lasting mellow linkage
「真衣」: は~、ちょっと遅くなっちゃったね。
「真優」: んー、これくらいの時間なら、まだ大丈夫じゃない?
「真衣」: でも、絵全部完成しなかったね。
「真優」: 当たり前でしょう。スケッチの道具しか持ってきてないもの、仕上げは帰ってからするわ。
「真衣」: うぇ~?そうなんだ。んじゃ、楽しみ!
「真優」: 任せなさいっ。
「真衣」: んだっ。
「真優」: ん、何?
「真衣」: ねぇねぇ、ちょっとだけ学校寄ってかない?ちょうど通り道だし。
「真優」: え?今から?忘れものってわけじゃないでしょう?
「真衣」: まあ、その、ちょっとね。
「真優」: また秘密?ていうか、そもそも校門閉まってるだろうし。
「真衣」: それは大丈夫。
「真優」: 何が大丈夫なのよ?
「真衣」: あー、ほらー、なんていうかー、パトロールだよ!
「真優」: 絶対いらないやつだよ、それ。
「真衣」: 心配しないって。夜の学校、前にも皆で入ったことあるしさ、珠季先生と星見会した時。
「真優」: あの時は許可があったんでしょう?
「真衣」: 大丈夫!お化けとか出ても、真優のことは絶対守ってあげるから!
「真優」: そんなの怖くないし。ていうか、そういうことじゃなくて。まぁいいわ、あんたが行きたいならね、付き合うわよ。
「真衣」: えへへっ、ありがとう!
「真優」: ね、本当に大丈夫なんでしょうね。
「真衣」: うん、師匠に秘密の通り道教えてもらったんだ!
「真優」: は?それ無理やり聞き出したとかじゃないでしょうね。
「真衣」: そんなんじゃないよ。慕ってくれる後輩の真衣くんには特別にって。
「真優」: もう、高月さん、信頼の仕方がずれてるわよ。
「真衣」: 部室棟の裏手から部屋の上伝って、プールの方に向けられるんだって。
「真優」: って、こんなところ通るの?
「真衣」: 平気平気。ん、手貸して。
「真優」: んもう。
「真衣」: うわっ、ほら、プール見てよ!夜空が映ってて昼間と全然違う!
「真優」: 本当。夜だとこんな雰囲気なのね。
「真衣」: あっ、そうだ、いいこと思いついた。ちょっと待ってて。
「真優」: え?
「真衣」: ジャンジャン!
「真優」: 何、その傘?
「真衣」: この間みたいな時のために、部室棟に置き傘しといてやつ。これをさ、こうやって水面に差し込んだら!ほら、何か星を掬い上げたみたいじゃない?綺麗でしょう?
「真優」: そういうの、よく思い付くわね。
「真衣」: 真優こういう綺麗なの好きかなって、こっちお出でよ。あたしたちも映ってるよ。
「真優」: ええ、そうね。 (水面に写り込む私たち、まるで周りから切り取られた、二人だけの世界なんだ。)
「真衣」: (一緒にいると、さざ波みたいな気持ちが揺らめいて。それから、穏やかになっていくような。)
「真優」: (ぼんやりする二人の影が寄り添って、溶け合うみたいに、一つになって)
「真衣」: (離れても、何とだって、まだ一つになれる気がするな。) えへへっ、こっち向いてって、言わなくても伝わったね。
「真優」: ん、それで。
「真衣」: ふぇ?
「真優」: 急に黄昏れるなんて、らしくないから。それとも、こういうことするために連れ込んだわけ?
「真衣」: あは、その、一緒に通えるのもあともう一年切っちゃったなって思ってさ。当たり前のことでも、やっぱりそういうのちょっとは意識しちゃうよ。
「真優」: もう、じゃなくて、まだ一年ぐらいはあるわけでしょう。それに、帰り場所は、同じなんだから。
「真衣」: なるほど、前向き!
「真優」: 私だって、少しぐらいは考えるわよ、そういうこと。でも、今が無くなるわけじゃないし。離れたら、また歩み寄って、一緒になればいい。怪我でも何でも、二人で補い合って行けばいいじゃない。
「真衣」: うん。そっか、そうだよね。今しか感じられない気持ち、今感じておかないともったいないもんね。それに、今の幸せな気持ちってさ、きっとこれから先の私たちのことも、幸せにしてくれると思うんだ。
「真優」: そうね。そうかも。
「真衣」: 今日みたいに、色々思い返した時に、あの時楽しかったねって言えるようにしておきたいしね。
「真優」: それが、この前考えてたこと?
「真衣」: うん、ちょっとずつ変わって、でもその積み重ねでどんどん楽しいことが増えていく感じ。何かよく分かんなくなっちゃったけど、もっと良くしてくって、多分そういうことかなって。。。
「真優」: いいんじゃない?私も、そう思う。一緒に考えていけたらって、私は真衣と一緒に寄り添っていたい派だからね。
「真衣」: おっ、新しい派閥だ。
「真優」: 真衣からあったのよ。
「真衣」: えへへ、そう言えば知ってたかも。世界で一番前のことを分かってあげられるの、あたしだしね。
「真優」: お互い様でしょう。あんたのことしか、考えてないわよ。
「真衣」: 嬉しい~。そういうとこ、好きだよ。大好き!
「真優」: 私も、大好き!
「真衣」: やっと帰ってきた!結局遅くなっちゃったね。
「真優」: あんたが寄り道したからでしょう。
「真衣」: えへへ~、一緒に入ろうか。
「真優」: ん、いいわよ。 ただいま。
「真衣」: ただいま。
「真優」: うふっ。
「真衣」: えへへ~。
「真優」: お帰り、真衣。
「真衣」: お帰り、真優!