3.『優しく叱って欲しいとき』
おかえりなさい♪
お仕事、お疲れ様です♪
あ……。
だ、大丈夫ですか……!?
あなたの顔、真っ赤です……!
それに、体もふらついて……。
ひょっとして、熱があるんですか……?
あ……っ。
「大丈夫」って……そんなわけ、ありません……!
今だって、ママのところに倒れ込むように抱き着いてきて……!
あなたの体、とっても冷たくなってます……!
どうみても、熱があるじゃないですか……!
風邪、でしょうか?
やっぱり、毎日の疲れが出てしまったんでしょうか……!
今すぐ、ベッドで休んでください……!
……え?
……どうして、そんなに「大丈夫」だって言い張るんですか?
あなたは、どう見ても、ふらふらなのに……。
……明日、大事な仕事があるから……休んでいられないんですか?
だから、何とか我慢する……?
そんな……。
…………ふぅ。
……いいですか。
よく、聞いてください。
「大丈夫」じゃ、ありません。
明日、あなたは、お仕事に行ってはいけません。
分かりましたか?
……いいえ、違います。「周りの人に風邪をうつしてしまうから」というわけじゃ、ありません。確かに、そういう理由も、ないわけじゃないですけど……
ママが言ってるのは、あなたのことです。
よく、風邪を引くのは、「体調管理不足」だなんて言う人がいますけど……それは、間違っています。風邪を引くのは、仕方のないことです。絶対に、あなたのせいじゃありません……。
無理してお仕事に行って……倒れてしまったら、どうするんですか……?
ただの風邪だからといって、悪化すれば、取り返しのつかないことになる可能性だってあるんです……。
いくら「大事な仕事」でも……あなたの体以上に大事なものなんて、どこにもありません。
当たり前じゃ、ないですか?
なのに……どうして、そんなにお仕事をしなければいけないんですか? あなたの体よりも、お仕事のほうを優先しなければいけないんですか?
ママは……あなたが、心配、なんです……。
ひどい風邪なのに、無理をしようとするなんて……。
それは、絶対に、いけないことです……。
あ……今、気づきました。
大人になったら、誰も、あなたのことを叱ってくれないんですね。
当たり前のことを、誰も、言ってくれなくなるんですね。
……だったら、ママが、ちゃんと叱ってあげます。
よく、聞いてください。
風邪を引いたときは、休んでください。
どんな理由があっても、ベッドでゆっくり眠ってください。
それは、絶対です。
分かりましたか? 約束してください。
守ってくれないと、ママ、怒ります。
約束を破ったら……あなたが、もう嫌だって言っても、このまま、ぎゅーーーってし続けちゃいますから……。
……っ。
……はい。
……分かってくれれば、いいんです。
よかった……♪
いいえ……謝るのは、ママのほうです……。
ごめんなさい……。ママ、あなたの体調が悪いのに……怒ったりなんかして……。
熱、あがってないですか……?
でも……ママは、あなたに元気でいて欲しいんです。あなたに、苦しい目に遭って欲しくないんです。
それだけは、分かっていてください……。
……はい♪
ん……あなたの体、冷たい……。
……いいえ、気にしないでください♪ ママの体で温まってくれていれば、嬉しいです。
それじゃ……このまま、ベッドに行きましょう。ゆっくり、休んでください。
明日は、ママが、会社に電話してあげますね。
あなたは、何も気にしないで……風邪を治すことだけを、考えてください。
あ、そうだ……お腹は、空いてますか?
これから、おかゆ、作りますね。食べられるだけでいいですから、少しだけ頑張って、食べてください。お薬は……市販の薬しかありませんけれど、それを飲んでください。
お薬を飲んだら……ベッドに横になってください。
そうしたら……あなたが眠るまで、ずっと、ママがそばにいますから。
温かくして……いい夢を見てくださいね♪