Track 5

3.『優しく叱って欲しいとき』

おかえりなさい♪  お仕事、お疲れ様です♪  あ……。  だ、大丈夫ですか……!?  あなたの顔、真っ赤です……!  それに、体もふらついて……。  ひょっとして、熱があるんですか……?  あ……っ。 「大丈夫」って……そんなわけ、ありません……!  今だって、ママのところに倒れ込むように抱き着いてきて……!  あなたの体、とっても冷たくなってます……!  どうみても、熱があるじゃないですか……!  風邪、でしょうか?  やっぱり、毎日の疲れが出てしまったんでしょうか……!  今すぐ、ベッドで休んでください……!  ……え?  ……どうして、そんなに「大丈夫」だって言い張るんですか?  あなたは、どう見ても、ふらふらなのに……。  ……明日、大事な仕事があるから……休んでいられないんですか?  だから、何とか我慢する……?  そんな……。  …………ふぅ。  ……いいですか。  よく、聞いてください。 「大丈夫」じゃ、ありません。  明日、あなたは、お仕事に行ってはいけません。  分かりましたか?  ……いいえ、違います。「周りの人に風邪をうつしてしまうから」というわけじゃ、ありません。確かに、そういう理由も、ないわけじゃないですけど……  ママが言ってるのは、あなたのことです。  よく、風邪を引くのは、「体調管理不足」だなんて言う人がいますけど……それは、間違っています。風邪を引くのは、仕方のないことです。絶対に、あなたのせいじゃありません……。  無理してお仕事に行って……倒れてしまったら、どうするんですか……?  ただの風邪だからといって、悪化すれば、取り返しのつかないことになる可能性だってあるんです……。  いくら「大事な仕事」でも……あなたの体以上に大事なものなんて、どこにもありません。  当たり前じゃ、ないですか?  なのに……どうして、そんなにお仕事をしなければいけないんですか? あなたの体よりも、お仕事のほうを優先しなければいけないんですか?  ママは……あなたが、心配、なんです……。  ひどい風邪なのに、無理をしようとするなんて……。  それは、絶対に、いけないことです……。  あ……今、気づきました。  大人になったら、誰も、あなたのことを叱ってくれないんですね。  当たり前のことを、誰も、言ってくれなくなるんですね。  ……だったら、ママが、ちゃんと叱ってあげます。  よく、聞いてください。  風邪を引いたときは、休んでください。  どんな理由があっても、ベッドでゆっくり眠ってください。  それは、絶対です。  分かりましたか? 約束してください。  守ってくれないと、ママ、怒ります。  約束を破ったら……あなたが、もう嫌だって言っても、このまま、ぎゅーーーってし続けちゃいますから……。  ……っ。  ……はい。  ……分かってくれれば、いいんです。  よかった……♪  いいえ……謝るのは、ママのほうです……。  ごめんなさい……。ママ、あなたの体調が悪いのに……怒ったりなんかして……。  熱、あがってないですか……?  でも……ママは、あなたに元気でいて欲しいんです。あなたに、苦しい目に遭って欲しくないんです。  それだけは、分かっていてください……。  ……はい♪  ん……あなたの体、冷たい……。  ……いいえ、気にしないでください♪ ママの体で温まってくれていれば、嬉しいです。  それじゃ……このまま、ベッドに行きましょう。ゆっくり、休んでください。  明日は、ママが、会社に電話してあげますね。  あなたは、何も気にしないで……風邪を治すことだけを、考えてください。  あ、そうだ……お腹は、空いてますか?  これから、おかゆ、作りますね。食べられるだけでいいですから、少しだけ頑張って、食べてください。お薬は……市販の薬しかありませんけれど、それを飲んでください。  お薬を飲んだら……ベッドに横になってください。  そうしたら……あなたが眠るまで、ずっと、ママがそばにいますから。  温かくして……いい夢を見てくださいね♪