◆パート1 全人類もこもこ計画
はじめまして、私は全人類をもこもこにするためにやってきたモコといいます。
ちょっ、ちょっと待ってくださいー。
ツッコミたいことが山ほどある? まあまあ、突然モコみたいな美少女が来て焦る気持ちは分からなくもないですが一旦落ち着いてください。ほらっ深呼吸して、すぅーはぁーすぅーはぁー。
少しは落ち着きました? えっどうやってこの家に入ってきたかって? ふふふ、それは教えられないですよ。
い、いいですか、私がどうやって家に入ったかは重要ではありません。
ようやく硬い扉が開きましたね。そうでした、重要なのはどうやってあなたを“もこもこ”にするかが重要なのです。んふふ♪
おや、どうやらその反応、あなたもしかしてもこもこが何なのかご存じない?
あらー、そうなのですかー、むふふっ、もこもこがなんなのかご存じないのですかー。
いいでしょう。このもこもこの化身モコが教えてあげましょう……『全人類もこもこ計画』の全貌を……!
もこもことは、お仕事や学業、はたまた人生そのものに疲れ切ってしまった人類に対してのひとつの答えです……!
モコの瞳によればあなたもその疲れ切った人の一人とお見受けしました! よって……もこもこされてもらいますっ!
このようにもこもこで優しく包み込んで、温もりを与えることで身も心も温まり日頃の疲れや嫌な気持ちを取り除くことができるのです!……たぶん。
なんと!聞こえてしまいましたか……実は正直なところ、どれほどの効果があるのかよくわかっていないのです。
というか、結構満更でもなさそうな表情ですね? もしかして早速もこもこが気に入っちゃいましたか?
でも仕方ないですよね、モコみたいな美少女にこうやってもこもこされたら嬉しくて頬が緩んじゃうのも納得です。うんうん。
あっこらっ、逃げちゃダメ、ですよ。
もこもこするのは嫌い?
ふふっ、やはりそんな嫌がってる素振りはなさそうですし、明日まで、お試し……ということで。
あなたをもこもこの虜にして全世界に旅立つのです!
目的は分かったけどモコが何者なのか分からない……ですか?
それが私もよく分かってないんですよね。ただ生まれたときには既に人類をもこもこにするという使命を受けていたのですよね。それでふらふらっとしていたらここにたどり着いたといった感じです。
たどり着いた……というのは少し語弊がありますね。正確にはあなたにたどり着かせてもらった、といったところでしょうか?
洋服屋さんで温かそうなモコモコな服を買った記憶はありますか?
そう、それです。実は……あれがモコなのです!
そのぉ……恥ずかしながらモコはあれであなたに買われる前はあのお店にずーっと長い間置かれていたんですよね。要するに売れ残っていたわけです。
でもそんな私をあなたは買ってくれた。それが嬉しくてなんとかお礼をしたいという気持ちから気付いたらこのような姿になっていたのです!
ということでモコは全人類をもこもこにする使命を受けていますが、まずはあなたからもこもこにしてあげようと計画したわけなのです……!
そう考えるともしかしたら付喪神のようなものなのかもしれないですね……モコってもしかしてすごい……!?
ともかくまあそんな感じです。なのでモコの使命のため協力してください! というか強制なんですけどね、むふふっ。
それではよろしくお願いしますっ! ……えへへっ。