Track 4

4.怪奇

ガタガタガタガタガタ......。ブルブルブルブルブル......。こんばんはぁ......ドォルでぇす......。突然ですが......。これは、本当にあった......世にも奇妙な......怖い話......です。とある女の子が、買い物帰り......夜道を歩いていました。彼女の住む町は、都会とは言えませんが、それなりに活気のある明るいところなのです。しかしその道だけは......藪やぶに囲われ、街の灯りを遮っています。真っ暗......なのですよ。見えるものは......道の先、微かな住宅の電灯だけ......。彼女は怖いなぁ、怖いなぁ、と思いながらね、こつこつ、こつこつ、まるで世界に自分しかいないような、そんな孤独な音を響かせてぇ......歩いていました......。こつこつ、こつこつ......ぐしゃり。......何かを踏みました。「ひっ」と声を上げ、冷や汗をひとつ......。スマホのライトをつけ、おそるおそる......、靴の裏を......、見ましたッ。なんと、なんと......。......犬のうんちでした。以上。というわけで、チョコケーキ買った帰りにそんな出来事がありました。......クゥゥ。犬のうんちは飼い主が責任をもって片付けてくださいッ!僕はそう言いたいッ!なんでよりによってチョコケーキ買った帰りなんですかッ、もうッ!このやり場のない怒りは、どこにぶつけたらいいんですかぁああッ。あ......もしかして、夜食の食欲に負けて、ふらふらケーキ屋さんへ赴いた罰ですかね......ハハ。うううッ。......ん......はい、......ありがと。元気出します......。ていうかすみません汚い話をしちゃって......。今まで不幸な目に遭っても誰にも言えなかったから......。貴方なら聴いてくれるって思って、回りくどく話しちゃいました......。いつもいつも聴いてくれてありがとうございます。最初の反応、すごく素敵でした。怖い話......苦手ですか?うふふ。アッ。僕は得意です。幽霊とかほんと、怖くないですから。マジで。ほんと。僕より色白の幽霊なんて、ワンパンでぶっ飛ばしてやりますよ。だから怖くないんです。怖くないです。......怖くないです!......怖くないって言ってるでしょ!ちょっと、目を細めないでください!ちがッ、だから、僕は――エッう、後ろ?!いや誰もいませんよ!指さしても誰もいませんよ!ちょッマジッ本気でやめてください振り向けませんッ。怖い怖い怖い怖い。苦手ですッ!幽霊とか苦手です怖いです無理です!だからやめて!......ウウウ......どうしてくれるんですか。それ以上いじめると漏らしますよ。 いいんですか。ただでさえ汚物なのに、汚物オブ汚物と化しますぜ旦那......。......ほんと?誰もいない?......よかった......。はい......ここは、貴方と僕だけの世界ですね。アダムとイヴですね。あそうだ、果実はないけどケーキがあった。食べちゃいますね。......うわ、靴洗ったりしてたから温ぬるくなっちゃった。でもまあ、うん、僕にはこれくらいが丁度いいんだ......。......あ、怪談と言えば、日本だと夏の風物詩ですけど、外国は冬らしいんですよ。ウィンター・ストーリーって言って、皆で怖い話をするんだとか......。ああ......なんて恐ろしいんだろう。貴方は怖い体験とかした事あります?なんかよく、ホラー番組とかで芸能人が怪談語ってますけど。皆して怖い思いして、僕なんか一度もないですよ。いやさっきあったけど。そういうんじゃなくて、得体の知れない何かに出会っちゃったりだとか......。未知との遭遇ってやつです。ありませんよね~、あはは。怖いですよね。会った事ないものとかひととかに会うのって。あは。あはは。あぅ、うー。いえ、あの。えと、その、実は......先日の件で......。ほら、オフ会......。......はい。僕......決めました。貴方と......会いたい。会いたいです。直接お話したい......。えとあの、お住まい......教えてください......。......え、あ、え?えぇえ?びっくりした......。あ、そ、そうなんだ。そうなんですね。......まさか同じとは......。......会えますね......ぅぁぁあ。うぅうう。あ、は、はい。僕自身、意外です。こんな決断するなんて思いませんでした。でも、でもでも、頼み事やお願い事ばかりで申し訳ないし、貴方から僕に望んでくれる事はすごく嬉しいし、純粋に......会いたいので。いろんな気持ちに後押しというか、それが勇気になって......それで......。あ、そ、そんなお礼なんてしなくていいですっ。頭下げないでくださいっ。あの、その、日時と場所......決めましょうか......。