Track 12

06【0633文字】一緒におやすみ

もう。寝る時まで何でそんなくっついてくんの? はいはい。お手手繋いで寝ましょうね。 あぁ。この手ですか。 義手なんですよ。何か変だと思ってました? 見た目も動きも本物クオリティのつもりなんですけど。 わかっちゃうか。 いや、強く握んなくていいって。 嬉しいけどさ。 うん? はいはい。これを見てほしいの? えっ。これあなたが書いたんですか。 文字書けませんでしたよね。 へぇ。内緒で勉強してたんだ。 ……すごい。あなたらしいです。 じゃあ、あたしなりにこの推理に真面目にお答えしましょう。 あなた、ずいぶん先代勇者が気になるんですね。 ふむ。 結論から言うと、当たってる可能性はあります。 たとえばあなたの言う通り、先代勇者の刻印は腕にあったとします。 もし、彼女が何らかのきっかけで腕を失ったなら。 同時に刻印も失くし、加護は消えたでしょうね。 戦い続けたくても、これではとても。 あたし含む世の人々は、先代勇者が自分の使命を放棄するため、自分で腕を切り落としたと思ってますが……。 もしそれが事故や戦いによるものなら、彼女は今もどこかでこっそり生きていて、己の存在を恥じているのかもしれません。 はい終わりー。 ねぇそんな事より、麻酔切れて声も元に戻ったらさ。 あたしの仕事手伝ってくれませんか。 メイドとかナースとか。奴隷らしく労働しろ❤ 考えといて下さいよ。 それで、空き時間に勉強教えますから。 前みたいに……あれ? もう寝ちゃった? まぁ、イッた後は眠いよね。 ちゅ。おやすみ。 ……ずっとこんな風に暮らせたらいいのにな。