01.アマゾネスとの日常
おかえり︒今日は早かったな︒
ふ… 私と会いたくあまり… 仕事を急いで終えてきたなど… 可愛い奴よ︒
SE: 服が擦れる音
︵嬉しさ反面戸惑い有︶ん?どうした?帰って来て早々… 私を抱き締めるだなんて… ︒
くく… よっぽど疲れておるようだ︒食事ではなく︑私の身で英気を養おうとするとはな︒
全く… お前はふとした瞬間に甘えてくるのか︒
だが… やはりお前には︑そんな疲れ切った表情は似合わないよ︒
夕飯はできている︒早速食べ… 精力をつけて… 力いっぱい笑うとよい︒
ほれ︑こっちに座って… 食べようぞ︒
︵咀嚼音︶あーむっ… んっ… ん︑んっ… ん… ︒
肉はやっぱり上手いな︒… 私の血肉へと変化するのがよくわかる︒
元の世界で食べる肉よりも︑野性味はないが… これもまた美味だ︒
ふ… 私の屈強な肉体の源は… 元の世界で食べ続けてきた獣共の肉だ︒
お前は… 普段あまり肉を食べぬのか?
服を着用しているとはいえひょろひょろではないか︒そんなでは… 力で私に負けてしまう
かもしれぬぞ?今日は多めに調達してきたからな︑お前も沢山食べろよ︒
︵咀嚼音︶ん… ふぅ… んっ︑んん… ︒
先ほどから食が進まないようだな… ︒お前は食わないのか?
肉だけはどうかと思ってな︑キャベツもあるのだ︒しかと食
しょく
すとよい︒
︵咀嚼音︶んっ… ん︑んぅっ… んっ︑あむっ… ん… ごくんっ︒
?いちいち切らずとも︑このまま︑がりがりと貪るのが旨いのよ︒
… お前は丁寧に切ってあった方が食いやすいのか?
︵申し訳なさそうに︶… すまんな… 元の世界の癖が未だに抜けないのだ︒
食いやすい大きさに切ってきてやるから︑少し待っておれ︒
SE: 皿を持ち上げる音
SE: 席を立ち︑歩いていく音
SE: 料理道具を取り出す︵遠くで︶
SE: キャベツを切る音︵遠くで︶:途中で止まり
︵指を切ってしまったリゼ︶
いっ…… !
SE: キャベツを切る音再開︵遠くで︶
SE: 包丁を置く︵遠くで︶
SE: 歩いてくる音
SE: 椅子に座る音
SE: 皿を置く音
ほれ︑これならどうだ?食いやすいのではないか?
ふふ… それならよい︒では食事を再開するとしよう… ︒
… おい… 私の指先ばかりを見つめてどうした?
切り傷?… あぁ︑これはな… ︒
お前は普段料理をしていないようだが… あの包丁︑案外よく切れるようだ… ︒
キャベツを切る途中で︑指先を少し切ってしまっただけのことよ… ︒
安心してくれ︒食材に血は付いていない︒
︵照れたように︶お前は… 心配性だな︒
少し切っただけだ︒この程度… 元いた世界では日常茶飯事よ︒
︵呟くように︶だが… お前に心配されるのも… 悪くはないな︒
SE: 食事の音
︵溜息︶ふぅ… 手が止まっているぞ︒
肉が硬くなってしまうであろう?さっさと食べてしまえ︒
SE: 食べ進める音
… ふぅ… ごちそうさまでした︑と︒
SE: 食器を片付ける音
今のお前︑すごくよい表情をしているぞ︒満足できたようだな︒
しかし… まだ指先を心配しているのか?
何度も言ったろう?
指先を切る程度︑よくあることだったのだ︒
お前は想像し難いかもしれぬが… お前と出会う前︑元の世界にいた私はな… 森林の中に集
落を作り︑数多の人と共存し︑狩猟生活を送っていたのだ︒
ここだと︑食べやすく加工された食材が並び︑それらを調理するのみ︒
︵少し寂しそうに︶何て容易い生活だろうか… ︒
ふっ… 狩は男がするもの… それはお前の想像よ︒
私たちの部族ではな︑どうしてか… 男が滅多に産まれないのだ︒
だが︑自分たちの子孫を残すには男がいないとどうにもならないだろう?
女だけでは︑子どもを産めぬからな… ︒狩猟中に男を失うわけにはいかなかった︒
そこで… 先祖たちは︑女が狩猟に行くように掟を定めたのだ︒
なーに… この程度︑草で切れたのと同じ︒もしくはそれ以下の痛みよ… ︒
何より… 常に死と隣り合わせだからな︒どんな状況下でも︑仲間を想う気持ちは強い︒
同じ村に産まれ︑育ち︑戦い︑生きておるのだからな︒
︵照れたように︶ふっ… しかしお前に心配してもらえたのは… 正直嬉しかったぞ︒
︵思い出したように︶あっ… それともう一つ︑この世界と︑私が住んでいた世界とでは違う
ことがある︒
ここでの… 成人の儀… というのは︑何やら大それた式に出るのが習わしなのだろう?
私がいた世界での成人の儀はそういった類
たぐい
ではないのだ︒
あちらではな… 成人の儀として︑女は︑その身に子どもを宿す必要があるのよ︒
ふっ… 私は… その儀を執り行う前に︑この世界へと飛ばされたがな… ︒
︵悲しそうに︶お前に︑想像ができるか?
成人の儀だからと︑自分よりも一回りも二回りも年を重ねた男と… 行為をしなくてはなら
ない︑女の気持ちが︒
男と愛情を育み︑生涯を誓って子を作るのではない︒
女として成熟し︑男を魅了できるだけの年齢になった︑という理由で… 好意もない男と体を
繋げねばならぬのだ︒
ふ… こればかりは仲間意識が強い︑という気持ちだけでは… どうにもならぬのよ︒
だからな︑
SE: 立ち上がる音
私は… 嬉しいのだ︒
よく知らぬ世界に飛ばされたとしても︑お前のような… 心を揺れ動かされる者と出会えた
ことが︒
︵深呼吸︶︵覚悟を決めたように︶お前なら… ︒お前とならいい︒
私と…… 契りを結んでくれ︒
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