就寝「ご本読んであげる」
★★【設定】★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
メインキャスト
【ア】アーニャ(赤色髪双子のわがままお嬢様)
【ミ】ミーニャ(水色髪双子の内気なお嬢様)
主人公の部屋に夜、小さな靴音とノックのない来訪者が二つ。
アーニャとミーニャの双子の姉妹がパジャマ姿で飛び込んできた。
自慢げにアーニャが広げたのはエルフの国で誰もが知る絵本。
どうやら二人は大好きなお兄ちゃんに二人は絵本を読み聞かせてくれるようだ……
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ア:ベッドにダ~~イブ!ど~んっ!
ア:お兄ちゃん、寝てる?寝てたら起きて起きてー♪
ミ:ア、アーニャちゃん…………ね、寝てたら起こしちゃダメだよぉ……
ア:だって、ミーニャだよ?お兄ちゃんに絵本読ませてあげたーいって言いだしっぺ
ミ:そ、それはそうだけど……お、お兄様ごめんね。
ア:ほら、ミーニャも布団入る入る。読も読もっ☆
ミ:
うぅ、え、えっと、お邪魔……します……
んっ……お布団暖かい……お兄様の匂い……ん~///
ア:
ほ~ら、ミーニャ、クンクンしてないで本よむよー☆
ミーニャってね~、どこに居てもお兄様お兄様ばっかり言うんだよ。ふふっ
ミ:ア、アーニャちゃんっ!?だめぇ!言っちゃだめぇ……ぅぅ~
ア:はいはい、ほら、読むよー。
ミ:むぅー
ア:
ちゃんとかわりばんこしたげるから。
お兄ちゃんも好きなときに寝ていいからね☆
じゃぁアーニャが先に読むよっ☆
……
これはね、お母さんが読んでくれたごほんなんだー。
……えっとえっと…………
------※------ [ 本読み ] ------※------
『色の無い猫』
こほん、
それは昔々、本当にあった一匹のネコのおはなし。
粉雪を降り掛けたように美しいネコがいました。
ネコは森で生まれた時からひとりぼっちでした。
でも、寂しいとは思いませんでした。初めからひとりぼっちだったからです。
ある日のこと。
騒がしいので山を降りると、大きな大きなお家を見つけました。
ネコはにゃあにゃあ。『なにかあったの?』と鳴きました。
すると、『お城』と呼ばれる大きな大きなお家の、上の方にあるキレイな窓から、
銀の飾りを頭につけた長耳(ながみみ)の女の子がピョコっと顔をだしました。
長耳の女の子は降りてくると、ネコを見て嬉しそうに言いました。
『まぁ、なんて真っ白いネコさんなの。今日は穢れを払うお祭りなの。純白のあなたは神様の贈り物ね』
彼女はネコを『シロ』と名付けて、女の子より大きな長耳の人たちに見せました。
『王女様、こんな美しい猫、見たことがございません』
『我々の祈りが届いたに違いありません』
みんなはそう言って大喜びし、ネコはおいしい物をいっぱい貰い、沢山撫でてもらいました。
ネコはひとりぼっちじゃなくなったと思いました。
それからシロは町で人気者になりました。
シロが歩けば大きな長耳も小さな長耳もみんな笑顔になりました。
大きな大きな『お城』というお家にも入れて貰え、女の子と毎日のように遊びました。
ネコのシロは幸せだと感じました。ずっとこのままがいいと思いました。
『にゃぁ』
生まれてきてよかったと鳴きました。
……
ミ:アーニャちゃん、ミーニャも……
ア:あ、ごめんごめん、はい☆
ミ:
うん、ありがと……お兄様、続き……読むね……♪
えとえと……こほん
…………
……
そんなある日のことです。
甘い匂いに誘われて、一軒のお家に入ると、そこには大きなタルが並んでいました。
中を覗くと、黒くて甘~い果実のジュースがたっぷりと入っていました。
ネコのシロはタルの上に飛び乗って舐めようと首を伸ばしますが届きません。
それでもおいしそうな匂いが、クンクン、クンクン漂ってきます。
シロは我慢できず、体をタルに傾けました。
すると爪がツルっとすべり……ざばーん!
なんとか溺れずには済みましたが、シロのカラダはジュースでずぶ濡れ。
慌てて体をブルルッと揺らしましたが、黒い色だけは身体から離れてくれません。
でも、幸せなネコのシロはまぁいいや。と思いました。
大きなお城に帰れば、女の子が洗って綺麗にしてくれると信じていたからでした。
でも、外へ出ると、あんなに優しそうだった長耳の人たちの顔がシロを見た途端に怖い顔に変わってしまいました。
それだけではありません、擦り寄ると、『病気を運んだのはコイツに違いない』
と手で弾かれ、石を投げつけられ、怒ってしまいました。
ビックリしたネコのシロは女の子のお部屋に戻ろうと走り去りました。
柔らかい手で抱かれ、撫でられ、暖かい布団で一緒にスヤスヤ寝ようと思ったからです。
しかし、お城の前に立っている『門番』と呼ばれる長耳にも邪魔され、入れてもらうことができませんでした。
ネコはひとりぼっちに戻ってしまったと思いました。
でも、寂しさに怯え、眠れず、もう山に帰ることはできませんでした。
それから黒ネコのシロは町で厄介者になりました。
お腹が空いたので店の物を食べると、凄い声で怒鳴られました。
黒ネコが横切るのを見た長耳の人々は病気がうつると逃げ出しました。
黒色のシロは不幸だと感じました。ずっとこのままは嫌だと思いました。
『にゃぁ』
こんなことなら山で一人ぼっちでいればよかったと鳴きました。
……
ふわぁ~。はい、アーニャちゃん……
……
ふぁ~い……むにゃむにゃ……が、がんばるぞ~!
……
黒ネコのシロは考えました。たくさんたくさん考えました。
そして、やっぱり山に戻ろうと思いました。
でも最後にどうしても、銀飾りの女の子に一目会いたいと思いました。
黒ネコは初めて会った窓の外からにゃあにゃあ。『さようなら』と鳴きました。
すると、小さなお窓から、いつかと同じように
銀の飾りを頭につけた長耳の女の子がピョコっと顔をだしました。
長耳の女の子は降りてくると、黒ネコを見て嬉しそうに言いました。
『まぁシロ、お帰りなさい。どこへ行ってたの?そんなに汚れちゃって』
女の子は只一人、黒いのに、その猫をシロと呼んでくれました。
シロを抱きかかえると、門番を説得してお城に入れてもらい、石鹸で優しく汚れを洗い流してくれました。
元通りの真っ白いネコに戻ったシロにはお腹一杯の食べ物と温かな布団が待っていました。
けれど、女の子が朝起きるとシロの姿が布団から消えてしまいました。
女の子はどこへ行ったのかと首をキョロキョロ。
しばらくして白猫は口にネズミを抱えて戻ってきました。
賢い女の子は、それが猫なりのお礼だと理解し、アゴをワシャワシャ、褒めてあげました。
シロは大いに喜んで、街のネズミをドンドン退治していきました。
すると病気を運ぶネズミが減ったことで、流行病(ハヤリヤマイ)が減り始めました。
それを知ると、誰もが女の子……王女様を習って猫を飼うようになりました。
茶色い猫、三毛猫では足りなくなり、果ては忌み嫌われていた黒い猫まで飼うものも現れました。
シロはいつの間にか沢山の仲間とネズミを退治するようになり、本当の意味で独りぼっちではなくなっていました。
やがて女の子は女王と呼ばれるようになり、色の無い猫は女王の猫として多くのエルフや仲間達に愛されました。
ネコのシロは幸せだと感じました。
時が経ち、別れの時、シロは『にゃぁ』と一言……鳴きました。
そして色の無いシロは女王と色とりどりの子猫達に見守られながら……静かに天に召されました。
その後、エルフの国ではどんな色の猫も差別無く可愛がられ、皆に愛されているということです。
おしまい。
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ア:
ふぁ~、ぁ、お兄ちゃん寝ちゃった……?寝ちゃったね……
ミーニャ?
ミ:おにーたまぁ♪……すぅ……すぅ……zZZ
ア:
……アレ……ミーニャもう寝ちゃってるし……ふぁ……
ダメ……アーニャももう……寝ちゃうね……お兄ちゃん……ちゅ♪
ふふふ……お兄ちゃん……ふぁ
……すぅ……すぅすぅ……zZZ
…………
……
(寝息)
END