Track 6

エピローグ

おはようございます。  そちらの椅子にどうぞ。  …………。  単刀直入に言いましょう。  あなたは、精液検査に、また引っかかってしまいました。  ……いえ。数値が悪いわけではありません。  むしろ、その逆で……  精液の数値が、〝よくなりすぎた〟のです。  検査での判定は、基準値の下限がありますが……当然、上限も存在しています。  あなたの精液は、濃度も粘度も、色も匂いも……上限を上回っていました。  さらに、射精量も、入院時から増加してしまっています。  精液は数値が高すぎてもあまりよくありません。  精力の増強により、タマタマがずっと大量の精子を製造し続けることになり……その結果、性的に興奮している時間が増え、あらゆる臓器に負担がかかってしまいます。  この精液治療は……予想を遥かに超えて、あなたに効きすぎてしまったようです。  完全にわたしのミスです……。  申し訳ありません。  申し上げにくいのですが……  あなたには、これからさらに一週間、入院してもらうことになります。  新しい治療計画のもと、経過を観察して……一週間後に、退院できるかどうか、改めて判断します。  もちろん……その間の給与なども、問題なく補填されますので安心してください。  ……よろしい、でしょうか?  ……ありがとうございます。  そう言ってもらえて、本当に助かります。  次の一週間で、絶対に精液を基準値に戻してみせますので……  ……はい? 「嬉しい」、ですか? それは……どうして?  ……わたしと?  ……まさか、わたしと、お別れしなくて済むから……でしょうか?  それは……。まあ。その……  ……喜んでもらえて、良かったです。  はい。  こほん。  では、本当に申し訳ありませんが……  これからも……よろしくお願いしますね。  治療、一緒に頑張っていきましょう!