Track 1

『悲しいことがあったとき』

 おかえりなさい。  うん? どうかしたの?  なんだか、あなたの顔、とってもしょんぼりしちゃってる……。  ……何か、辛いことがあったのかな?  うん……じゃあ、こっち、おいで。 お姉ちゃんが、ぎゅーってしてあげるから。  うふふ、いらっしゃい。  はーい、ぎゅーーーーーーーーーーーっ。  うふふ……っ。 いいこ、いいこ……。  大丈夫だよ。 もう、何も辛いことはないよ。 ここには、あなたをいじめるものは、なーんにもないの。 だから、安心して、お姉ちゃんに甘えてね。  よし、よし。大丈夫……大丈夫。  いいよ。 お姉ちゃんに、もーっと強く抱き着いても、大丈夫。 あなたの気が済むまで、お姉ちゃんのこと、ぎゅーってしてね。  でも……あなた、本当にぐったりしてる……。なんだか、ヘトヘトって感じだね。お姉ちゃんに抱き着く、っていうより……倒れ掛かってきてる、って感じ。  本当に……辛いことが、あったんだね。  話したく、ない? ……うん、わかった。お姉ちゃん、無理には聞かないから。  だけど……あなたのその疲れ方を見ると、相当、辛いことだったんだなぁってことは……よく分かるよ。  うん……。本当に、辛かったんだね……。  だけど、それでも、あなたは逃げ出さずに……最後まで、頑張ろうとしたんだね……。  それって、とっても、偉いことだよ。  すっごく、カッコいいよ……。 あなたはお姉ちゃんの自慢だよ……。  だけど……一つだけ、知って欲しいな。  本当に辛くて、もう頑張れない、ってときは……逃げてもいいんだからね?  逃げ出して、お姉ちゃんのところに帰ってきても、大丈夫なんだからね?  お姉ちゃんが、ぜーったいに、あなたのことを守ってあげるから。  ふふっ。 逃げたりなんかしても、お姉ちゃん、あなたのことをカッコ悪いなんて思ったりしないよ。  お姉ちゃんは、あなたが頑張りすぎて、体を壊しちゃうほうが、やだな。  だから、少しでも無理だな、って……辛いな、って思ったときは、すぐに、お姉ちゃんのところまで、戻ってきてね?  お姉ちゃんが、ぎゅーって、抱きしめてあげるから。  ……ん? ふふ……っ。 ひょっとして……泣きそうになっちゃった?  いいよ……。 泣いても、いいよ。 お姉ちゃんが、よしよし、ってしてあげる……。  馬鹿にしたりなんて、しないよ。 泣くのは、いいことなんだから。 気分がスッキリするし……嫌なこと、ぜーんぶ体の外に出せるから。  オトコノコが泣いちゃいけないなんて、誰が言ったことなのかな? そんなことは、全然ないのにね。  あなたは、泣いてもいいんだよ。 お姉ちゃんの胸の中で、いーっぱい、泣いていいの。  うんうん。我慢、しないで? 声を出して、思いっきり、泣いて? あなたの涙は、お姉ちゃんがぜーんぶ、受け止めてあげる。  よーしよし。よし……よし。  大丈夫。大丈夫だよ。もう、大丈夫。何も、怖くないよ。お姉ちゃんが、あなたのそばにいるよー。 絶対に、大丈夫。大丈夫だから。  よーく、頑張ったね。たった一人で、ずーっと戦ってきたんだね。辛いことと、向き合ってきたんだね……。  それって、すごいことだって、お姉ちゃんは思うんだ。だから、ひどい目にあったからって、落ち込まないでいいの。自信を持っていいの。あなたは、もう、いっぱい戦ったんだから。  ここでは、もう……何も、頑張らなくていいの。あなたの弱いところを……ぜーんぶさらけ出しても、いいの。お姉ちゃんに、いっぱい甘えても……いいの。  いっぱい泣いて、いいんだよ。  大丈夫……大丈夫。 ぜーったいに……大丈夫だよ。  よし、よし。辛かったね。本当に頑張ったね。えらい、えらい。とっても、カッコいいよ。あなたは、世界一、カッコいいよ……。  大丈夫、だよ。もう、絶対に……大丈夫。  ん……少し、落ち着いた?  え? ああ、ふふっ、確かに、お姉ちゃんの服、あなたの涙で濡れちゃったけど……気にしないで。服は、また洗えばいいけど……あなたの心は、洗うことはできないんだから。  あなたは、何も気にしないで、いいの。  もう、大丈夫? ……でも、念のため、もう少しだけ、お姉ちゃんとぎゅーってしてようか? ふふっ、気にしないで。  ぎゅーーーっ。  ……明日のことなんて、まだ考えなくてもいいよ。今日はこれから、お姉ちゃんと一緒に過ごそうね。  あなたのために、腕を振るって、美味しい料理を作ってあるから。 一緒に食べようね。  それから、一緒にお風呂に入って……一緒に寝ようね。  それで……明日のことは、明日、考えよう?  ……うん。  一つだけ、覚えておいてね。  例え、どんなことがあっても……  お姉ちゃんだけは、あなたの味方だからね。