⑥ピロートーク.ヴァンピレス
【エリン】
……んん、ぅ…………―――あ……れ……??
えっ……と……?
……ぁ…………わたし……意識、飛んでた……??
……あぁ………きもち、よすぎて……イッ……ちゃった……えへへっ☆
はふううぅぅっ………すごかったねぇほんと………
射精と吸血……同時にやると、あんなにも………
……ありがとう、わたしを受け入れてくれて……
すごくね……満たされちゃった……あなたで
上からも下からもって、随分と贅沢だよね、われながら……
でもやっぱり……来てよかったなぁって思うよ
…………あのね……あの………わたし、実は…………
あなたのこと、まったく知らないわけじゃ、なくてね……
うぅん、初対面だよ……挨拶どおりに
でも間接的には知ってたっていうか……
……未来の、旦那様、だったの……ほんとうは
でもわたし……死んじゃったから……なくなっちゃった
……あ、意味わかんないよね?
えっと……まぁ、わたしもよくわかってないんだけど
交通事故でね……持ち直せなくて、そのまま
それで気づいたら……こんなことになってた
心の結びつきかなんかで、思いが強すぎて……
すんなりとあの世にいくことができなかったらしいの
なんか中途半端なことになっちゃって、それで……
わたしはヴァンパイアに見初められて、ヴァンピレスになった
ビックリしたっていうか、理解不能の連続だったんだけど……
物語の中にいるような、フワフワした状態が続いてる
生きているのか、死んでいるのか……
今いるわたしは、本当にわたしのままなのか……
でもね……見た目は、ちょっと変わっちゃったけど
死ぬ前のわたしそのものなの……心も同じだと思う
でも、成長はしなくなった……と思う
すごく不気味……なにか食べなきゃいけないってこともないし
だけどお腹は空く……それを満たせるのは人間の血
その欲求を抑えれば抑えるほどに、乾きが増していく
……わたしは、あなたのことはなにも知らない
ただこうなった原因は、あなたとの因果によるものだって聞いたから
でも、やっぱり知らないから……来ちゃった
知ればきっと後悔するだろうなって思いながら
だって……人間じゃないんだよ?
牙が生えて、人間の血を求める、バケモノ……
知らないのに気持ちが強いのか……
あなたの血が欲しくてたまらないのをずっとガマンしてた
どうしていいかわからなくて……
考えて考えて……こんな、わけのわからない訪問になっちゃった
……ごめんなさい……勝手に死んで……
ひとりにしちゃってる……寂しいよね?
……ひとりに慣れちゃった?
でも本当は……あなたの隣に、わたしもいたはずなんだ
いつかわからない、どんな生活をするのかも知らない
どこで出会い、ちゃんと幸せになれるのかどうかも
どんなデートをして……セックスも、たぶんして
子供は…………全然わかんないね、なにもかもが
……別の人……わたしいないなら、いいんじゃないかなって思ってたけど
……いまは、独りでいてくれてほんとによかったって思ってる
ん……身勝手かな?
わたしもね……そう思う、こんなきもち、はじめてなの
この場所……わたしのために取っておいてくれたんじゃないかって
勝手にね、そう思えるんだ……気持ち悪いでしょ?
えへへ………ごめんね
勝手に死んで……死にきれず、血をもらいにきちゃって
あなたのだけ欲しい……他はいらない
でもこの衝動は、バケモノのそれだけじゃない
精液も欲しい……気持ちよくなってほしい
この深い気持ちがね……わたしそのものなんだって感じるの
ここが人間……あなたの胸の中では、心を保っていられる
だから……ほかの誰にも渡したくないの
……はぁ……やっぱり意味わからないしワガママ
ごめんね、迷惑の比重すごいでしょ?
いきなり来て、こんなことされて……
それでもわたしは、あなたの体液を諦めきれない
だからこそ、できる限り与えられる存在になりたいの
だからね……あの……また来ても、いいかなぁ?
人間と同じようにはできない
日中デートもできないし、誰にも自慢できない
定期的に血は抜かれるし、疲れもする
もちろん、バランスを見て注意はするけどね
それ以上の気持ちよさを提供できたらなぁって思うんだ
いつかね、オナニーなんて必要ないって言われるくらいになりたい
あなたは溜めて、わたしはガマンして……
同じ夜に解放して、同じ快楽を共有しあうの
あぁ、想像しただけでもう……ふふっ♪
あ、ごめんなさい、勝手に盛り上がっちゃったね
……えへへっ……ワガママな自分大嫌いだけど
あなたの前だとね、それでいいと思えるから不思議
……ね……もいっかい、ギュッてして?
あなたのいない夜に耐えられるように……
あ………えへへっ♪
あなたにギュッてされるの、スキ
……なんか、うれしい……
割と引っ込み思案でね、内気な子だったの
そんなわたしが、あなたとどういう風に知り合って
仲良くなっていくのか想像がつかないけれど……
こういう形になったことで、ちょっと吹っ切れたかなって……
いきなりエッチなことするの、だいぶ戸惑ったんだけどね
ただもらうのはやっぱり……あげられるものがあって、ほんとによかった
がんばって、よかった……勇気をだして
この温もりを知らずにはちょっと……もったいなさすぎるね
……ふふ、眠そう……かわいい顔になってる
いいよ、このまま寝て……傍にいるから
起きたらもういない
でも、いつかの夜にまた来るね
そんなにしょっちゅう血を抜くと大変だから……またガマンする
あなたには健康でいてほしい、わたしの分まで……いつまでも
……ん…あったかぃ………愛してくれてありがとう………―――おやすみなさい―――
END