Track 5

『いざ、魔王城へ! ……あれ?』

 …………。  あれが魔王城です。あるじ様。  はい。とうとう、辿り着きました。  なんと禍々しい姿をしているのでしょう……。  魔王の邪悪な魔力が、ここまで伝わってくるようです……  それに……話に聞いていた通り、非常に暑さを感じます……。  魔王城の周りを、火山から流れてきた、溶岩が囲っておりますから……  この丘を下りたら……おそらく、結界を張らないと、息もできないでしょう……。  …………。  ……ふふ。  でも……不思議な気分です。  昨夜はあれだけ、あるじ様に弱音を吐いて、甘えてしまったのに……  今は……  全然、まったく、微塵も、負ける気がいたしません。  ……まだ、あるじ様のお子種が、お腹に中に残っているからでしょうか……♪  ふふ♪  あ。お待ちください。あるじ様。  わたくし……一つ、考えていることがあるのです。  はい。この丘から……最上位の爆発魔法を、全力で唱えたら。  ひょっとしたら、魔王城の一角くらいは、破壊できて……  敵の戦力を、少しでも減らせるのではないでしょうか?  あわよくば、魔王にも傷を負わせられるかもしれません。  ええ。実は、習得こそしていたのですが……最上位の爆発魔法を唱えたことはありません。  爆発魔法の威力は、体内の魔力量に依存する、と言われています。  もし威力が強すぎたら、辺りの地形を変えてしまうかもしれませんから……それが不安で。自重しておりました。  旅の中で鍛えられて……わたくしも、体に魔力を溜められる上限がだいぶ増えたと自覚しています。  その状態で……毎日、何度も、あるじ様から魔力をいただいておりましたから……♪  威力は、これ以上ないほど高まっているかと。  今こそ、その機会だと思いまして。  よろしいでしょうか?  ……はい。了解いたしました♪  では……  念のため。少し離れていてください。あるじ様。  わたくしの全力……どうぞ、ご覧ください!  参ります……。  …………。  ……え?  ……あ。あれ。  あれあれ、あれ……?  なんでしょう、これは……  とまら、ない……  力が……溢れて……っ。  ぁ……っ。  …………。  ……え?  …………。  あれ……  ……え。ええ……。  あ……あるじ、様……  ……ま。  魔王城が……  跡形もなく……  消し飛んで、しまいました……  魔物の姿が……  どこにも……あり、ません……  あ……  あれぇ……?  あるじ様に……毎日、魔力をいただいていた、とはいえ……  まさか……  こんなに、威力が高まっていた、なんて……  …………。  あの……  あるじ様……  ひょっとして……  魔王……  倒せてしまった……のでしょうか……?