4.花火
【場面:花火】
(ミサが興奮して話す)
子:お兄ちゃん、一緒に花火しよう!
親:ごめんね、お兄さん。ミサったら花火に目がないの。
子:お兄ちゃん、早く早く!
親:お兄ちゃん、どんな花火がいい?選んでいいよ。
男性:どれにしようかな。このネズミのくるくる回るやつがいいけど、噴水のシュワーって出るやつもいいな。
子:ミサ、お兄ちゃんが決めたやつにしよう!
親:本当にごめんね。ミサの面倒を見てもらってる感じで。わかった、この花火ね。火をつけるから、お利口にしてて。火傷したら大変よ。
子:うん、早く早く!
親:お兄さんもどうぞ。
(花火が始まる)
子:はーい!花火、すっごくきれい!見て見て、ママ!くるくる、きれいだよ!なんか魔法使いになったみたい!
親:花火って切ないよね。華やかなのは一瞬だけ。職人が詰めた火薬も数分で消えてしまう。人間も同じよ。どんなに大切に育てられても、頑張っても、認められても、散るときは一瞬なの。お兄さんが普通で羨ましいわ。私は違う。一生懸命生きても、頑張っても、認めてくれる人はいない。あいつらは見た目で判断する。全部、この村のせい。この体で、この村に生まれたってだけで、なんで私が死ななきゃいけないの?
子:お母さん、どうしたの?
親:うるさい!お前は黙ってろ!(男性に迫る)逃げようとしてないよね?逃げたらどうなるか分かる?埋める前に殺しちゃうかも。怖い?私ってそんなに怖い?
(雰囲気が一変)
親:ところで、お兄さん、財布の中のもの全部出して。お金はいらない。免許証、保険証、名刺、お兄さんに関するもの全部頂戴。早く。体が震えてるよ。落ち着かないとしっかり取り出せない。ほら。(名刺を受け取る)ありがとう。今から貰ったものを燃やすから、しっかり見てて。
(親が男性の身分証を燃やす)
子:お兄ちゃんの写真、ジュワーって燃えてる。かわいそう。
親:これでお兄さんはもう元には戻れない。だから、逃げようなんて本当に考えないでね。お兄さんは健康的で普通。子供が欲しいの。私、ゴリゴリなの、みんなから避けられるの。お兄さん、優しいから分かってくれるよね。ありがとう、お兄さん。(繰り返し)ありがとう。
(雰囲気を変える)
親:よいしょっと。それじゃ、最後にみんなで線香花火でもしよっか?
子:うん!