Track 4

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シナリオ:AmphibiA @CrCrCrucifixion 【キャラ紹介】 聞き手(あなた)……何の変哲も無い村から幼なじみを連れ魔王を倒す旅に出発、後に本当に魔王を倒し勇者と讃えられた男です。現在は国の王女様と婚約し、お城で暮らしています。 女性……勇者の幼なじみ。引っ込み思案ですが勇者のことを思い一生懸命つくし、勇者や仲間と共に魔王を倒しました。現在は勇者以外の仲間たちと世界中にある遺跡を調査して回っていたのですが、ある日とある国に立ち寄ると… 【シナリオ】 ……ホント、もうすぐ死んじゃうっていうのに……そんな落ち着いた顔、なんで出来るのさ。 何処からそんな余裕が出てくるの……ワタシだったら無理だよ、こんな時にそんな顔なんて。 絶対にもっと、……絶望した顔になっちゃうんだろうな。 ねぇ、……覚えてる? あの……魔王の最期の顔、さ。そう言えば魔王の顔も、安らかだったよね。 最期の瞬間って、そんなものなのかな……ワタシには分かんないや……。 ……でもワタシたち、ホントに倒したんだよね。魔王を。王様からは「おぉ勇者よ!」なんて言われちゃって……あはは、あの時は思わず照れちゃったよ。 今だから言うケド……冒険に誘ってもらってさ、一緒に出発して、そのうち仲間も増えて、応援してくれる人もたくさん出来て……それでも絶対、魔王を倒して世界を救うだなんて無理だって思ってた。 きっと何処かで挫折して諦めちゃうか、……それともみんな途中で死んじゃうんだって、こっそり泣いた日もたまにはあったよ。……知ってた? なーんて、そんなこと無いか。鈍感だもんね、キミ。 だからこんな、今だってワタシの気も知らないでのんびりとした顔しちゃってさ。 でも、……ホントに倒したんだね。みんなと、仲間と一緒に。魔王を。 ワタシの回復魔法、役に立ってたかな? 一応、精霊さまのご加護もキチンと受けてたんだケド……キミの痛がる顔だけは見たくなかったから、頑張ったんだよ? もう何度もダメだって思ったケド……あの時だってみんな死にそうになって、キミも苦しそうで……だからワタシが頑張らなきゃって、キミだけは死なせないって……。 そしたらキミったら、「他の仲間から先に回復を!」って言うんだもん、……ホント、昔から自分のことは後回しだったよね。キミのそういうところは少しだけ……ほんの少しだけ嫌、だったかな。 でも最後にはみんな無事なまま、魔王を倒せたね。誰も死なずに、王様も精霊さまもみんなみんな喜んでくれた。祝福してくれた。そしてみんなみんな、たくさんの人がそばに居てくれた。 でも、結局はこう……こうなる、の、かな……最期はみんな、こう……こんな、独りに……? うぅ……うぅう…。 ねぇ、……起きてよ、ワタシのこと、置いて逝かないで……独りにしないでよ……知ってるでしょ? ワタシ、引っ込み思案で……昔から友達も居なくて……キミだけだったよ、構ってくれたのは。 だからあの日、冒険に行こうって誘われた時……目の前に勇者様が現れたって、何となく信じちゃった。……あはは、ワタシってば単純よね。 でも、……孤独なワタシを救ってくれた勇者様と、一緒に冒険をしている。そう思うとワタシは、いつだってとびきりの笑顔で戦えた。まぁたまにくじけそうにもなったケドね、あはは……。 それでも独りに脅えて生きるより、キミと一緒に死ぬならソレもありだなって、……ちょっとおかしな考え方かもしれないケド、でもホントにそう思ってたんだよ? ソレは今だって、こんなときだって、変わらない……変わってない。コレは、コレだけはホントのワタシの気持ち。ソレだけは、……こうなってしまった今でも、せめて聞いていてほしかった。 ん、……あはは、ダメだね、コレは言わないでおこうって、思ってたケド……やっぱりダメ。今、言っておくね?もう、コレが最後なんだし。 ワタシ、キミのことが……えっと、……あはは、他に誰もいないのにワタシってば何、照れてるんだろうね……。 ……うん。言うね? ワタシ、キミのことが、……好きだった。本当に。……ううん、今でも好き。大好き。キミのことが。 ……あはは、なーんて、ここまで前振りしてたらこうくるのはバレちゃってたかな? 思えば一緒に冒険したみんなは、よくワタシたちのこと冷やかしてたよね……そのたびにキミは誤魔化してたケド、ワタシは本気だった。 でもさすがに、……少しは気づいてたよね? 思ってたよね? 態度には出てたと……思うんだけどな。 あはは……なんで今、こんなこと言っちゃうんだろうね……今さら、こんなこと何の意味も……慰めにもならないのに。キミには王女様だって居る……そうだよ、王女様……居たもん、ね。 あ……なんだかここ……寒いね。床が、冷たいのかな。 ゴメンね、せめて身体を温めてあげたいケド……どうやったら良いのか、分からない、よ……。 こういう時、【人肌で温める】って言うのかな……仲間のみんなも、よく冷やかしてたね。「俺らは宿に居るからごゆっくり!」ってワタシたちを馬車に残してさ。 あはは、酷いよね。宿の方が絶対過ごしやすいのに……「雨で濡れた身体を温めるには、人肌が一番だ!」って。「服が透けたまま宿に行くのか?」って。もう、ホントにデリカシーのない人たちだった、よね……。 まぁ、あのときは結局なにもなかったケド……。 べ、……別に期待してたワケじゃ、ない、よ? でも、……何かあっても、その……ワタシは、良かった。構わなかった。 だから、……今、あのときは出来なかったこと、してくれなかったこと、……するね。 …… …… ん……。 …… …… ……ねぇ、見てるのかな? ……なんて、ムリだよね。分かってる。だからこそ、……今、こうしてるんだよね。 こんな事にでもならなかったら、こんなこと一生しなかっただろうな……。 でも……やっぱり、やめるね。こんなワタシが、キミに触れちゃダメなんだ。 こんな……こんな身体になっちゃったら。せめてキミだけはキレイなままで……いてほしい、から。 …… …… …… …… う、うぅう…… なんで、なんでこんな事に…… なんでこんな事に、なっちゃったの……? なんで、なんでなんでなんで!? なんでみんな、ワタシたちを殺そうとするの!? あんなに優しかった、祝福してくれたみんなは何処に行ってしまったの!? ワタシたち、頑張ったじゃない! どれだけボロボロになっても、死んでしまいそうになっても、みんなのため、世界のためだって! キミは歯を食いしばって……頑張ったのに……。 なのにどうして! なんで! 王様だってあんなに喜んでたのに! 何? 何なの!? 討伐隊って! なんでワタシたちを討伐するの!? アイツらは異常だ、バケモノだ、だから魔王を倒せたんだって! なんでそんなこと言われなきゃいけないの!? みんなみんな、仲間はみんな死んじゃったっ……死んじゃった、んだよ……? 何なのっ!? 何でなのっ!? なんで……何であんな、あんな残酷な殺され方しなくちゃ、いけないのっ……! 生きてた、生きてたんだよ!? 生きてたのに、お腹を、……切り、裂かれて……。 「魔物なら胃袋に人間が詰まってるハズ」だって! そんなワケない、そんなワケないよ! ワタシの仲間が魔物のハズないってどれだけ声を振り絞っても!  ヤツらは人間なんて食べない、そんなヤツになんて遭ったことないってどれだけ叫んでも! 誰も何も聞いてくれなくて! 結局なにも出てこなかったのに……「なるほど、オマエの言うとおり魔物は人間を食べないんだな」って! そんなことじゃない! ワタシの言いたかったことは……そんなことじゃ、なかったのに……。 しかもその時、ワタシはもう魔法が使えなかった……。 あ、あは、あはは、そうなの、そういうことなの、……もう、精霊さまからも見放されちゃったのよ……だから魔法が、使えなくなって……。 ねぇ……ねぇ、起きて、起きてよ、そんな顔しないで、みんなみんな、ワタシたちを裏切ったのよ!? もうオマエらなんか要らないって、この国には、世界には不要だって! ワタシ聞いた! ハッキリとこの耳で聞いたのよ! ワタシたち利用されてただけなのよ、世界を救うまで! 魔王を倒すまで! だからこんな、あっさりと……お城に住んでたキミまで、殺そうとして……王様も、兵士も、みんなみんな、キミを殺そうとして……。 だからワタシ、助けに来たんだよ? 魔法が使えなくなっても、仲間がみんな殺されても、絶対にキミを助けたくてっ……どんなことをしても、キミだけはっ……! でも、結局……キミは……。 ……ねぇ、だからそんな顔しないで! 悪者にされちゃうっていうのに……そんな落ち着いた顔しないでよ! 何処からそんな余裕が出てくるのさっ! ……ワタシだったら無理だよ、絶対に無理! 絶対にもっと、……恨めしい顔になる! なのに何でそんな、そんな静かでいられるの!? 憎くないのっ!? だからやめて、やめてやめてっ! せめてワタシに、伝えてよ……「アイツらを殺してしまいたい」って……「絶対に許さない」って! そしたらワタシ、何でもするよっ!? 絶対にどんな手を使ってでも、みんな殺してみせる! アイツらをみんな、みんなみんな苦しめてあげなくちゃ……だってそうでしょ!? そうじゃなきゃ、ワタシたちは何のために生きてきたの!? 別に褒めてもらいたいだなんて思ってなかった、ただキミがしたいことを手伝いたかった! ソレだけで良かった! ソレだけのために魔法だって身に付けた! どんなに痛くても、血が流れても、身体が動かなくなっても、キミのしたいことが手伝えるなら! ソレだけが、ソレだけがワタシを支えてきた! だから言ってよ! キミが言ってくれるなら、ワタシは何だって出来る! 誰だって殺せる! 魔物だって魔王だってキミが望んだから殺してきたっ! ソレと同じ! ワタシは誰だって殺せる! でも、……キミが、キミが言ってくれないと……望んでくれないと……ワタシ、誰も殺せない……このまま、ただ殺されるだけになっちゃう……。 ほら、……聞こえる? もう、討伐軍はすぐそこまで……来てるんだよ? だからそんな、そんな顔しないで……もっともっと、この世界を恨んでよ……キミはこんな時でも、優しすぎる、よ……こんな風になっても自分のことは後回しなんて、ダメだよ……やめてよ……。 …… …… ……あはは。 もう、ダメ、だね……。 もう、時間が、……来ちゃった。 ねぇ、知ってる? 見えてる? ワタシの身体、もうこんなになっちゃった……。 コレ、……魔王の身体から生えてたのと同じだよね。黒い、クリスタルみたいなのがこんなにたくさん。 コレ、この力のおかげで、ココまで来れたの。仲間がみんな捕まって、お腹を引き裂かれたとき、急に生えてきたの。 あは、あはは、ワタシだったの。魔物は、ワタシだったのよ。だから言ったのに。「ワタシの仲間が魔物のハズない!」って。魔物は……ううん、魔王は、ワタシなんだから。 いつから、こうだったんだろう? 魔王を倒したときかな? それとも、みんなのお腹が引き裂かれたとき? もしかして、もっとずっと前から……。 どっちにしても……ワタシは、ヤツらを殺すよ。 もうワタシには、ヤツらを生かしておく理由が無くなってしまった。 せめてキミが、何か言ってくれれば良かったのに。 ソレが恨み言なら、ヤツらを殺す。存分に。胃袋にヤツらの子供を詰めてからお腹を引き裂いて。 許せと言うなら、ワタシを殺す。ワタシには、許せないから。でもキミが言うなら、ヤツらは殺せない。だからワタシが死んであげる。 でも何も言ってくれないなら……みんなを殺す。 ヤツらも。ワタシも。そしてキミも。 なーんて、キミはもう死んでるか。 ……それでも殺す。キミが静かに息を引き取ったことは、ワタシしか知らない。ワタシがヤツらの前でキミの首を落とせば、キミは魔物じゃなくなる。魔物に殺された、哀れな人間になる。人間として死ねる。 そしてヤツらも殺す。大人どもは全員。子供には見ててもらう。キミは旧世界の勇者で、ワタシは新世界の魔王。そうして、また新しい物語が始まるの。キミが善なる勇者として語り継がれるまで、ワタシは死なない。 ……! そっか、きっとあの魔王も……だからあんな顔で……。 ……よし。 キミは、キミだけは汚させない。 ワタシは、キミが好きだった。 誰でも優しくて、でも自分にだけは厳しくて。 誰も彼も、思わずキミを助けたくなってしまう。 そんなキミのことが大好きで……そんなワタシのことが、大嫌いだった。 キミには王女様だって居たのにね……最期まで、キミのことを信じていた……。 でも彼女は今、王様の口の中。 あはは、……入りきらなかったよ。 そりゃあ人間だもん、普通に考えればそうだよね。でも、……ソレすらも今のワタシなら、出来る気がする。 だから、……もう行くね。これ以上ここに居たら、キミまで汚してしまいそうだから。 とりあえず、討伐軍は全滅させる。そうやってさらに大勢の人間を集めてから、キミの首を落とすんだ。 だからソレまで……ココで待っていて。 それじゃ……行くね。 今まで、ありがとう。 こんなことになったのは残念だけど……他人が傷ついたとき、キミはいつだって嫌そうな顔をした。……あぁそうだ、思えばキミが嫌そうな顔をするのはいつだって他人が傷ついたときだけだった。 そんなキミが今、そんな顔をするんだから……きっと仕方の無いことなんだろうね。 だからワタシも許そうと思う、人間を。 今からたくさん殺すケド、許そうと思う。 だから期待するんだ。 いつかまた、ワタシの前にキミみたいな勇者が現れるのを。 そしたらキミがワタシを誘ってくれた時みたいに、ワタシはとびきりの笑顔で戦うよ。キミの意志を継いだ……孤独なワタシを殺してくれる、新世界の勇者様と。 それじゃ……ワタシ、頑張るから。キミの分まで。だから安心して、ココで眠っていてほしい。 バイバイ。

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