02
ふんっふ、ふんっふふーん~本当にお父さんは仕方ないなぁ。
あんなに傘使ってねって言ったのに。
よいしょ、はい、タオル。
でもよかったね有給使えて。
仕事が落ち着いてたおかげで気兼ねなくお休みできるんでしょ。
ふふ…。今日は悠が一日中看病してあげる。
え…学校?
お父さんがピンチのときに行くほど薄情な娘じゃないよ。
なんてね。今日はたまたま創立記念日でお休みだから。
だから安心して休んで…。
よいしょ…。
洗濯、洗濯…あ、またこんなところに脱ぎっぱなしにしてる。
これもいれちゃうよ…。
洗剤いれて…ふぅ…。よし。
あ…そういえば…おばあちゃんちから送られてきた梨が冷蔵庫の中にあるんだっけ。
あった。お父さん、梨、食べる?
ふふ、じゃあ、剥いてあげるね。
ん…ふぅ…
大丈夫…毎日料理してるから、
ナイフで手切ったりなんてしないよ。
しゃり…しゃり…しゃり…。
ふぅ…ん…ふぅ…。
よし、むけた…ふふ。
あとは、適当なサイズに切って…よいしょ。
これでいいかな…。
これに爪楊枝をさして…。
はい…あーん。
ふふ、シャキシャキ。
おばあちゃんちの梨は甘くて美味しいよね
もっと食べて。
ふふ…
悠も…いただきます。あむ…あむ…あむ…あむ…
美味しいね…。
ん…なに?
あんまりお父さんのそばにいちゃだめ?
っていっても風邪引いてるお父さんがいるこのうちに安全な場所なんてないよ。
だから風邪ひいちゃだめって…あぁ…このやり取り前もしたなぁ…。
はむはむ…はむはむ…。
お父さん…。
悠はお父さんが心配です。
何がって…。
この前悠が目を離したスキにゲームで遊んで、結局次の日つらい思いをして出勤してたの。
なのにまたゲームやろうとしてるでしょ?
手元が寂しくなる?
はぁ~。しょうがないなぁ。
……そうだ。
アレで寝てくれるかな…。えへへ、ただのビンと
その他いろいろなものだよ。
この中にいろんなものを落とすの。
その音が心地よくって、お父さんは思わず寝ちゃうってやつ…。
まずは、小さい氷から…。
小粒の氷を…この中に…。
一粒、一粒いれていきます…。ふぅ…ふぅ…。
案外いい音でしょ。
落ち着かない?
ふふ…。
こんこんこん…
こん…こん…こん…
これを、スプーンでかき混ぜて…
くるくる…くるくる…
ぐるぐる…ぐるぐる…。
この前、理科の授業でこんなことやったんだよね。
ビーカーの中でくる…くる…くる…。
あれ…なんの実験だったかなぁ。
あ、そうだ。
この中に塩を入れて混ぜると温度が下がるってやつ…。そ。0度の温度計がマイナス20度まで下がるんだよ。
なんでかは忘れちゃったけど…ふふ。
くる…くる…くる…くる…
うぅん…。ふぅ…ふぅ…はぁ…はぁ…
さらに…ここに炭酸水を入れます。
キャップを外して…ふぅ…。
いれて…ふぅ。しゅわしゅわ…ふふ…
しゅわしゅわしてる。
しゅわしゅわ…しゅわしゅわ…
しゅわしゅわ…
この音、気持ちいいよね。
ふ~~。
ふ~~。
ふふん。いたずら…してみました。
びっくりした?
どしたの…?赤くなってる。なんでもない?
じゃあ…
よいしょ。
…膝の上寂しいから…ね?
ふふ…。膝枕…だめ?
横向きになって…布団でお顔隠して…ふふ…子供みたい
ほんとに恥ずかしいんだね。
ふ~~。
ふ~~。
ふふ…。
よし。よし。
お父さん…。前にも言ったけど、一人で頑張らないで。
悠のことまだ子供だって思っているかもしれないけど…
人の気持ちは少しぐらいわかるよ。
辛いこと、悲しいこと…。
ちゃんと話してくれたら聞いてあげる。
ね。
ふ~~~。
ふふ…。油断してたね…。
また震えてる。
お父さん、お耳弱いよね…。
ごめん、ごめん。ふふふ…そんなつもりじゃないの。
身体が弱っていると背中とかが小さく見えるせいかな…構いたくなっちゃう。
まるで私がお母さんになったみたい…。
でも、そういう日があってもいいよね。ふふ…。
ぽん、ぽん…ぽん…ぽん…
ぽん、ぽん…ぽん…ぽん…
ぽん、ぽん…ぽん…ぽん…
寝息…。
あったかい。
もうぐっすりだね。
ぽん、ぽん…ぽん…ぽん…ぽん、ぽん…ぽん…ぽん…
お膝の上、安心するんだね…。
よしよし…。