プロローグ
あら、先生。
こんにちは。ようこそリフレクソロジー部へ。
ふふ、今日は何か、ウチにご用ですか?
……あ、放課後の見回りに。
ふふっ、そうでしたか。それはそれは、ご苦労様です。
私たちがこうして部活動に励めるのも、先生のような熱心な方がいればこそですわ。
いつもありがとうございます。ふふふっ。
良かったらどうぞ、ゆっくりしていってくださいね。
……え? ここはどういう部活か、ですか?
あぁ、先生、まだうちの学校にいらしたばかりで、ご存じないのですね。
ふふ、ここは、リフレクソロジー部ですよ。
はい、そうです。
少し長いので他の方からは、「リフレ部」、なんて呼ばれてますね。
あ……先生は、「リフレ」ってご存じですか?
ふふ、そうですねー。正確な定義とはまた違うのですが、リラクゼーションのための技術全般、くらいの意味ですかね。
あ、はい、そうです。マッサージだとか耳かきとか、そういう感じのイメージですね。
よくご存じで、ふふっ。
ええ、そしてここリフレ部では、そういった疲れた人を癒すリフレクソロジーの技術を磨くために、日々活動しているんですよ。
……といっても部員もあまりいないですし、そこまで活発に動いている訳じゃないんですけどね。ふふふっ。
んー、具体的にはそうですねー……。
日々身体のツボや、マッサージの技術について勉強したりー……あ、あとはたまに、お暇な生徒さんに協力してもらって、勉強した成果を試させてもらったり、とかですね。
ふふ、ええ、そうなんですよ。
運動部で身体を痛めて、部活に出られない方なんかに来ていただいたりして……これでも結構評判いいんですから。ふふふふっ。
ん……でも実は、今日は他の部員の方々もお休みですし、協力してくれる方も居ないみたいで。
ええ、ですから今日は、もう帰ろうかと思ってた所だったんですよね。
はい……なにぶん小さな部ですから仕方ないんですけど、こういう日も少なくなくて……。
ちょっぴり残念なのですけどね。ふふふっ。
ん……あ、そうだ先生。
もし良かったら先生、ウチのリフレ、体験していかれませんか?
ええ、ほら。ウチの学校、女子校でしょう?
ですから今までマッサージをさせていただく相手も、必然的に女性に限られてしまって……。
でも、やっぱり男性と女性では、身体のつくりや、力加減なども変わってきますでしょう?
……私たち、前々からどうにか男性相手の施術も経験できないかなーと思っていたんです。
そこで先生みたいな真面目で誠実な方なら私としても安心ですし、折角うちの部まで足を運んでくださったのですもの。
先生のお仕事の疲れを癒せて一石二鳥ですわ。
ね? 良い考えだと思いませんか、先生?
ですから是非ご協力を……。
【テンション上げるのここまで】
って……あっ、わ、私ったら、先生のご都合も考えずに、つい興奮してしまって。
ごめんなさい、流石にお仕事中にこんなお願いをするなんて、非常識でしたね。
……すいません。お恥ずかしい所をお見せしてしまって。
ご迷惑……でしたよね?
……あっ。
ふふっ、先生、お優しいんですね。
ん……でもやっぱり、私のわがままで先生のお手を煩わせる訳にはいかないです。
ごめんなさい先生。やっぱり私、今日の部活は終わりにしようかと思います……。
先生もきっと、お忙しいかと思いますし……。
それにこんな外れの教室でいつまでも一人で居ては、先生にご心配をお掛けしてしまいますもの。
ですからもう、今日は大人しく帰りますね。
ふふっ、先生も私のことはどうかお気になさらず、このまま見回りを続けて…………え?
あの、先生? 今、なんとおっしゃいました?
……え? いいんですか? リフレ……体験していただいても?
あのっ、でもでも、お仕事、お忙しいんじゃ……。
私のことでしたら、別に気を使っていただかなくても、大丈夫ですよ……?
こういう活動できない日も、あまり珍しくないんですから……。
え?
そういう訳じゃなく、先生もお仕事が一段落したところ……?
あらまあ、そうだったのですか?
ん……でしたらお時間的にも少しなら、余裕が?
まあ、本当ですか?
んー……でしたら折角ですし、お願いさせていただいても……構いませんか?
ふふっ、ありがとうございます♪
では折角ですし、お言葉に甘えさせていただきます♪
ふふふっ……♪
ん……って、あらいけない。
ふふっ、さあ先生、でしたらこうしていつまでも、立たせておくわけにはいきませんわ。
どうぞ、こちらのソファにお掛けになってください?
ふふふっ、勿論ですよ。
リフレを体験していただくことになった以上、先生はこの部のお客様ですもの。
くつろいでいただくのは、当然です。
ささ、ご遠慮なさらずにどうぞ?
ん……はーい♪
ふふっ、どうです? 結構、いい座り心地でしょう?
部費、結構奮発したんですから♪
ふふふっ。さ、では私は少し、施術の準備がありますから……先生はこのまま、もう少しだけお待ちくださいね? すぐに済ませてきますから。
ふふ、はーい。
ん……お待たせしました先生。
準備、終わりましたよ。
ふふふ……あっ、それじゃあお隣、座ってもいいですか?
あ、ええ。基本的にはここで、座ったまま施術していきますから。
ふふっ、はーい。それでは、失礼しますねー。
ん……よい、しょ……っと。
ん……ふふっ、ごめんなさい、先生。少し、窮屈ですよね?
いつもは女の子二人掛けですから、このソファで丁度いいんですけど、やっぱり男性だと、お身体も大きいんですね……♪
少し、肩が触れ合ってしまうくらいで……♪
あっ、いえいえ。私は気にならないですけど……先生の方こそ、嫌じゃないかなって……。
ふふっ、本当ですか? 良かった。
実際施術を始めていけば、もう少しマシになると思いますから、少しだけ我慢してくださいね。ふふっ。
ん……では先生。
それでは早速施術を……と行きたいところですけど、まずは改めて自己紹介でもさせていただいて、いいですか?
ふふっ、ええ。だって先生、まだこの学校にはいらしたばかりでしょう?
きっと私のことも、まだよくご存じないかと思いまして。
ふふっ、それでは改めまして……私、このリフレ部の部長を務めております、楓と申します♪
今日は精一杯先生のお世話させていただきますのでどうか、よろしくお願いしますね、先生♪
ふふふっ……ん、はい?
名字、ですか?
くす、もーう先生?
そんな名字で呼ぶだなんて水くさいですよ。
どうかそのまま楓、って呼んでください……♪
ふふ……え? だって、私は今から先生のお世話をする身ですもの。
そんな先生と教え子の関係なんて、お気になさらなくても大丈夫ですよ♪
ふふ、それに……リフレって、お客様にリラックスしていただくことが一番大事なんです。
一時(いっとき)とは言え体をゆだねる相手ですもの、そんなことを気にしていては、抜ける力も抜けないですよ。
ですから……ね? 施術中だけでいいですから……♪
どうかお願いいたします、先生?
ん……うふふふっ、ありがとうございます、先生♪
先生に名前で呼んでいただけて、私も嬉しいです♪ ふふふっ。
ん……さて、それでは自己紹介も済んだことですし、早速リフレ、始めていってもいいですか?
あまり遅くなってもいけないですしね。
はい♪