KMV097
「お隣さんは癒しの耳かき亭:母 菜摘」作カジハラエム
(ドアノック)
ちょっと、ボクくん?
いる?
今、大丈夫かしら? お話しがあるんだけど。
(ガチャ)
いたいた。
お久しぶり、また背が伸びたんじゃない?
さすが育ち盛り。
えっと、勉強してた?
そ れ と も…、
…勉強?
そっかそっか、エライエライ。
ごめんねぇ、勉強中に。
ウチの夕菜もボクくんのそういう所を見習ってくれるといいのに。
…ママと話してたんじゃないのかって?
そうなんだけどね、
みゆきったら、さっき市役所に出かけちゃったのよ。
私をほったらかしにして(笑)。
なんかね、今日〆の手続きがあるのを思い出したとか。
あら、いいのよ、謝らなくたって、全然気にしてないから。
相変わらず、ボクのママはマイペースで最高、大好き(笑)。
それでね、ボクくんに用があるのを思い出したから、こうしてお部屋に来たんだけど。
ずばり聞くわ。
ボクくんさ、娘の花菜と夕菜の二人に耳かきしてもらった?
やっぱり…。
で、どうだった?
…良かった?
本当に??
清水の耳かきはね、最高じゃないといけないの。
だから、二人にも、私が耳かきの腕を認めるまで、家族以外にしてはダメって言っていたのよ。
…あんなに気持ちよかったのに、認めてなかったのかって?
勿論。
私に言わせたら、まだまだ。
花菜なら、そう…、あと2年くらい?
夕菜ならその倍以上は頑張らないとダメだと思う。
それでやっと、清水の耳かきを名乗れるレベル。
随分、びっくりした顔。
でも、そうなのよ。
清水の耳かきは一日にしてならず。
それにしても、ボクくんってば、隅に置けないわよね。
夕菜はともかく、しっかりものの花菜まで落とすなんて…。
どれだけ、おねだり上手なのかしら。
ぁ…、
ボクくん…さ、
申し訳なさそうな顔してるけど、別の事考えてるでしょう?
“本当の清水の耳かきを味わってみたい”って。
やぁねぇ。
バレバレだから。
ボクくんなら…そう考えて当然。
ん…。
いいわ。
してあげる。
してあげるから、私の耳かきと花菜と夕菜の耳かきを比べて頂戴。
ボクくんの判断次第では、二人を許してあげてもいいし。
ああ、でも、二人を贔屓した判断はダメよ。
嘘ついても、私には…(迫力を込めて)わかるからね。
…勿論?
約束よ。
それじゃ、みゆきが帰ってくる前に終わらせないとだから、早速、横になって。
私のココに、ね。(太ももを叩く)
そうよ、ひ ざ ま く ら★
耳かきをするなら、当然、コ…コ(太ももを叩く)。
大人の女性の膝枕は初めてでしょう。
ふふ、
花菜や夕菜とはまた違う寝心地だと思うわ。
(膝枕開始)
どう?
しっとりとした…肉感。
でも、ふんわりとした…肉感。
若いと、この寝心地にはならないのよ。
たまらなく、いいでしょ?
…匂いもいい?
あら、さすが、鼻が利く。
私はね、膝枕で一番いい香りがするように、位置を考えて香水をつけてるの。
ただ無遠慮に、香りを振りまかない。
常に、耳かきを想定して身だしなみを整えるのが、耳かきを施す清水の女性の務め。
それでね。
ディナーに前菜があるように、
スポーツに準備運動があるように、
耳かきの前にもする事がある。
それはね、リラックスを促して、心をほぐす事。
そうすることで、耳かきの気持ちよさを倍増させる。
香りは勿論、そういうヒーリング効果のある音楽を流すのもいい。
例えば…。
(BGM始)
いいでしょう?
心に染み渡る。
十分にリラックスが出来る…。
頭を撫でながらだと、尚良し…。
いい子…。
いい子。
イイコ。
イイコ…。
(終)
そろそろ、頃合いも…十分。
まずは、ボクくんの耳の中を、拝見。
!
ちょっと、なあにこれ…、
埋まってる?
大げさじゃなくて、そんなレベル。
ボクくん、二人に掃除してもらったのってそんなに前じゃないわよね??
それなのに、これ…って。
ボクくんの耳って耳垢が溜まりやすいのかしら…。
取ってくれっていわんばかりの、たまり具合。
(ゴクリ)
二人が、ボクくんの耳の中を覗いた時の気持ちが、想像できる…。
これは、燃える。
清水の耳かきの本気が出せる…。
(シャキーン)
取り出したるは、清水家に代々伝わる耳かき。
とはいっても、普通に竹製で、かつ、反対側に梵天のついたオーソドックスなものだけどね。
母から譲り受けた大事なものなのよ。
いつか、花菜か夕菜に譲る時がくると思うけど。
…二人は良く見えるようにライト付き耳かきを使ってた?
あれは見やすいし、いいものね。
私も一応持っているわよ。
今日は問題なく見えるからこの竹の耳かきを使うけど。
清水はね、ヘラ型でも、ののじ型でも、スパイラル型でも、ピンセットでも、耳垢がわかりやすい黒い綿棒でも、綺麗に耳垢が取れれば、なんでもいいの。
弘法(こうぼう)筆を選ばず。
そうだ。
ボクくん、耳の入り口から鼓膜まで何センチだか知ってる?
…10センチくらい?
それがね、平均たったの3センチ。
しかも、耳垢がたまるのは耳の入口から1センチあたりまで。
意外に浅くて、びっくりでしょう。
耳かきのゾクゾク感が距離感を惑わせているのね。
耳かきが耳の中を探る…あの、得も言われぬ感触…っ。
ボクくんも、好きでしょ?
でしょ?(笑)
それじゃ、いっぱい…ゾクゾクしなさい。
ほら、耳かきが、剣先が…、
耳の穴に近づいていく。
近づいて、近づいて…、
近づいた。
耳かきが耳の穴に入る…入るよ。
ほら、耳に意識を集中して…、
(SE)
入…った。
入ったの…わかる?
ふふ。
ボクくん、いい顔してる。
恍惚ってこの顔の事を言うのね(笑)。
入れただけで、こうなっちゃった(苦笑)。
耳かきを始めたら、どうなっちゃうのかしら。
まずは、カップのハーゲンダッツをスプーンですくうように、
優しく、一掻き。
(SE)
ぅわっ。
一掻きしただけで、こんなに?!
薄黄色のフケみたいな耳垢が…入れ食い。
(SE)
いいわぁ…。
こんな風にいっぱい取れる耳かきは、久しぶり。
(SE)
凄い、これは取る方も…楽しい♪
(SE)
でも、いっぱい取れるからといって、荒く雑にしない。
いっぱい取れるからこそ、基本に忠実。
(SE)
丁寧に、優しく。
これが、大事。
(SE)
耳毛を掻き分けるように、一掻き。
(SE)
耳の壁をぐるりと、一周。
(SE)
壁を沿うように、一周。
(SE)
ふぅ…。
これだけで、すごい量。
でも、まだちょっと残ってるわね…。
(SE)
続けて…、続けて…。
(SE)
掻き出す。
(SE)
(ゆっくり)
優しく…、掻き…出す。
(SE)
よし…。
これで、道が開けた。
これで、奥に手を出せる。
手前を処理しないと、奥に手を付けられないなんて、まるでトンネル工事。
その奥だけど…、
ざっと…見たところ、
特に、問題児も、主(ぬし)も…いなさそう…ね。
全体的に耳の壁にこびりついてる感じ。
(SE)
ボクくんの耳なら、魑魅魍魎が住んでても驚かなかったけど、
さすがにもっと放置しないと、そこまでにはならないみたいね(笑)。
(SE)
この手の耳垢は、耳かきの剣先を滑り込ませて、剥がす。
(SE)
耳の壁と耳垢の間に、剣先を滑り込ませて、ぺりぺりと。
(SE)
痛くしないように、剥がす。
(SE)
それが、清水の技。
(SE)
米粒の…半分くらいかな。
耳垢にしては、なかなかのものが取れた。
(SE)
それと同じようなのが、まだまだ…ある。
うふふ。
(SE)
伝説級の大物がないのは残念だけど、
これはこれで、
(SE)
テンションがあがる。
(SE)
次から次へと、ぺりぺりって、
(SE)
快感以外の何者でもない♪
(SE)
取る方も、取られる方も、最高の気持ちよね。
(SE)
ほら。
(SE)
ほら。
(SE)
はい雪のようにひらひらとした耳垢が…、
(SE)
一枚、
(SE)
二枚、
(SE)
あぁ、いつまでも取っていたい…。
(SE)×3
だけど、いつかは、取り尽くしてしまう…。
(SE)
はぁ、
名残惜しいけど、
(SE)
これが、最後の一枚…。
(SE)
よい…、しょっと。
(SE)
仕上げは、梵天で、耳の中の細かいカスを…一掃。
(SE)
ふぅっ。(耳の中のゴミを吹き飛ばす感じで)
あははっ。
ボクくん、飛び上がっちゃった(笑)。
これをやると、みんなそういうリアクションするのよね。
あらあら、口のはじから涎が垂れちゃってる。
ほら、拭いてあげるわ…、
(SE)
もう、されるがままね…。
そんなに、気持よかった?
そう♪
そこまで気持ちよくなってくれると私も嬉しいわ。
まだ片耳あるからね、もっと気持ちよくなれるわよ。
それじゃ、反対側を向いて。
よい…しょっと。
はい、よく出来ました♪
それじゃあ、こっちも遠慮しないで、気持ちよくなってね。
どれ…どれ(語尾で驚く感じ)?!
え…っ。
なにこれ…、
主(ぬし)じゃない?!
耳垢の主よっ。
覗きこまないでもわかるくらい主張してる…。
凄い…、
こんな大きい耳垢、日常で聴こえづらくなるレベルだと思うんだけど、大丈夫?
…特に?
そ、そう…。
ともかくっ、これは今すぐ取るしかないわ。
こんなの見つけちゃったら取らずにはいられない、一秒たりともほっとない!
ただ、ここまで大きいと、ピンセットの方が取りやすいわね。
勿論、用意してあるから、心配しなくていいわよ。
(ピンセットSE)
ふふ。
清水の耳かきに抜かりなし♪
それじゃ、主退治といくわよ。
大物相手で大事なのは、しっかりと掴む事。
掴む位置が半端だと引っ張った瞬間、千切れる恐れがあるからね。
それに耐えうるポイントを、探り出し、掴む。
(SE)
掴む力も大事、強すぎず、弱すぎず。
原型をとどめたままで、掴み出す。
こんなレアな耳垢だもの、潰れちゃったりしたら、大変。
(SE)
狙ったポイントをフェザータッチで掴んだら、
ゆっくりと、壊さないように、そろそろと、掴み上げる。
一気に…は禁物。
動かないでね、ボクくん。
ここが、一番重要だから。
じっとよ、じっとしてて。
(SE)
ガサガサって…凄い音。
もう…、一息。
(SE)
そぉ…れっ。
(SE)
よしっ。
取れたっ!
うっわぁ、これは凄い!
改めて見ると凄い迫力。
縦横、文句なし、厚みもなかなかで、貫禄十分。
耳垢の主に相応しい、伝説のセンチメートル級!
耳掃除歴の長い私でも、こんなのは…久しぶり。
いやぁ、本当、びっくり。
感動モノね…。
ほら、ボクくん、見てよこれ。
見ないとダメよ。
こんな耳垢、滅多に見られないから。
ほら、見られる?
凄いでしょう?
こんな耳垢が入ってたボクくんの耳も凄いけど…(笑)。
そうだ、花菜と夕菜にも見せたいから、これ、頂いていいかしら?
いい?
じゃあ、遠慮なく…。
(SE)
あ…っ、
すっかり、主に気を取られてたけど、まだ、耳かきは終わりじゃないから。
細かい耳垢を取らないとね。
(SE)
あら…、
(SE)
綺麗。
(SE)
主って、こっちの耳垢全部が集まってできたのかって思えるほど、それ以外は綺麗…。
(SE)
ボクくんの耳って不思議。
ふぅっ。(耳の中のゴミを吹き飛ばす感じで)
うふふ。
また跳ねた。
綺麗だったので、梵天は省略してみたわ(笑)。
あぁっ、ほら、また垂れてる。
涎、涎…。
(SE)
これでよし。
大丈夫? 意識ある?(笑)
色々驚かせたけど、耳はすっかり綺麗になったからね。
でも、耳掃除はまだおしまいじゃない。
清水の耳かきは、耳たぶマッサージもセット。
…花菜と夕菜にも、してもらった?
そう、ちゃんとやってたのね。
それは良かった。
二人がしたのは、耳たぶを引っ張ったり、ワンタンにしたり、つまんだり…的なマッサージ?
成る程。
いいチョイスね。
今言ったマッサージは、簡単で、効果もバツグンなの。
でも、他にも良いマッサージはあるのよ。
今日は特別にそれを教えてあげる。
いい?
(ゆっくり)
まず、両耳に両手を添えて。
そうしたら、ハサミのように人差し指と中指を広げて、耳を挟む。
しっかり、耳全体を挟んでね。
挟んだら、まずは、下に滑らす。
挟んだまま、下へ。
耳たぶまで滑らせたら、上へ。
指の股が耳たぶにくっつくまで、上に。
それで1往復。
これを、30回、繰り返す。
(さらにゆっくり)
下、上×15
15。
あと、半分よ。
下、上×15
30っと。
いいわ、お疲れ様。
ちなみに、今の耳バサミマッサージは、耳の後ろの降圧溝(こうあつこう)も刺激するから、高血圧にも安心。
ボクくんも、今から予防しておかないと、ね(笑)。
あとは、耳を満遍なく、もみほぐすだけでいい。
3分ぐらいかけて、満遍なく、じっくり、優しく。
簡単でしょ?
耳たぶがポッポッと熱くなるまで…続ける。
耳に集まった約110のツボを確実に刺激するには、結局これが一番。
ツボに対応した体の機能を活発にして、若々しく保つ。
ボケ防止にも、って、これはさすがに、ボクくんには早いわね(笑)。
ともかく、風邪や、疲労回復、勉強疲れにも効くし、おすすめよ。
覚えておいて損はなし。
3分、計ってみるからやってみて。
(SE)
よし、そろそろ…ジャスト3分。
長かった?
短かかった?
ともあれ、これで、全て…おしまい。
お疲れ様。
さて…と、
花菜と夕菜と比べて、私の、清水の耳かきはどうだった?
…すっごく良かった?
でしょう。
これが本当の清水の耳かきだから、しっかり覚えておいてね。
でもね、二人の事は許してあげるわ。
だって、ボクくんの耳ってやばいくらい掃除し甲斐があるし(笑)。
これは、しょうがないわ。
やる方も、凄く楽しくなっちゃうもの(笑)。
おっと、いけない。
もう、こんな時間。
さすがに、みゆきも帰ってきそう。
隠れて耳かきしてるの見られたら、ややこしいことになりそうだし、この辺で、ね(笑)。
あ、
耳かきされたくなったら、
いつでも、うちにいらっしゃいな。
花菜と夕菜と一緒にやるのも楽しい…かもね(笑)。
それじゃ、勉強がんばって♪