7エンディング
んっ……やだ、ごめんなさい。
私ったら、添い寝のつもりがついうとうとして……
なんでしょう、
お客様のあたたかな体温がすぐ近くにあって、
安心しきってしもたんかかもしれません。
癒す側の私が癒されてしまうやなんて、
おかしな話ですね。
癒し処としてはあるべき姿……?
くすくすっ……ええ、そうかもしれんですね。
いかがでしたか?
お身体と、それから心も、
ゆったりと休められましたか?
気だるさが残っとるようでしたら、
軽く伸びをしてみてください。
私も失礼して……
うーん……
ふふっ、一緒にします?
うーん……
あっ、やだ、そんなにじろじろ見んでください。
恥ずかしいなぁ……
子どものころとは違うんですからね、もう……
どうしましたか?
私なにか変なこと……あっ。
……いえ、今のに別に深い意味は、その。
……え?
私、うとうとしながらそんな話、してましたか?
昔の話……
一緒に遊んでてうたた寝しちゃった時のこと……
ええ、そう……あなたと。
…………
……うん、気づいとったよ。
私は、最初から。
ううん、あんたがその……
は、初恋が……ど、どうとかって……
言い出す前から……
うん、ひと目見てすぐわかったわ。
あんたやって。
違うんよ、あんたが最初から私のこと
あの時のリナやろって言い切ってくれたら、
すぐに認めるつもりやった。
でも、なんやか確信は持てずにおるみたいやったけん、
その……
あんたに呼ばれてたマドンナなんて愛称をお店の名前に掲げとるやなんて、
すっごく気恥ずかしく思えてしもて、つい……
ううっ、正直に白状したんやけんええやんか。
あんまいじめんとってよ、もう……
そういうとこ、ほんま昔と変わらん……
意地悪で……
でも実は……ほんまはやさしうて……
隣におると安心できて……
ふふっ。
やけんさっき、私もついつい寝たんかもしらん。
昔みたいに、安心したんやね。
こんなふうにまた会うやなんて思わんかったけど、
すごく……嬉しかった。
ねえ、これからは、その、昔みたいに……
えっ?
ううん、結婚はしとらんよ?
あ、『坊っちゃん』のマドンナは結婚するけん?
もしかしてそれ気にして言い出さなかったん?
くすくすっ……
変なところで奥ゆかしいんやね。
そこもええところやけど。
誰とも結婚しとらんし、そんな相手もおらんけん。
やけん大丈夫。
なんがって……お、お店に来てくれても平気ってこと。
うん……待っとる。
いつでも。
いつも。
ふふっ。
また来てね。