今から……
加奈子「なあなあ。今から心理テスト、やってみねえ?」
桐乃 「へえ。どんなやつ?」
加奈子「オッケー、今から説明するから難しく考えずにやってくれ。あやせもやるだろ?」
あやせ「うん。やってみる」
加奈子「じゃ、いくぜ。まず、前提条件だ。自分が高層マンションの上の階に住んでいて、外を見ているときにたまたま1階地上部分で起きた殺人事件の目撃者になった」
あやせ「なにそれ、怖い」
加奈子「で、犯人はこっちが目撃者になったことに気づいちゃって、さあ大変」
桐乃 「確かに大変だね」
加奈子「さて、ここからが心理テスト。このとき犯人はこちらに向かってなにかをわめきだした。いったい、なんて言ったと思う?」
桐乃 「えー? 殺人犯が? そんなのわからないよ」
加奈子「なんでもいいって。言ってみ?」
桐乃 「んー、しゃべったら殺す、とか?」
加奈子「ほいほい。あやせは?」
あやせ「うーん。そこは何階だ、って聞いているのかな」
加奈子「そっか。なるほど」
桐乃 「それで、どういう意味なの?」
加奈子「んー? 桐乃は普通だよ。一般人の反応」
桐乃 「そうなんだ?」
加奈子「ああ。大抵のやつがそういう答えを返してくる」
あやせ「じゃあ、わたしのは?」
加奈子「んー、あやせのは、なんて言うかちょっと普通じゃない」
あやせ「と言うのは?」
加奈子「何階か、って聞くってことはさ、相手がこちらを殺すことが前程になってるだろ? まずそこに思考がいくのは、常人の反応じゃねえってこと」
あやせ「ふうん」
加奈子「ま、気にすることねえんじゃね? ただの心理テストだし」
あやせ「……ねえ、桐乃。わたし、普通じゃないのかな」
桐乃 「そんなことないってば。あやせは、すごくいい子だし。あたし、あやせのこと、好きだよ?」
あやせ「そう?」
桐乃 「そうだって。ねえ、加奈子もそう思うよね?」
加奈子「ああ、そうだな」
加奈子(まさか……あやせがシリアルキラーの素養を持ってるとか、絶対口が裂けても言えねえよ)
あやせ「なにをぶつぶつ言ってるの、加奈子」
加奈子「え? いや、なんでもねえよ。なんでも。……あ、そうだ、飲み物でも買いに行こうぜ? な?」
あやせ「……ふふ、そうね」
加奈子「……ッ!?」
あやせ「どうしたの、加奈子。行くんでしょ?」
加奈子「ああ、行くよ。行くいく」
桐乃 「ちょっと加奈子、早足で行かなくても売り切れないってば」