Track 3

03「読み聞かせ」

今日は本を読もうと思うんだ~。 君はどんなお話が好き?  お話っていっても、例えば日本昔話とかグリム童話・アンデルセンにイソップ童話。 色んなのがあるよね? 私?ん~。それはやっぱり王子様とお姫様が出てきて幸せな結末な迎えるお話が好きだよ? そうだな・・・。 シンデレラに白雪姫、ラプンツェルに人魚姫。 って人魚姫は幸せな結末じゃないよね・・・でもね、私は子供の頃読んだお話では 人魚姫最後泡にならずに天使になるってお話だったんだよ。 といってもハッピーエンドではないけど。 ん~。あっ「幸福の王子」ってどう?知ってる?・・・ 少し切ないお話だけど、私は好きだなぁ。 誰かの為に自分を犠牲にしてまで幸せにする。けして皆がそれをわかってくれる わけじゃないけど。見てる人は見てるって・・・ 心の優しい王子様のお話。君みたい・・・うふふ、じゃあ、これにするね。 最後まで聞いてもいいけど。眠くなったら寝てね? それでは、始まり始まり~。 「幸福の王子」 町の上に高く柱がそびえ、その上に幸福の王子の像が立っていました。 王子の像は全体を薄い純金で覆われ、 目は二つの輝くサファイアで 王子の剣のつかには大きな赤いルビーが光っていました。 王子は皆の自慢でした。 「風見鶏と同じくらいに美しい」と、 芸術的なセンスがあるという評判を得たがっている一人の市会議員が言いました。 「どうしてあの幸福の王子みたいにちゃんとできないの」 月が欲しいと泣いている幼い男の子に、 賢明なお母さんが聞きました。 「幸福の王子は決して何かを欲しがって泣いたりしないのよ」 「この世界の中にも、本当に幸福な人がいる、というのはうれしいことだ」 失望した男が、 この素晴らしい像を見つめてつぶやきました。 「天使のようだね」と、 明るい赤のマントときれいな白い袖なしドレスを来た養育院の子供たちが聖堂から出てきて言いました。 ある晩、その町に小さなツバメが飛んできました。 友達のつばめ達はすでに六週間前にエジプトに出発していましたが、 そのツバメは残っていました。 彼は最高にきれいな藁に恋をしていたからです。 ツバメが彼女に出会ったのは春のはじめ、 大きくて黄色い蛾を追って川の下流へ向かって飛んでいたときでした。 藁のすらっとした腰があまりにも魅力的だったので、 ツバメは立ち止まって彼女に話しかけたのです。 「君を好きになってもいいかい」とツバメは言いました。 藁は深くうなずきました。 そこでツバメは、翼で水に触れながら彼女の周りをぐるぐると回り、 銀色のさざなみを立てました。 これはツバメからのラブコールで、それは夏中続きました。 やがて、秋が来るとツバメはさびしくなり、彼女に言いました。 「僕は旅をするのが好きなんだ。だから、僕と一緒に行ってくれないか」と。 でも藁は首を横に振りました。 彼女は自分の家にとても愛着があったのです。 悲しんだツバメは彼女を残しエジプトへと旅に出ました。 一日中飛び続け、夜になって町に着きました。 「どこに泊まったらいいかな」とツバメは言いました。 「泊まれるようなところがあればいいんだけれど」 それからツバメは高い柱の上の像を見ました。 「あそこに泊まることにしよう」と声をあげました。 「あれはいい場所だ、新鮮な空気もたくさん吸えるし」 そしてツバメは幸福の王子の両足のちょうど間に止まりました。 「黄金のベッドルームだ」ツバメはあたりを見まわしながらそっと一人で言い、 眠ろうとしました。 ところが、頭を翼の中に入れようとしたとたん、 大きな水の粒がツバメの上に落ちてきました。 驚いたツバメは空を見上げますが、空は雲ひとつなく星もくっきり輝いています。 水にぬれるのが嫌なツバメは飛び立とうとしました。 でも、翼を広げるよりも前に、 また水滴が落ちてきて、ツバメは上を見上げました。 すると――何が見えたでしょうか。 幸福の王子の像の両眼は涙でいっぱいになっていました。 そしてその涙は王子の黄金の頬を流れていたのです。 王子の顔は月光の中でとても美しく、 小さなツバメはかわいそうな気持ちでいっぱいになりました。 「あなたはどなたですか、どうして泣いているの?」ツバメは尋ねました。 「私は幸福の王子です。私が人間として生きていた頃とても素敵な宮殿に住んでいました。 宮殿は高い塀で囲まれていて外の世界に触れた事はありませんでした。 塀の中には悲しみがなく、毎日毎日友人達と遊び、毎日毎日笑い合っていました。 しかし、私が死んでしまってから人々はここに私を置きました。 ここから見える町はとても醜く私には悲惨に見えるのです。 今の私の心臓は鉛で出来ていますが、泣かずにはいられないのです」 ツバメは大きな涙をポロポロと流す王子にどうして良いのかわかりません。 すると王子は続けます。 「ずっと向こうの小さな通りに貧しい家がある。 窓が一つ開いていて、テーブルについたご婦人が見えます。。 顔はやせこけ、とても疲れていらっしゃる。 彼女の手は荒れ、縫い針で傷ついて赤くなっている。 彼女が作っているのは女王様の可愛い侍女が次の舞踏会で着るトケイソウの花の刺繍のついたガウンです。 そして彼女の横で眠っている男の子は彼女の息子さん。 彼は熱があって、オレンジが食べたいと言っている。 しかし 母親が与えられるものは川の水だけなので、その子は泣いている。 ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。 私の剣のつかからルビーを取り出して、あの婦人にあげてくれませんか? 両足がこの台座に固定されているから、私は行けないのです。」 ツバメは考えました。朝はやくにでもエジプトへ向かわないといけなかったからです。 そんなツバメに王子は言いました。 「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。 もう一晩泊まって、私のお使いをしてくれませんか。 あの子はとても喉が乾いていて、お母さんはとても悲しんでいるのです。」 ツバメはずっと昔に乱暴な男の子に石を投げられたのを思い出します。 しかし王子の綺麗な瞳に見つめられると、断れなくなりました。 「ここはとても寒いですね。でも、あなたのところに一晩泊まって、あなたのお使いをいたしましょう」 「ありがとう、小さなツバメさん」と王子は言いました。 そこでツバメは王子の剣から大きなルビーを取り出すと、 くちばしにくわえ、町の屋根を飛び越えて出かけました。 ツバメは、白い大理石の天使が彫刻されている聖堂の塔を通りすぎました。 宮殿を通りすぎるとき、ダンスを踊っている音が聞こえました。 バルコニーには美しい女の子が恋人と愛を語り合っています。 女の子はため息をつきながら言いました。 「私のドレス、舞踏会に間に合うかしら...。 素敵なドレスになるように、トケイソウの花が刺繍されるように注文したのよ。 でもお針子っていうのはとっても怠け者だから。」 ツバメは川を越え、船のマストにかかっているランタンを見ました。 ツバメは貧民街を越え、老いたユダヤ人たちが商売をして、 銅の天秤でお金を量り分けるのを見ました。 そしてやっと、あの貧しい家にたどり着くと、ツバメは中をのぞき込みました。 男の子はベッドの上で熱のために寝返りをうち、お母さんは疲れ切って眠り込んでおりました。 ツバメは中に入って、テーブルの上にあるお母さんの指ぬきの脇に大きなルビーを置きました。 それからツバメはそっとベッドのまわりを飛び、 翼で男の子の額をあおぎました。 男の子は涼しくて気持ちいいのか。すやすやと心地よい眠りに入っていきました。 「早く元気になるんだよ。」 それからツバメは幸福の王子のところに飛んで戻り、やったことを王子に伝えました。 ツバメは言いました。 「変なんです。こんなに寒いのに、僕は今とても温かい気持ちがするんです」 「それは、いいことをしたからだよ」と王子は言いました。 そこで小さなツバメは考え始めましたが、やがて眠ってしまいました。 考えごとをするとツバメはいつも眠くなるのです。 朝になると、ツバメは川のところまで飛んでいき、水浴びをしました。 たまたま通りかかった鳥類学の教授は驚きました。 「冬にツバメを見るなんて!一体どうしたというんだ。」 すれ違うスズメ達も驚きます。 「どうしてここにいるのかしら?きっと素敵な旅の途中なのね。」 月がのぼると、ツバメは幸福の王子のところに戻ってきました。 「これからエジプトへ行きます。」 すると王子は言いました。 「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。もう一晩だけ泊まってくれませんか?」 「ごめんなさい。今すぐにでもエジプトへ行かないと。 友達のツバメ達は、今頃滝の上を飛んでいます。」 「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。 ずっと向こう、町の反対側にある屋根裏部屋に若者の姿が見えます。 彼は紙であふれた机にもたれている。 傍らにあるタンブラーには、枯れたスミレが一束刺してあるんです。 彼の髪は茶色で細かく縮れ、唇はザクロのように赤く、 大きくて夢見るような目をしている。 彼は劇場の支配人のために芝居を完成させようとしている。 けれど、あまりにも寒いのでもう書くことができないのです。 暖炉の中には火の気はなく、空腹のために気を失わんばかりになっています。」 ツバメはしばらく悩みました。そして。 「もう一晩だけ、あなたのところに泊まりましょう。ルビーを彼の元へ持っていけば良いですか?」 「ありがとう。小さなツバメさん。しかし。もうルビーはないのです。 残っているのは私の両目だけ。 私の両目は珍しいサファイアでできているので 私の片目を抜き出して、彼のところまで持っていっておくれ。 彼はそれを宝石屋に売って、食べ物と薪を買って、 芝居を完成させることができるでしょう。」 ツバメは泣きながら言いました。 「王子の目を抜きだすなんて、私には出来ません。」 「心優しいツバメさん。私の為に涙を流してくれてありがとう。 しかし、私の命じた通りにしておくれ。」 ツバメは王子の言う通り王子の目を抜き出して。屋根裏部屋へと飛んでいきます。 屋根に穴があいていたので、入るのは簡単でした。 ツバメは穴を通ってさっと飛び込み、部屋の中に入りました。 その若者は両手の中に顔をうずめるようにしておりましたので、 鳥の羽ばたきは聞こえませんでした。 そして若者が顔を上げると、 そこには美しいサファイアが枯れたスミレの上に乗っていたのです。 「これは神様からのプレゼントだ!これで芝居が完成できるぞ!」若者はとても幸福そうでした。 次の日、ツバメは波止場へ行きました。 大きな船のマストの上にとまり、 水夫たちが大きな箱を船倉からロープで引きずり出すのを見ました。 箱が一つ出るたびに「よいこらせ!」と水夫たちは叫びました。 「私はエジプトに行くんだよ!」とツバメも大声を出しましたが、誰も気にしませんでした。 月が出るとツバメは幸福の王子のところに戻りました。 「これからエジプトへ行きます。」ツバメは言いました。 「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。もう一晩泊まってくれませんか?」 「もう冬です。冷たい雪がまもなくここにも降るでしょう。 エジプトでは太陽の光が緑のシュロの木に温かく注ぎ、 ワニたちは泥の中に寝そべってのんびり過ごしています。 友人たちは、バールベック寺院の中に巣を作っており、 ピンクと白のハトがそれを見て、クークーと鳴き交わしています。 王子。僕は行かなくちゃなりません。 あなたのことは決して忘れません。 来年の春、僕はあなたがあげてしまった宝石二つの代わりに、 美しい宝石を二つ持って帰ってきます。 ルビーは赤いバラよりも赤く、 サファイアは大海のように青いものになるでしょう」 「お願いです。ツバメさん。下のほうに広場があります。 そこに小さなマッチ売りの少女がいる。 マッチを溝に落としてしまい、全部駄目になってしまった。 お金を持って帰れなかったら、お父さんが女の子をぶつだろう。 だから女の子は泣いている。 あの子は靴も靴下もはいていないし、何も頭にかぶっていない。 私の残っている目を取り出して、あの子にやってほしい。 そうすればお父さんからぶたれないだろう。」 心優しいツバメは言いました。 「もう一晩だけ、王子のところに泊まりましょう。 でも、王子の目を取り出すなんてできません。 そんなことをしたら、王子は何も見えなくなってしまいます」 「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。私が命じたとおりにしておくれ。」 そこでツバメは王子のもう片方の目を取り出して、下へ飛んでいきました。 ツバメはマッチ売りの少女のところまでさっと降りて、 宝石を手の中に滑り込ませました。 「とってもきれいなガラス玉!」その少女は言いました。 そして笑いながら走って家に帰りました。 それからツバメは王子のところに戻りました。 「王子はもう何も見えなくなってしまった。だから、ずっと一緒にいることにします」 「ありがとう。小さなツバメさん。しかし、エジプトに行かなくちゃいけないんです。そうしないと...」 「いいえ。私はずっと王子と一緒にいます」ツバメは言いました。 そして王子の足元で眠りました。 次の日一日、ツバメは王子の肩に止まり、 珍しい土地で見てきたたくさんの話をしました。 ナイル川の岸沿いに長い列をなして立っていて、 くちばしで黄金の魚を捕まえる赤いトキの話。 世界と同じくらい古くからあり、 砂漠の中に住んでいて、何でも知っているスフィンクスの話。 琥珀のロザリオを手にして、ラクダの傍らをゆっくり歩く貿易商人の話。 黒檀のように黒い肌をしており、大きな水晶を崇拝している月の山の王の話。 シュロの木で眠る緑の大蛇がいて、二十人の僧侶が蜂蜜のお菓子を食べさせている話。 「可愛い小さなツバメさん。あなたは驚くべきことを聞かせてくれました。 しかし、苦しみを受けている人々の話ほど驚くべきことはないのです。 悲しみ以上に解きがたい謎はないのです。。 だから。小さなツバメさん、町へ行っておくれ。 そしてあなたの見たものを私に教えてください。」 ツバメはその大きな町の上を飛びまわり、 金持ちが美しい家で幸せに暮らす一方で 乞食がその家の門の前に座っているのを見ました。 暗い路地に入っていき、ものうげに黒い道を眺めている空腹な子供たちの青白い顔を見ました。 橋の通りの下で小さな少年が二人、互いに抱き合って横になり、暖め合っていました。 「お腹がすいたよう」と二人は口にしていましたが「ここでは横になっていてはいかん」と夜警が叫び、 二人は雨の中へとさまよい出ました。 それからツバメは王子のところへ戻って、 見てきたことを話しました。 「私の体は純金で覆われている」と王子は言いました。 「それを一枚一枚はがして、貧しい人にあげなさい。 生きている人は、金があれば幸福になれるといつも考えているのです。」 ツバメは純金を一枚一枚はがしていき、 とうとう幸福の王子は完全に輝きを失い、灰色になってしまいました。 ツバメが純金を一枚一枚貧しい人に送ると、 子供たちの顔は赤みを取り戻し、笑い声をあげ、通りで遊ぶのでした。 「パンが食べられるんだ!」と大声で笑いました。 やがて、雪が降ってきました。 その後に霜が降りました。 通りは銀でできたようになり、 たいそう光り輝いておりました。 水晶のような長いつららが家ののきから下がり、 みんな毛皮を着て出歩くようになり、 子供たちは真紅の帽子をかぶり、氷の上でスケートをしました。 ツバメにはどんどん寒くなってきました。 でも、ツバメは王子の元を離れようとはしませんでした。 心から王子のことを愛していたからです。 パン屋が見ていないとき、 ツバメはパン屋のドアの外でパン屑を拾い集め、 翼をぱたぱたさせて自分を暖めようとしました。 でも、とうとう自分は死ぬのだとわかりました。 ツバメには、王子の肩までもう一度飛びあがるだけの力しか残っていませんでした。 「さようなら、愛する王子」ツバメはささやくように言いました。 「あなたの手にキスをしてもいいですか」 「あなたがとうとうエジプトに行くのは、私もうれしいです。小さなツバメさん」 と王子は言いました。 「でも、キスはくちびるにしてくれないかい。 私もあなたを愛しているんだ。」 ツバメは残っている力全てを使い王子の唇へと飛びました。 「ありがとう。王子。貴方に出会えてとても幸せでした。ありがとう。」 ツバメは幸福の王子のくちびるにキスをして、 死んで彼の足元に落ちていきました。 その瞬間、像の中で何かが砕けたような奇妙な音がしました。 それは、鉛の心臓がちょうど二つに割れた音なのでした。 ひどく寒い日でしたから。 次の日の朝早く、市長が市会議員たちと一緒に、像の下の広場を歩いておりました。 柱を通りすぎるときに市長が像を見上げました。 「おやおや、この幸福の王子は何てみすぼらしいんだ」と市長は言いました。 「何てみすぼらしいんだ」市会議員たちは叫びました。 彼らはいつも市長に賛成するのです。 皆は像を見ようと近寄っていきました。 「ルビーは剣から抜け落ちてるし、 目は無くなってるし、 もう金の像じゃなくなっているし。 これではただのゴミと変わらないじゃないか」 「うんうん」と市会議員たちが言いました。 「それに、死んだ鳥なんかが足元にいる」市長は続けました。 彼らは幸福の王子の像を下ろしました。 王子の像は一度溶鉱炉で溶かし新しい像になるのです。 「おかしいなあ」労働者の監督が言いました。 「この壊れた鉛の心臓は溶鉱炉では溶けないぞ。 捨てなくちゃならんな。」 心臓は、ごみために捨てられました。 そこには死んだツバメも横たわっていました。 神さまが天使たちの一人に「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」とおっしゃいました。 その天使は、神さまのところに鉛の心臓と死んだ鳥を持ってきました。 「なんて心優しいツバメと王子なんだろう。 君達に幸福を授けます。楽園で永遠に幸福になるのです。」 そして今も、ツバメと王子は仲良く笑い合っているのでしょう。 おしまい。 心優しい王子様と小さなツバメのお話...。 ふふ。なんだか不思議な気持ちになるよね...。 さぁ、ぐっすり眠ってね? おやすみなさい。