463回目
<正面 普通>
(そっけなさそうに)お兄さん、突然ひざまずいて、卒業に合わせてプロポーズですか?
推測通りみたいですね、そんなベタな展開、小説だったらボツにされちゃいますよ。
なに固まっているんですか? 次はポケットから指輪、出すんじゃないんですか?
あらあら、こんな立派な指輪を買っちゃって。
お兄さん、よく考えた方がいいですよ、零細小説家なんて経済力に期待できませんよ。
そんな女でもいいんですか?
ふふっ、そうですか、私じゃないとダメなんですか、お兄さんも苦労する人ですね。
あー、なんだか、次はハッピーエンドのお話を書ける気がしてきました。
書けたらまた読んでもらえますか?
そうですねー、女の子と年上の男性の話です。
やっぱり女の子はピンチから救ってくれるヒーローに憧れるものです。
というわけで、やさしくて、頼りがいがあって――、かわいい女の子が、童貞のお兄さんを助ける話です、ふふっ。
というのは、別の機会にしておきましょうか。
ダメですよ、お兄さん。ネタバレは禁物です、せっかくの大作が楽しめなくなってしまいます。
期待していてくださいね、お兄さんを驚かせるような、面白い話を書いてみせますから、ふふっ。
ところでお兄さん、いつまでそんなみっともない格好をしているつもりなんですか?
ひざ、汚れちゃいますよ。
ほら、手を貸しますから、ちゃんと立ってください。
あー、返事がまだなんでしたっけ?
(腕を引っ張る)えいっ、
<正面 近い>
(唇にキス)チュッ。
<右 近い 囁き>
(うれしそうに)んっ、1時間1万円の関係は終わりですね、ア・ナ・タ、ふふっ。