4話密着恋人繋ぎ:手をギュッとさせて欲しいッス
……なんですとぉ
ふーっ!
ひっ! ――あ……びっくり、させちゃったッスね……
いきなり耳元で声をかけるよりいいかもって思ったんスけど、
考えてみたらこっちの方が、もっと驚くッスよね。もうやらないッス。
……え?こっちの方がいいんスか?
はぁ……アシくん変わってるッスねぇ。
まあ……ウチに言われたくはないでしょうけど
あ、いや、それよりちょっと……手を出して貰っていいっスか?
はい。右手で
……ぎゅぅっ
いやぁ……手を繋ぐシーンのアップがあるんスけど、
そこを特に丁寧に書いて欲しいって、
編集さんから指示が来ちゃってですね……
ぎゅぅ……
なるほど……男女で手を繋ぐと、手の大きさが違ってくるんスね
じゃあちょっと手を組み替えて、今度は恋人繋ぎで……
ぎゅぅ……
おお……これは、手のひら同士の密着度が高い……。
結構伝わってくるッスね
相手の鼓動とか、体温とか、汗っぽい触感(しょっかん)とか……
こういうのも、作画に落とし込まないと……
……って、すすすすすす、すんませんっ!
距離っ、距離感近いっ、近すぎる……っ
す、すンませんっ、ほんと、申し訳ない……って。
あ……ここで謝っても聞こえないッスよね……
えっと……改めて……申し訳ないッス
いきなり手を繋ぐとか、ダメっすよね。しかもこ、恋人、繋ぎんなんて……
完全に、距離感間違えましたぁ……。いや、ほんとすンません
漫画のこととなるとつい……周りが見えなくなっちゃって。迷惑ッスよね?
……いいんスか?ふえ?そんな先生も素敵って―― な、なに言っんスかもぉ……
いやまあでも……迷惑でないのなら、正直助かるッス……
ウチ、資料見ないと、描けないんスよね……
今回ただでさえ時間が無くて、資料なんて探すヒマもないッスから……
また何かあったら、お願いしちゃうかもしれないッス
……いいんスか?それは、本当に、助かるッス
あの、じゃあ最後にもう一回……
別の角度からも、恋人繋ぎを……
ぎゅ……
おお、なるほど……
ぎゅぅ……