プロローグ
【位置:右 距離:近い】
おーい。
【位置:左 距離:近い】
おーい、生きてる~?
【位置:中央 距離:近い】
ぺちぺち、ぺちぺち…あ、起きた。
【位置:中央 距離:普通】
ふふ、おはよう、ぐっすり眠ってたね~
(様子を窺うように1~2秒ほど無言)
…どうしたの? まだ寝ぼけてるのかな?
きょろきょろと首を動かしてきょとんとしちゃって。
ここがどこだかわからない、そう言いたげな顔だね。
…しょーがないなぁ。この心優しい魔女のおねーさんことフィリア・ルティックさんが、お嬢ちゃんのために状況をイチから説明してあげちゃおう。
私の取り押さえ方が悪くて記憶が混濁してるかもだし。思い出しながら話を聞いてね。
最初は、お嬢ちゃんについて。
あなたはある目的をもって、この屋敷にやって来ました。
…このナイフに見覚えはあるかな?
そう、お嬢ちゃんのだよね。
私に突き付けた、ご自慢のナイフ。よく研がれてるよね~
人間はもちろん、魔物だって簡単に殺せそう。
続いて、お嬢ちゃんはどうしてそんなものを持っているのでしょう?
年端もゆかない、可愛らしい女の子には似つかわしくない、そんなものを。
…やっと思い出したみたいだね
そう、あなたは暗殺者。依頼を受け、この屋敷に忍び込み、屋敷の主の命を奪う。
そんな使命を帯びてやってきたにも関わらず、今のお嬢ちゃんは一体どんな状態でしょうか?
…動けないよね?
私の魔法で、お嬢ちゃんの四肢は宙に拘束されてるからね。
両腕は上に向かって伸びて、降参~ってしてるみたい。
両足は肩程度に開いて少し浮いてるけど、同じく動くことができないね。
今のお嬢ちゃんにできることって、せいぜい身をよじる程度だよね。
あとは服も脱がしちゃったよ、念のためね。
仕込み武器とか、何かの装置とか。そういうのを使って抜け出されたら困るからね。
そして、今しがた目を覚ましたお嬢ちゃんは、これから私の質問に正直に答えなければいけません。
以上、状況説明おしま~い。
と、いうわけで…教えて欲しいな。
【位置:中央 距離:近い】
私を殺せって依頼したのは一体どこのどなた?
【位置:中央 距離:普通】
…教えてくれないかぁ、さっすが暗殺者! 守秘義務が徹底されてるぅ!
…でも困ったなぁ。言ってくれないとぉ、気になって気になってお姉さん夜も眠れなくなっちゃうよぉ。
なにぶん心当たりが多すぎてね~、ほら私ってすごい魔女だし。
人には言えない、あーんなことやこーんなことしてきたからね~
お嬢ちゃんくらいの年の子をさらったり…
不思議な薬を作って飲ませたり…
新しい魔法の実験台にしたり…
…あ、言っちゃった。
これは口封じも兼ねて尋問をしないといけないねぇ、困った困った。
…ふぅん? 尋問しても無駄とは大きく出たね。
暗殺者ともなれば、尋問に耐える訓練なんていうのもしてるのかな?
でも、今にわかるよ。そんな経験はなーんの役にも立たないって。
今からやる尋問はね、息ができないほど苦しくなっちゃうし、気が狂ってしまうんじゃないかってくらい強烈だよ。
言うなら今のうちだよ?
…意思は固いようだね。
じゃ、遠慮な~くお嬢ちゃんの体に尋問させてもらうね♪