Track 1

チャプター1

ねえ教えて? どうしてこんなものを学校に持ってきたの? 今日は担任の中川先生が出張で、教育実習生の私が代わりを務めてるからって……大目に見てもらえるとでも思った? 医学部志望で成績優秀な君が、やっていいことと悪いことの区別がつかないはずないと思うんだけどなあ……。 年頃の男の子だもん。エッチな本の一冊や二冊持ってたって不思議じゃないけどさあ……。 …………ん? …………あれ?  ねえきみ、コレって…………普通のエッチな本じゃないよね。男が女に責められるところばっかり載ってるじゃないの。 コレ……SMってやつよね? まさかきみ…………こういう趣味があるの? 大丈夫。ほかの人には黙っててあげる。担任の中川先生にも言わないであげるから。 そのかわり、私には正直に話してくれないかな? ……ね? …………ふうん、そうなんだ。二ヶ月くらい前にSMのことを知って、それ以来夢中になっちゃったんだ。 ……え? 女の人に責められることばっかり妄想して、勉強も手につかなくなっちゃったの? テストの成績も、いつも一番だったのにこの前は二番だったって……。 それってそれほど問題なのかしら。私にしてみれば十分すごいと思うけど。 えっ!? な、なんでもないの。 それはまずいわよ。受験はもう半年後よ。このままじゃ合格できるかどうかわからないわねぇ…… ていうかきみ、あまり友達もいないみたいだし、もちろん彼女なんていないんでしょ? ……え? 大学に入ってから探すつもりだった?  うーん……そうはいっても、きみ、ちょっと冴えない感じだしなぁ……。 ……あっ、ご、ごめんね。ちょっときついこと言いすぎたかしら。 でもさあ、この本みたいにSな女の子ってなかなかいないと思うよ。女ってMの方が多いから。 …………ああ、なるほど……。それも悩みの一つなわけね。彼女は欲しい。けど、きみの願望を満たしてくれるような女の子を見つけられるかどうか……ってことよね? そういうことが気になっちゃって、勉強に身が入らないと。そうなのね? ……そっかぁ。じゃあ………………私が一肌脱いじゃおうかなあ。 ねぇ……私が、君の願いをかなえてあげよっか……?  え……?じゃないの。君のマゾ性癖……、私が満足させてあげよっか? 私……こう見えてけっこうSなんだよ? 嘘じゃないわよ。私、男をいじめるのが好きなの。特に、きみみたいな大人しくてオドオドした感じの年下の男の子が大好物なのよ。 ふふ……おいで。 慰めてあげる♪