夏休み_さびれた田舎_川原で出会う
こら。こんな所で危ないよー? そろそろおうちに帰んなさい?
何見てんの? 虫?
あ、雑誌?
……あぁ。
そういうの好きなんだ
でも、ほどほどにしときなね。
落ちてるものとはいえ。
女の子が河原でエロ本なんか見てたら、変な人が声かけてくるかもしれないよ。
『もうかけられてる』?
あはは。
あたしは変な人じゃないよ。
あたしは聞きたい事があって話しかけたの。
ねぇ。この辺に泊まれるとこってある?
急に来たからわかんないんだ。
うん。そんな感じ。旅行。
昼に適当な電車乗って。適当にここまで。みたいな。
うん。ビジホでも旅館でも何でもいいんだけど。
今んとこ、それらしいの見かけなくてさ。
うち?
あなたんちに泊まれるの?
あ、あんたの伯父さんと伯母さんが、おうちで民宿やってるんだ。
教えてくれてありがとう。
じゃあ、そこへ連れて行ってくれる?
はー。
助かったぁ。
なんかね? 川のとこに、すごいきちんとした感じの子がいるから。
『この子なら、この辺の事知ってるんじゃないか』って思ったんだよね。
勘だったけど大当たりだった。
まさか、そんなもの見てるとは思わなかったけど。
そうだよねぇ。気になるよねぇ。
あたしもあんた位の年の頃が、一番そういうのに興味あったもん。
あぁ。
誰にも言わないよ。
ほんとに助かったし。ありがとうね。
じゃあ、行こっか。
ん?
足?
ああ、靴?
靴のヒールがね、来る途中で、片っぽ折れちゃったの。
で。だったら両方折った方がマシかなと思ってそうしたら、余計歩きにくくなっちゃって。
でもまぁ歩けない事もないし。
へ?
……二十四センチ。
持ってんの?
いいの?
ていうか、何でもう一足持って歩いてんの?
あ。宿での上履き用に買ったんだ。なるほどね。
でも、自分で使うために買ったんでしょ?
あ……。
そっ、か。
ありがと。
じゃあ、いただく!
あんたって優しいね。
もしかして神様?
あはは。そりゃそうだ。あたしも人間。
あ、そうだ。自己紹介してなかったね。
あたしの名前は……。