『いざ、魔王城へ! ……あれ?』
…………。
あれが魔王城です。あるじ様。
はい。とうとう、辿り着きました。
なんと禍々しい姿をしているのでしょう……。
魔王の邪悪な魔力が、ここまで伝わってくるようです……
それに……話に聞いていた通り、非常に暑さを感じます……。
魔王城の周りを、火山から流れてきた、溶岩が囲っておりますから……
この丘を下りたら……おそらく、結界を張らないと、息もできないでしょう……。
…………。
……ふふ。
でも……不思議な気分です。
昨夜はあれだけ、あるじ様に弱音を吐いて、甘えてしまったのに……
今は……
全然、まったく、微塵も、負ける気がいたしません。
……まだ、あるじ様のお子種が、お腹に中に残っているからでしょうか……♪
ふふ♪
あ。お待ちください。あるじ様。
わたくし……一つ、考えていることがあるのです。
はい。この丘から……最上位の爆発魔法を、全力で唱えたら。
ひょっとしたら、魔王城の一角くらいは、破壊できて……
敵の戦力を、少しでも減らせるのではないでしょうか?
あわよくば、魔王にも傷を負わせられるかもしれません。
ええ。実は、習得こそしていたのですが……最上位の爆発魔法を唱えたことはありません。
爆発魔法の威力は、体内の魔力量に依存する、と言われています。
もし威力が強すぎたら、辺りの地形を変えてしまうかもしれませんから……それが不安で。自重しておりました。
旅の中で鍛えられて……わたくしも、体に魔力を溜められる上限がだいぶ増えたと自覚しています。
その状態で……毎日、何度も、あるじ様から魔力をいただいておりましたから……♪
威力は、これ以上ないほど高まっているかと。
今こそ、その機会だと思いまして。
よろしいでしょうか?
……はい。了解いたしました♪
では……
念のため。少し離れていてください。あるじ様。
わたくしの全力……どうぞ、ご覧ください!
参ります……。
…………。
……え?
……あ。あれ。
あれあれ、あれ……?
なんでしょう、これは……
とまら、ない……
力が……溢れて……っ。
ぁ……っ。
…………。
……え?
…………。
あれ……
……え。ええ……。
あ……あるじ、様……
……ま。
魔王城が……
跡形もなく……
消し飛んで、しまいました……
魔物の姿が……
どこにも……あり、ません……
あ……
あれぇ……?
あるじ様に……毎日、魔力をいただいていた、とはいえ……
まさか……
こんなに、威力が高まっていた、なんて……
…………。
あの……
あるじ様……
ひょっとして……
魔王……
倒せてしまった……のでしょうか……?