1章ドスケベクールな女上司と出張
「相部屋逆NTR」(
第二稿)
●一章 先輩と出張
○新幹線・車内
1. (ウィーンと自動ドアが開いて、やって来るあなたと美紀)
2. 4号車の、7ーAと7ーB、7ーAは……
あった、ここだ。ほら、君の席は7ーAね。私の隣。
3.
4. そうよ。なに? 先輩の隣の席じゃ不満? 別々の席でくつろぎたかった?
5. だめよ。今日はあっちに着いたらそのまま先方のプレゼンなんだから、新幹線での移動時間で最終打ち合わせしとかないとでしょう?
6. ほら、座って。荷物、上乗せる?
7.
8. いいのいいの、私がやってあげるから。ほら、鞄かして。
9. (ゴソゴソと網棚に荷物をしまいつつ)
10. そういえば君、私のこと美紀先輩って呼ぶんだったわね。下の名前で呼ぶの、あなたくらいよ?
11.
12. 最近は外回りが多いから、お互いなかなか名前で呼び合う機会が無かったでしょ。それで、久し振りに呼ばれたから……
なんだか不思議だなって思ってね。
13. ふうっ…………(席に座って)。あら、君、いつからブラックコーヒーなんか飲むようになったの。
14.
15. 最近? 新人のころは砂糖もミルクもたっぷり入れて、お子様だねってみんなに笑われてたのに……
ふぅん、君も少しは大人になったのかしらね。
16. 覚えてる? 私が君の指導係で、研修代わりに初めてのお客さんのところに営業に行ったときのこと……
君、お客さんの前で盛大にお茶をこぼしてさぁ。
17.
18. まさか、初めてできた後輩がこんなに手間のかかる子だったなんて思ってなくてね、びっくりしちゃった。
19. だめね。思い出せば思い出すほど、君の面白いエピソードしか出てこないわ。
20. …………まぁ最近になってやっと、少しは仕事できるようになったかしらね。
21. 何ニコニコしてるの。私から見たらまだまだひよっこよ、図に乗るんじゃないの。
22. でも、君が一人で担当持つようになってからは、こうやって二人でゆっくり話す時間もなかなか取れなかったし…………今回の出張は、久し振りに君と組めて嬉しいわ。
23. 君は私みたいな先輩より、もっともっと頼りになる課長とかと一緒のほうが良かったと思ってるでしょうけどね。
24. まぁしょうがないわよね。あなたの指導係に任命されたのは、私なんだから。
25. …………ほんと? ふふ、いいのよ無理しなくて。私、研修のころはかなり君に厳しくしちゃったから、嫌われてもしょうがないって思ってるわ。
26. え? 私のこと好きですって? ふふ、あなたね…………言い方考えなさいよ。
27. 分かってるわよ、好きってそういう意味じゃないわよね。いいの、ただ、面白くて。
28. ま、仕事で困ったことがあったら、いつでも相談してくれていいのよ。私はあなたの指導係なんだから。
29. そう、時には人を頼って甘えるのも大切よ。私はあなたよりも、5年も先輩なんだから。仕事も、人生もね。
30. …………君、最近どうなの
31. プライベートのことよ。ここ最近は出張も増えたし、夜も結構遅くまで残ってるじゃない。大丈夫かなって思って。
32. え? いや…………君のことだけ心配してるんじゃなくて。私だって一応、みんなのことを気にかけるように上から言われてるからね。無理に働いて体を壊したら元も子もないでしょう。
33. そう? 楽しく過ごしてるならよかった。仕事は? 愚痴とかないの? 悩みとか。
34. …………まぁ、そりゃあるわよね。私でよければ、話聞くくらいならいつでもしてあげるから。
35. ん? 私? いいえ、私は別に…………今は仕事一筋よ。まだまだ仕事でやりたい事もたくさんあるし、出張も商談もすごく楽しいの。夜が遅いと遊びにいけないのが、たまにちょっと残念だけど。
36. 君こそどうなの? ほら…………彼女とか。
37. なに? もったいぶらないで言いなさいよ。
38. …………あら、そうなの? 彼女、いたんだ…………おめでとう。全然知らなかったわ、いつから?
39. へえ…………良かったわね。ふふ、それで格好つけてブラックコーヒーなんて飲むようになったんだ。
40. 違うって? でも君、たしかに最近男らしくなったというか…………大
人っぽくなった気がする。そっかぁ、彼女が出来たからだったのかぁ…………。
41. ううん…………なんでもないわ。研修のころに君、「彼女いません」って言って、みんなでアレコレいじって笑ってたの思い出した。
42. ふふ、そうそう。部長が君に、まさかまだ童貞なのか!とか言ってね。
43. ふふふっ…………それが今じゃ、彼女持ちとはねぇ。
44. (伸びをして)ん~っ…………さてと、ほら、資料出して。打合せしましょ。
45. (ガサガサと資料を取り出して)
46. この契約、かなり大口なの。絶対に失敗するわけにはいかないんだから。先方に失礼のな
いようにね。
47. ああ、そうだ。プレゼンは私がするから、君は何もしないで。
48. …………ちょっと、なに落ち込んでるの? 違うわよ、君を信頼してないんじゃなくて…………その…………。
49. …………君が心配なのよ。それだけ。
50. さぁ、ほら。この資料にもう一度目を通しておいて。二人で一緒に、頑張っていくわよ。
○ ××××社・外
51. (ウィーンとドアが開いて、出てくるあなたと美紀)
52. 本日はありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。それでは、失礼します。
53. (ウィーンとドアが閉まる)
54. さぁ、行くわよ。
55. (歩いて行くあなたと美紀)
56. …………ふーっ、無事に終わったわね。お疲れ様。君はほとんど見てるだけだったけど。
57. いいのよ。ちゃんと契約も取れたし…………あとは明日、朝イチで軽く営業回って出張は終わりね。
58. さ、通りに出てタクシーでも捕まえましょう。ホテルは私が予約しておいたから。
59. 今回は部長の計らいで、ちょっといいホテルにしてもらったの。
60. 今晩はいつもみたいな狭いビジホじゃなくて、贅沢にゆったり出来るわよ。
61. ちょっと待っててね。思ってたより早く商談が終わったから…………今
からチェックイン出来るか聞いてみる。
62. (スマホのタップ音と、プルルル…………という呼び出し音)
63. もしもし、今晩宿泊予定の波多野ですが…………はい。少し早めにチェックインしたいと思っ
てまして。大丈夫ですか?
64. 本当ですか、はい、ありがとうございます。え? いいえ、二部屋予約してます。セミダブルを二部屋って、予約の時にお伝えしたはずですが…………。
65. …………えっ、一部屋だけしか予約入ってない? 今からもう一部屋は…………そうですか、満室なんですね…………。
66. ええ、はい。じゃあ…………えっと…………とりあえず一部屋二名で、よろしくお願いします。はい、それでは。
67. (ピロン…………と通話が切れる)
68. ごめんなさい、私の手違いで一部屋しか取れてなかったみたい。他の部屋も満室みたいで、代わりの部屋も取れなくて…………。
69. え? 君だけ他のホテルを探して、そこに泊まるって? でもうちの会社、宿泊場所は事前に申請しないと経費にならないでしょ。他の場所に泊まったら自腹になっちゃうわよ。
70. …………私は別に、あなたと相部屋でも構わないけど…………? 君がいいなら、だけどね。
71. …………ベ、ベッドも…………セミダブルだからギリギリ二人で…………。
72. ふふっ、床で寝る? そんな、大事な後輩君を床で寝させるわけにはいかないでしょう?
73. あ、そうだ。一緒の部屋なら、時間を気にせずゆっくり仕事の愚痴も聞いてあげられるわね。お酒でも飲みながらさ。うん、いいんじゃない? どうかな?
74. …………じゃあ、相部屋ってことで、いい?
75. うん、じゃあコンビニで飲み物でも買っておいてくれる?
76. 私はちょっと…………寄らなきゃいけないとこがあるから。あとでホテル前に集合ね。