プロローグ。かかあの自己紹介
;タイトルコール
;1/前
【かかあ】「蓄音レヱル ~常州電鉄デハ100形デハ101専用レイルロオド かかあ~」
;環境音 常州電鉄事務室 室内
;SE ノック
;9/前遠
【かかあ】「はい? どうぞ?」
;SE ドア開、ドア閉→足音 ;3/右 へ
;3/右 (マイク向き)
【かかあ】「ん? 旦那、なにか用?
ってか、ちょっとだけ待っててもらえる?
今年のあたしの法定検査、あとレイルロオド人工知能度試験――タブレットチューリングだけで終わるから」
;3/右 (マイクと同じ視線)
【かかあ】「すいません、先生。おまたせしました。
試験の続きを――(呼吸音)(呼吸音)――ああ、はい、自己紹介。
わかりました。やります――んんっ」
【かかあ】「『あたしは、常州電鉄デハ100形(ひゃくけい)電車トップナンバー機、デハ101(いちまるいち)の専用レイルロオド・かかあです。
常州電鉄創設時からの稼働車輌では、唯一の現存機になってしまった……まぁいってしまえば老朽機です。それでもいまも旅客車輌としてだけでなく、イベント車輌、ときには保線用の特殊車両の牽引などもつとめる、バリバリの現役機でもあります』……こんな感じでいいですか? ――(呼吸音)――はい、ありがとうございます」
【かかあ】「あとは……はい。“自分の長所と短所”ですか。あんまり考えたことないなぁ……(少し考えこむ呼吸)」
【かかあ】「ま、いいや、やってみます。(息を吸う)
『あたし、レイルロオド・かかあの長所は、面倒見がいいところ、それから、家計のやりくりが上手なところです。人間をふくめて、常電の一番の古株になっちゃったら――カイシャの経営会議とかでも、普通にバンバン意見をいってます。レイルロオドでは結構珍しいかなって思うけど……へへっ、“常電が大廃線を乗り越えられたのはかかあのおかげだ”なぁんて、うちの旦那――あ、あたしのマスターのことなんですけど。旦那にも、今の社長にも前の社長にも言われちゃって……あたし、ノセられやすいから、そんなもんかなぁって思っちゃってます。だから、長所はその辺かなって』」
【かかあ】「『短所は……長所の裏返しで、おせっかいなとこ。よくね、アドバイスしてるつもりで‘いまやろうと思ってたのに”って言われて、あちゃ、って反省して。あたしはレイルロオドなんで親とか子供とか本当にはわからないんだけど――‘かあちゃんかよ”とかもよく言われちゃうから……まぁおせっかいなのよねって。自覚はあるのになおらないから、やっぱりこれは短所よねぇ……って思ってます』」
【かかあ】「次の質問は? ……(呼吸音)――あ、もういい。オーケー。合格? よしっ!
あははっ、簡単な試験でよかったぁ。これでまた2年、現役で稼働できる!
せんせ、本当にありがとうございます」
【かかあ】「あ、もうお帰りで――(呼吸音)(呼吸音)――はい――(呼吸音)――はい――(呼吸音)――もちろん。
これからもよろしくお願いします。それじゃあ」
;SE ハイヒール足音遠ざかってく→ドア開・ドア閉→屋外足音遠ざかって F.O.
;1/前
【かかあ】「ふう、旦那、おまたせ! で? なに? 何の用……って、その新聞? ちょっと見せて」
;SE ペラ音
;1/前
【かかあ】「あら、りいこちゃんじゃない。あの子とぶてつ三勢崎(みせざき)線。ご近所さんっちゃご近所さんだから、新聞で顔見るの嬉しい……(呼吸音)……って――(呼吸音)(呼吸音)。
…………ふーん。これ、面白いわね、『蓄音レヱル』って記事」
【かかあ】「三勢崎線沿線、ポンポコ寺の名前くらいは聞いたことあるけど、そんなにいろんな音聞こえるなんてしらなかった。
それに、蒸気機関車のボイラ使ってる砂風呂なんて! めっちゃあったまりそうよね、イメージ的にも物理的にも。いいなぁ、いってみたい――ってか、今度つれってよ。いいでしょ、旦那!」
【かかあ】「(呼吸音)――えへへっ、決まりねー。そしたらスケジュール……(呼吸音)――ん? その前に、何?
(呼吸音)(呼吸音)――依頼って――え!? この蓄音レヱルの? やだなにそれ面白そう! あたしやりたい!!」
;$=SE 新聞ばさばさ
【かかあ】「具体的にはなにをどうすれば――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――なるほどね、あたしと旦那で常電(じょうでん)沿線のいい音がする場所を探して。それを新聞記者さんに報告すれば、あとは――えへへっ
$ こういうふうないい感じの記事にしてもらえちゃうんだ。いいねぇ、すごくいい!」
【かかあ】「カイシャの宣伝にもなるわけだし……定期外収入少しでも増やすためには、お客さんの乗車を誘えるような場所の方がいいわよね。いい音がする場所で……ん……どこがいいかなぁ――(しばらく悩む呼吸)――あ!!!」
【かかあ】「うちってさ、電車乗ってくれたお客さんには無料でレンタサイクル貸してあげてるでしょ。
アレのアピールになるようにするのってどう? スタートはこの駅、車庫のある大五(おおご)にして。
大五からサイクリングだと赤木山方面で鉄板よね、うん」
【かかあ】「お不動大滝とかもあるし、サイクリングの汗を流せる温泉もあるし。ど? よくない?
(呼吸音)(呼吸音)――うん! じゃ、それで決まり!!」
【かかあ】「次のおやすみか非番が旦那と重なるのって――(呼吸音)――じゃ、そこに決めちゃおう!
えへへ、よかった、すぐで」
【かかあ】「他の注意事項とかって――(呼吸音)(呼吸音)――ああそか。音を探しにいくんだもんね。普段よりもっと聞こえるように、ヘッドホンかイヤホン、つけなきゃ」
;$=SE ヘッドホンorイヤホン 両耳同時装着
【かかあ】「旦那愛用の――ああ、これこれ、それじゃあたしがつけたげる。
動かないでね~――ん……$ (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――っと、これでよし」
【かかあ】「じゃ、テストね。いくよ」
;3/右
【かかあ】「右耳。右耳。ん、よさそうね」
;7/左→;7/左(接近囁き)
【かかあ】「そしたら今度は左耳――
ちいさな音も、ちゃんと聞こえる? うふふっ」
;7/左→;1/前→;3/右
【かかあ】「そしたら最後は、
『ぐるーーーーーーーーーーーーーーーーーん』ってまわって~~ からの~
(ふーーーーーーーーーーーっ)!
あはは! 感度良好みたいですな! よしよし!!」
;1/前
【かかあ】「それじゃ、乗務に戻りましょう!
ぴしっと無事故で終わらせて――ふふっ!」
;3/右 (接近囁き)
【かかあ】「取材、おもいっきり楽しんじゃおーね~!」
;環境音 F.O.