おーい!こっちこっち。
おーい! こっちこっち。
……ん、よかった。時間ぴったりだね。
えへへ、どう? ちゃんと私、一人でここまで来れたよ? 偉いでしょ?
私、前藻玉(まえも たま)はやるときは、やれる子なんだよ? 褒めて褒めてー。
えへへへ。
……本当はね、いろんな人に聞いて、いろいろ教えてもらいながらここまで来たんだよ。
優しい人が多くて助かっちゃった。
あなたが居る街に近付くたび、電車の中がどんどん人で増えていった感じだったよ。ふふふ。
それにしても……。
ほんっ……とに人多いね! 都会の中枢って感じ……すごい!
あたっ! ……もーっ、いきなり何するかなー。頭叩くなんてひどいっ……。
え? 耳出てた? あははは、田舎とあまりにも雰囲気が違うから興奮しちゃった!
えてっ! もー! 何でまた叩くかなー。
こんなに人が多いところ、生まれて初めてだよ。
ん? なーに? ……心配性だなー……ふふふ、大丈夫。こんな歳で迷子になんてならないから。
……もーしょうがないな。こうやって……手をつなげばぁ……ほぉら、もう大丈夫でしょ?
あれれ? 耳真っ赤だよ? ……今更照れなくてもいいのに……私はあなたとずっと一緒に、い て あ げ る。なんてね。
んっ……!
ん~~、頭なでなでされるの気持ちい。
もうっ……また、叩かれるのかと思っちゃった。いじわる……。
わっ、んー……油断すると耳が、また出ちゃう……引っ込めなきゃ……。
出会ったころはよかったんだけど、馴れちゃったというか、油断しちゃうというか……感情がたかぶっちゃうと、どうしても……ね。
あなたと一緒に居ると耳隠すのが大変、かも……うーん、困ったな。
何か隠せるものでもあれば……。
……え? 帽子? そうだね、それなら隠せるかも……でも帽子なんて持って来てないよ?
……買ってくれるの? いいの? ありがとー!
それじゃあ、折角だし、洋服屋さんに行かない? だって、ショッピングなんて田舎じゃ経験したことないんだもん。
ほーら、きっとかわいい帽子も置いてるよ、はやくはやくー!
えへへ、街での買い物なんて、初めて! おっかいもの、おっかいものー♪
すっごく人が並んでるね……何の列かな? 食べ物? ……わぁ、甘くて美味しそう……。
え? ……う、うん、分かってるよ! まずは帽子からだね。
くぅぅ……我慢我慢。
ねぇ? 帽子買ったら、何か食べない?
……えへへ、やった♪
あ! ここのお店の帽子、可愛いよ? ここにしよっか。