてた」
【優衣】
「狸寝入りするだなんて、いい度胸ね」
【兄】
「お前……気付いてて」
【優衣】
「気付いてる。寝ていると見せかけるために、自然を装ってむにゃむ
にゃーって言ったところらへんから」
結構前!
【兄】
「あ……。ってことはさっきのわざとか! 策士め……!」
【優衣】
「え~? さっきの?」
【優衣】
「くすくすっ、それは……まあ……そうね」
【優衣】
「あー、いや。……くすっ、どうかしらー?」
殴りたい。
【優衣】
「寝たふりをして、黙ったまま私にしてもらおうとした兄さんが悪い
の」
【優衣】
「反省したら?」
【兄】
「そんなに悪いことじゃないだろう……」
【優衣】
「からかった私も、そこまで悪いことをしたわけじゃないでしょう?」
【優衣】
「お相子よ、おあいこ」
【優衣】
「それよりも……」
精液の付着した手を動かす。
まだ優衣の手には逸物が握られていた。
俺の陰茎は未だそばだったまま。
【優衣】
「こんなに出したのに、まだビンビン……」
【優衣】
「そんなに乳首を舐められながらされるのが気持ちよかったの?」
【兄】
「それは……」
【優衣】
「ん、いい。返事は聞かなくてもわかってる」
それは楽ちんだな。
【優衣】
「……まったく、仕方ない兄さん」
【優衣】
「それじゃあ……もう一回だけ」
【兄】
「え」
【優衣】
「もう一回……してあげるから。今度は……ちゃんと声を出して?
気持ちよさそうな声……聞かせて。……ね?」
そんなに声が聞きたかったのか。
狸寝入りに対して怒っていたのは、楽して性処理をしてもらおうと
したことに対してではなく、もしや……声を出さなかったことか?
あまり声を出すのは気が引けるが……。
黙っててわかったが、声を出すと快感が増すみたいだった。
優衣も望むなら……次は声を堪えずに出すのもいいかもしれない。
羞恥心はあるが、少し恥ずかしいほうが俺には向いているみたいだ
し……。
【兄】
「じゃあ……」
【兄】
「頼む」
【優衣】
「……うん」
その後、だらしなく声を出して射精まで導いてもらった。
とんでもなく恥ずかしくて死にたくなったが、快感の大きさは言わ
ずもがな。
自分の変態性に、ちょっと嫌気が差した夜だった。