1 偽装恋人になって欲しい
隣、失礼してもいいかい?
急に声をかけてびっくりさせてしまったかもしれない。ジムに学校の先輩が突然顔を出したら驚くだろうね。
そうだ。わたしも今日からこのジムに通うことにしたんだ。
ちょうど家が近いし…キミが通っている噂も聞いたことだしね。
これからよろしく頼む。
にしても、ここは良いジムだな。休まずに通うことが出来そうだ。
あの子たちが大挙して押しかけるにはもったいない。
いや、取り巻きの女子がこのジムにもついてくると言って聞かなくてね。
モテすぎてしまうのも困ったモノだ。
それで、勝手な話なんだが…一つ相談があるんだ。
思い切ったことを言うが…わたしの彼氏として振舞ってくれないか?
正直、こんなわがままを押しつけるのはどうかと思っているのだが…
ああ、男子だけじゃなく女子までが言い寄ってくるのもこう続くとそろそろ嫌気がさしていてね。
彼氏が出来てしまえば、しつこい彼らもさすがに解放してくれるだろう?
お願い出来ないだろうか?ね?
ん? 気にしなくて良い。取り巻きに怒られてしまうだなんて…
彼らだってわたしの気持ちを尊重してくれるはずだ。
いいのか?
ああ、助かる…キミはほんとうに優しい。
いつか、学校でわたしが困っている時もそうだったな。
皆はイケメンだとか、カッコいいとか言って外見しか見てくれないが…
キミはわたしそのものを見てくれる。
…いや、こっちの話だよ。すまないね。
そうだ、折角付き合っているということなのだから、学校では一緒にお昼ご飯を食べよう。
言い寄ってくる奴らに見せつけてやりたくてね。
それで、下校時も一緒だ。ちょうど途中まで帰り道が一緒だろう?
うん、これで問題ないな。
あと…そうだな、お互いの家の合い鍵を交換するのはどうだろう?
比較的家も近いし、たまにキミの家に寄るようにしたら完璧だ。
わたしの鍵をわたしておこう。
そういうわけでキミも次会うときに、合い鍵を持ってきてね。
無いなら作ってくれよ。至急頼むよ、わたしの彼氏くん。