●パート1
さぁ、歩いてください。
暴れられると面倒なので……、今は拘束させていただいています。
申し訳ないですが、従ってください。
……。
私はあなたを飼育することになった、飼育員の田辺佳苗(たなべかな)といいます。
言葉の通りですが、あなたを飼育し、健康状態などすべてを管理させていただきます。
まだ状況が把握できてませんね?
あなたは血液検査の結果、体液に希少な成分が含まれることが判明しました。
検査の存在も公になっていないので知らないのも無理はないですが、健康診断などで、何らかの血液検査を受けた際に調べさせていただいています。
結果次第ですが、非常に有望と思われる人は今のあなたのように拘束され、このような場所に運ばれてきます。
もちろん……、危害をくわえるようなことはないのでご安心してください。
到着しました……ここがあなたを飼育するために用意された牧場(ファーム)です。
牧場といっても、ほぼ何もない広い部屋です。
鎖を繋ぎますね。
鎖は連れてくるときの一時的なものです。後程センサー付きの首輪に取り換えます。
ひとつ、注意事項があります。
こちらが必要とする要求を拒んだりした場合、あなたの身体は完全に拘束されます。
一度拘束されればあなたが一生を終えるまで身動きひとつ取れなくなります。
そんな一生は嫌でしょう……くれぐれもご注意ください。
私の指示に従っていてくれれば何も問題ないので、今後は私の言うことを聞いてください。
では、あなたはこれからここで生活してもらいます。
将来のことを心配しているのですか?
以前の暮らしよりも“人間らしい”暮らしができますよ。
言うことさえ聞いてれば施設は常に清潔ですし、ご飯も毎食食べられます。
将来を心配する必要は何もありませんよ……人間という“家畜”になっただけです。
それでは……まずはそこに座って、食事を取ってもらいます。
立ってないでそこに座ってください。
食べたくないのですか? お腹空いてると思ったのですが……。
では飲み物だけでも飲んでもらいます。
毒なんて入っていないので安心してください。
しかたないですね。……暴れないでくださいね。
んっ……。
…………。
んっ……ちゅぷっ……くちゅっ……ちゅっ、ちゅぷっ……んっ、くちゅっ……。
ちゅぱぁ……しっかり、飲んでくださいね。
私の役割は、あなたを健康的に管理することも含まれているので、せめて飲み物くらいは飲んでください。
…………。
本日は施設やあなたの状況を説明するだけなので、あとはゆっくり休息していただいて結構です。
慣れるまで大変だと思いますが、明日から頑張ってください。
それでは、また――。