Track 4

■3Bやっぱり、泳ぐの?

遥】ねえ、お兄ちゃん。やっぱり...泳がんと......だめ?ほら、海って別に泳がんでも、こうやって眺めたり、浅い所に足を付けて水を掛け合ったりするだけでも、結構楽しいと思わん?うち...泳ぐのはちょっと、苦手っていうか、実は...その、怖いっちゃん...ほんとに?ちゃんと、うちの手、ぎゅって握っとってくれると?なら...良かよ。一応、浮き輪もあるし...大丈夫やろーとは思うけど。絶対に離れんでよ?うぅ...じゃあ、ゆっくり...やけんねんっ...あぁ、ほんとに入っとぉ...お兄ちゃん、うちの脚、もう見えんくなっとーよ?それどころか...腰まで浸かって......ひゃっ、お兄ちゃん?ちゃんとうちの手、ぎゅぅってしとってよぉ...怖いちゃけん...もう...絶対、放したらいかんよ...?フリとかじゃなくて、本当にっん...お兄ちゃん。もう、胸の辺りまで浸かって...足、届かんっちゃけど...うん...じゃあ、この辺りでいったん止まろっかふぅ...。皆、もっと遠いところで遊んどるったいね.........別に、羨ましいとかじゃなくて、なんかすごかぁって...うちは、殆ど泳げんし...お兄ちゃん、本当は楽しくないっちゃないと?そう...なん?...うちも、お兄ちゃんと一緒なら...楽しいかな...確かに、海はちょっと怖かけど...こうして浮き輪もしとーし...お兄ちゃんが、うちの手...握ってくれとーけん......ん、はぁ...海って、不思議やねただ浮かんどるだけなのに...気持ち良くて... 12慣れてくると、平気...かもえ、泳ぎ方...お兄ちゃんが教えてくれると?...うーん、でも...せっかく海に来たんやし...じゃあ、うちが泳げるように、優しく教えてね...?えっと、まずどうすれば......って、バタ足?えぇ、こんなに人がいるのに、浮き輪つけてバタ足なんて恥ずかしかぁ...うぅ......ほんとに、うちらのこと、誰も見とらん?なら、ちょっとだけ...ねお兄ちゃん、うちのこと引っ張って。足、バタバタ~ってするけんん...っ!どう...?良い感じに、泳げとぉ?もっと...脚を細かく動かすっちゃねん...っ、こう?あ...さっきよりも、前に進んどるような...お兄ちゃん、今そんなに引っ張ってなかろ?ということは、うち...うまく泳げとるんかな?...お兄ちゃん、本気でそう思っとー?なんか、微笑ましそうな顔しとーのが気になるっちゃけど...でも、こうして手を繋いでもらっとーのは、子供っぽい感じやけん...気持ちは分かるよ?でも、ちょっと複雑というか......むぅ...ねえ、お兄ちゃん、ちょっとだけ手を離してみてくれん?大丈夫大丈夫、ほんのちょっとだけやけん。今こうやってできとーし、うちも少しは泳げるようになったかもしれんよ?いいとっ、いつまでもこうやっとっても泳げるようにならんっちゃけん。うちを信じて手を離してみてようん、大丈夫。うちだって―うわわわっ、や、やっぱり無理い!あ、足がつかんよお!お、おぼれちゃ―あ、ありがとうお兄ちゃん......やっぱりまだまだ無理やったね...... 13......うちはやっぱり、お兄ちゃんがおらんとだめやねだってお兄ちゃん、うち、手を離した時ばり怖かったもん。一人になっちゃったみたいに心細くて......でも、お兄ちゃんがこうしてくれとると安心すると。そうじゃないと、こうやってバタ足もできんよ。お兄ちゃんがおるだけでぜーんぶ大丈夫だって、思えるっちゃん。やっぱりうちにはお兄ちゃんがおらんとダメ、かな。やけん、お兄ちゃんももっとうちを子供じゃなくて......恋人として扱って......あっ、もー、またそうやってほんわかした顔しちゃって...はぁ、結局...こうやって泳げとるわけやし、楽しいけんいっか...ほらお兄ちゃん、そろそろ違うとこに連れて行ってようち...お兄ちゃんと一緒なら、もっと泳ぎよきたかぁ...ふふ、あははっ