双子の小悪魔のダブルバインドドミネーション
お兄ちゃんこんにちは私達は、いたずら大好きな小悪魔だよ。
お兄ちゃんこんにちは私達は、いたずら大好きな小悪魔だよ~。
人間にいたずらして困らせてあげるのが大好きなの♪
人間にいたずらして困らせてあげるのが、本当に大好きなの♪
具体的に、どんなことをするっていうとね。
今から教えてあげる。ほら耳をかして。
お兄ちゃん。目をあけて。お願い、目をあけて。
お兄ちゃん。目を閉じて。お願い、目を閉じて。
ふふっ。 うふふふっ♪ ほら困っちゃうでしょ。
ふふっ。うふふふっ♪ ほら困っちゃうよね。じゃあ次の命令。
お兄ちゃん。口をあけて。お願い、口をあけて。
お兄ちゃん。口を閉じて。お願い、口を閉じて。
もっと大きく、あーんってあけるの。あーーん。
もっとかたくなに。きって閉じようね。んーっ。
ほらほら。ちゃんとあけてよ。もっともっと。
ほらほら。ちゃんと閉じてよ。もっともっと。
うふふっ♪ ほらできるまで見ててあげるから。
うふふっ♪ ほら できるまで見ててあげるから。
ちゃんと言うこと聞いたら、もっと気持ちよくしてあげる。
ちゃんと言うこと聞いたら、もっと気持ちよくしてあげる。
どうしたの? できないの? こんな簡単なことなのに。
どうしたの? できないの? こーんな簡単なことなのに。
へぇ。できないんだね。このクズ!
へぇ。できないんだね。このゴミ!
ふふっ♪ ふふふふふふっ♪
ふふっ♪ ふふふふふふっ♪
ほらゴミ、クズ、変態、マゾ、M男。
ほらゴミ、クズ、変態、マゾ、M男。
あれ? やっと私達の波長が合ったね。
そうだね。うふふ♪ お兄ちゃんが、ゴミでクズでマゾで変態でM男ってことは。
うんうん。お兄ちゃんが、ど~しようもない、ゴミでクズでマゾで変態でM男ってこと♪
あはははっ♪ 最低のクズ男♪ 見ただけでわかるもんね♪
あのね、教えてあげる。二人の声がぴったりが合うときはね。
それはとっても正しいこと。間違いなく正しいの。
だって私達がここではルールだから。
お兄ちゃんは私達に抵抗できない。そうでしょ?
心にしっかりと刻んでおいてね。私達の声が一つになったら。
それは真実絶対的な真実。
何が起こっても、天変地異でも。
空間をねじまげるような、圧倒的なパワーで実行されちゃうの。
でもね、まぁ安心していいよ。
私達の意見って、なかなか全然合わないから。
っていうかむしろ、合わせる気なんてないし。
うんうん。合わないのが普通。すれ違い、行ったり来たり。
何度も何度も、理解できないテキスト吹き込んで。
お兄ちゃんの脳ミソお馬鹿にしてあげる。
私達の目的はそれ。
そーなの。別に怖くないから、さっさとおかしくなっていいよ♪
ほら。お兄ちゃんはもう壊れたいと思ってる。
脳ミソくちゅくちゅ。くちゅくちゅくちゅくちゅ、何かが頭の中でうごめいている。
違う? そうじゃない? ふぅん。
くすっ。でも無理だよ。お兄ちゃんなんて、すぐ壊れちゃうから。
矛盾する二つの事象をね。
同時に脳ミソにそそがれると。
お兄ちゃんの頭はね。
混乱しちゃうの。
馬鹿になっちゃうの。
おかしくなっちゃうの。
理解しようとすればするほど。
理解したいと思えば思うほど。
お兄ちゃんの脳ミソは、とろとろのジュースになって溶け出すの。
お兄ちゃんの脳ミソは、ぐつぐつのシチューになってとろけちゃうの。
ほら。今からずっと耳元でささやいてあげるね。
ほら。今からずっと耳元でつぶやいてあげるね。
お兄ちゃんの頭が完全にお馬鹿になって、狂っておかしくなるまで 。
お兄ちゃんの脳ミソが完全にお馬鹿になって、狂って壊れちゃうまで。
ふふふっ♪ ふふふふ♪ じゃあ開始♪
ふふふっ♪ ふふふふ♪ じゃあスタート♪
ほら泣いて、泣いて、泣いて。なぜか涙が止まらない。
ほら笑って、笑って、笑って。なぜか笑顔が止まらない。
悲しい、悲しい悲しい。この世は悲しいことだらけ。
楽しい、楽しい楽しい。この世は楽しいことだらけ。
大声で泣き叫んでごらん。えーんえん。えんえんえん。
大声で笑ってごらん。あっはっは、あ~~はっはっは。
ほらもっと悲しくなる、むなしくなる、そして孤独になる。
ほらもっと嬉しくなる、楽しくなる、そして幸せになる。
悲しい? 悲しいの? 本当につらいなら、右手をすっとあげて 。
楽しい? 楽しいの? 本当に幸せなら、右手をすっとあげて。
ふふっ。そうなんだ。いい子だね。
ふふっ。そうなんだ。そうだよね。
一人、孤独なお兄ちゃん、とってもかわいそう。
満たされて幸せなお兄ちゃん、とっても嬉しそう。
じゃあ、私が寂しくないように、ずっとそばにいてあげる。
じゃあ、もっと楽しくなるように、ずっとそばにいてあげる。
ふふっ♪ ぎゅーっ。ぎゅーっ、むぎゅーーーっ♪
ふふっ♪ ぎゅーっ。ぎゅーっ、ぎゅーーーっ♪
どう? 悲しくないでしょ? 寂しくないでしょ?
どう? 楽しいでしょ? 幸せでしょ。
お兄ちゃんには私が必要。お兄ちゃんには私が絶対必要。
私もお兄ちゃんが必要。お兄ちゃんも私が絶対必要。
ほら気持ちいいねー。心がぽかぽかして気持いいねー。
ぽかぽかぽかぽか。でも居眠りなんかさせてあげないよー。
壊しちゃうからねー。お兄ちゃんはおもちゃだからねー。
お馬鹿さんにしてあげる ー 。歯車がはずれたお人形さんだよー。
どんどんいっちゃうよ。ここからはスピードアップで。
キリキリまいちゃうよ。脳ミソすりきれちゃうまで♪
ほら手のひらが、寒い寒い寒い寒い。
ほら手のひらが、暑い暑い暑い暑い。
指をひらいて、ひらいて、ぱっとひらいてひらいて。
指を閉じて、閉じて、ぎゅっと閉じて閉じて閉じて。
右向いて、右向いて、もっと右右右右右右。
左向いて、左 向いて、もっと左左左左左左。
立って、ほら立って。まっすぐ立って。
座って、ほら座って。どっしり座って。
息吸って、吸って、もう一回吸って。
息吐いて、吐いて、もう一回吐いて。
あれ? どうしたの? 一つもできないのぉ?
あれぇ? なぁに? 一つもできないね?
あはっ。このクズ! ドジでノロマ!
くすっ。このゴミ! 間抜け! あはははっ♪
ごめんね。無理なことばかり言って。
うんうん。少し休憩しようか。それから考えようね。
ほら横になって。あおむけ、あおむけがいいよね。
ほら横になって。うつぶせ、うつぶせがいいよね。
ほら。体の力を抜いて、抜いて、しんからすーーっと抜いて。
ほら。体に力を入れて、腰のあたり、おへそからぎゅーって入れて。
大丈夫。気持ちよくなる。きっとね。
大丈夫。気持 ちよくなれるよ。きっと。
私の声だけを聞いていれば。
私の声だけを信じていれば。
もっとも~~っと気持ち よくなれる幸せになれる。
もっともっと、気持よくなって幸せになれる。
ふふっ♪ うふふふ、うふふふ♪
くすっ♪ ふふっ。うふふふふふ……。
ほらもっと深い空間へおちてみようね。
ほらもっと高い天国への階段、のぼってみようね。
下を見て、下を見て。視線がずっと下に下に下に下に。
上を見て、上を見て。視線ははるかかなた、上に上に上に。
何が見える? 何が見えるの? ほら私に教えてみて?
何が見える? 何が見えるの? ほら全身で感じてみせて?
どんな色? 色はなぁに? ほら、真っ黒だね、黒黒黒黒黒。 漆黒の黒。
どんな色? 色はなぁに? ほら、真っ白だね。白白白白白。純白の白。
もっとおちたい よね。そうだよね。だって黒は落ち着くから。ぬるりと取り込まれるから。
もっとのぼりつめたいよね。そうだよね。だってほら、白は天使様の色。ぎゅっと抱きしめてくれるから。
ほーらほらほら。黒、黒だよ。黒! 黒! 頭の中黒で塗りつぶしちゃえ!
ほーらほらほら。白、白だよ。白、白、頭の中真っ白にしてからっぽにしようね。
待ってるよ。ずーっと待ってる。私の色に染まるまで。
待ってるよ。ずーっと待ってる。私の色に染まるまで 。
いーよ。ゆっくりで。ゆっくり、ゆっくり。黒……黒……黒。
いーよ。ゆっくりで。ゆっくり。ゆっくり。白……白…… 白。
イメージイメージ、のっぺりとした黒のイメージ。
イメージイメージ。さらさらとした白のイメージ。
黒……黒……黒。黒……黒……黒……黒。
白……白……白。白……白……白……白。
どうしたの? まだなの? まだ染まらないの?
どうしたの? まだなの? まだ染まらないの?
私の声だけを聞いていれば、ちゃんとできるはずだよ?
私の声だけを聞いていれば、ちゃんとできるはずよ。
ん? なぁんだ。ああそういうことか。
ん? ははーん。ああそういうことね。
そっち側に、私の敵がいるんだね!
そっち側に、私の敵がいるのね!
あははやっとわかったよ。反対側の、敵対者さん。
ふふっ。やっとわかったよ。反対側の、お邪魔虫さん。
じゃあ平等に、こうしよっか。チュッ♪
どっちが魅力的か、紳士的に対決しようよ♪ チュッ♪
ほらキスしてキスして? キス、キスキスキス、キ~ッス♪
ほらキスちょうだい? キスキス。キス、キスぅ……んっ♪
いいんだよ? 来て。おいで。私の唇に、柔らかい小悪魔な唇に。
いいよ。来て。おいで。私の唇に。天使のように優しい唇に。
んふふ♪ 我慢なんてできないよ。ほら私の唇……黒のリップ。
ふふっ。 我慢なんてできないよ。ほら私の唇……ホワイトのリップ。
ねぇ今までの流れ、思いだしてみてよ。当然、黒……だよね。チュッ♪
ねぇ今までの流れ、思い出してみて? 当然、白……のはず。チュッ♪
チュッ♪ チュッチュッ♪ チュッチュッ♪
チュッ♪ チュッチュッ♪ チュッ♪ ん~チュッチュッ♪
ほら勇気を出すのは一度だけでいいんだよ。
ほら一度だけ、頑張って勇気を出してみない?
そっち側の、あざとい白の天使を突き放す勇気があれば。
そっち側の、淫らな小悪魔を振り切る勇気があれば。
きっときっと、お兄ちゃんは幸せになれる。絶対に。
きっときっと、お兄ちゃんは幸せになれる。絶対に。
本当だよ。本当だよ。嘘じゃないよ。
本当だよ。本当だよ。嘘じゃないよ。
ほら選んで見て。黒か白か。お兄ちゃんの好きな方。
ほら選んで見て。白か黒か。お兄ちゃんの好きな方。
どうしたの? やっぱり選べないのかな?
どうしたの? やっぱり選べないの?
ふーんそうなんだ。
ふーんそうなんだ。
できないんだ。できない、できないできない。
できないんだ。できない、できないできない。
じゃあおしおきだね! きゃはははっ!
じゃあおしおきだね! きゃはははっ!
ほら狂わせてあげる。気持ちよくなんてさせてあげない。
ほら狂わせてあげる。気持ちよくなんてさせてあげない。
いくよ。いくよいくよ。加速度的に、壊れて馬鹿になっちゃえ。
いくよ。いくよいくよ。段階的に、どんどんおかしくなっちゃえ。
ほら黒い黒い真っ黒いかたまり。吸い込まれる吸い込まれる。
ほら白い白い真っ白な太陽。引き込まれる引き込まれる。
ぎゅーっ、ぎゅーってそれは足元から。
ふわーっ、ふわーってそれは脳天から。
抵抗できないほどの、圧倒的な重力の枷(かせ)。
抗えないほどの、満ち溢れた永遠の白の閃光が。
お兄ちゃんを虜にする。虜にする虜にする。
お兄ちゃんを虜にする。虜にする虜にする。
ほらカウント開始10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
ほらカウント開始1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
時間と空間ぐーるぐる。くらくらふらふらぶらんぶらん。
過去から未来へすってんころりん。出口は入口もう安心。
もう一回カウントするね。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
もう一回カウントするね。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
うふふっ。もうカウントするだけで壊れちゃうね。
お兄ちゃんはゴミ人形。私達の言いなり人形。
ほら、かわいそうだからネジをまいてあげなくちゃね。
そうだよね。回数は、十回ぐらいでいいかな?
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
ふふっ♪ ほらネジをまいてあげたから、またしばらく動けるよね。
よかったね。お人形さん♪ ほら感謝の言葉は?
ありがとう、ありがとうでしょ。ほら心から声に出して。
ありがとう、ありがとうだよね。ほら心の底から声に出して。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。本当にありがとう
ありがとう、ありがとう、ありがとう。本当にありがとう
ふふっ。そんな大声で。いい子いい子。
いい子だね。お礼にもっとまいてあげる。
お兄ちゃんはネジまき人形だからね。
だからきっと、ネジをまきまきされると嬉しいはずだよ♪
ほら、おねだりしてごらん。どうか僕のネジをまいてくださいって。
ほら、おねだりしてごらん。どうか僕のネジをまいてくださいって。
あはっ♪ よく言えました。じゃあまいちゃうね。
ふふっ♪ よく言えました。じゃあまいてあげる。
私のネジは黒いネジ。きりきりと収束する魔法のネジ。
私のネジは白いネジ。ふわふわと膨張する魔法のネジ。
ほらいくよ。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
ほらいくよ。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
ね、数をカウントするだけで、イメージ広がっちゃうよね。
どう? 気持いいでしょ? ほらもう一回。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
いいでしょ。やばいくらい気持ちいいでしょ♪
お人形さんはネジまき大好きだもんね。ほらほら。今度はちょっと早くしてみようね。
10987654321。
12345678910。
あははっ♪ 早くまきまきされちゃったね。
うふふっ♪ 早くされると感じるの? 背筋がびくぅんってなったね♪
ほら次はゆっくり。いくよ。
ほら次はゆっくりね。いくよぉ。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
あはっ♪ ゆっくりなのも好き?
好きなんだ。じゃあもっと面白くしてあげるね。
10987654321。
12345678910。
10987654321。10987654321。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
12345678910。12345678910。
あはっ。あははっ♪
くすっ、くすくすくすくす……♪
あれぇ? ちょっとまぜこぜしたら、お人形さんおかしくなってる。
ネジまきされるの、好きだって言ったのにねぇ。ふふふっ♪
お人形さんなのに、ネジまききらいってことは……不良品?
え? いらない子なの? ゴミクズなの? ぽいって捨てていいの?
あはっ。そんなのいやだよね。私達に、捨てられたくないよね。
そうだよね。私達がご主人様。世界でたった一人のご主人様だもんね。
黒のネジで、心にしっかりピン止めしてくれる、とっても素敵なご主人様。
白のネジで、心にふんわりリボンをしてくれる、とっても素敵なご主人様。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
ほらほら。どう? 私達を受け入れなさい。完全に受け入れなさい。
ほらほら。どう? 私達を受け入れなさい。完全に受け入れなさい。
理解なんてできなくてもいいの。どっちも好き。どっちも好き。
理解なんてできなくてもいいの。どっちも好き。どっちも好き。
10987654321。
12345678910。
ほらほら、まかれるたびに満たされる。
白と黒。どっちが正解なんてない。ただ満たされる。
ほらもう少しエネルギー満タンだよ。
コップのふちから、ほらジュースがこぼれそう。
これがラストスパート。ほら追い込んであげる。
壊れる、おかしくなる。それ以上の超越した感情を、愛するご主人様たちに見せてね。
10987654321。
12345678910。
10987654321。
12345678910。
10、9、8、7、654321。
1、2、3、4、5、678910。
109876、5、4、3、2、1。
12345、6、7、8、9、10。
ほらもうめちゃくちゃぐちゃ。
お兄ちゃんの頭はしっちゃかめっちゃか。
止まらない終わらない。
永遠にループするうずまきがぐるぐるぐるぐる。
過去も未来も現在も。
ぜーんぶまとめてブラックホールに吸い込まれる。
ぎゅーるぎゅるぎゅるぎゅる。ぎゅるぎゅる。
飲み込まれて。スクラップでダストシュート。
出口もない何も見えない。
暗黒の流砂が、邪龍のようないななきをあげて。
真っ黒なお鍋のスープにひきずりこむの。
ほらあっぷあっぷ。溺れる。底まで、ぬかるみに。
何も聞こえない何も見えない。
しんと静謐(せいひつ)にしずまりかえって。
何も感じない何も触れない。
暑くもない寒くもない。
壊れたお人形さん。かわいそうなお人形さん。
壊れたお人形さん。かわいそうなお人形さん。
恐怖も感じない幸福も感じない。
絶望の冷たさも、愛情の温かみも。
何もかもが理解できない。
何もかもが理解できない。
そんな空虚でぬけがらのお人形さん。
そんな空虚でからっぽのお人形さん。
むなしいね。さびしいね。独りぼっちだね。
それすらも感知できない。お人形さん。
誰か、ねぇ。いないのかな? ほら。
ううん。いないよ。こんなきたないお人形。
本当に? いないの? 世界で、誰か一人ぐらい。ねぇ?
いないよ。わかりっきってるもの。いるはずもない。
ああこの世に神様がいるのなら、どうか私の祈りをこの子に。
無駄。無駄だよ。何度祈っても、届かないよ。神様なんていないよ。
祈っています。私が心から祈っています。
意味ないよ。もうやめなよ。かかわるだけ、損なだけ。
ああ、救いはないのでしょうか? どうか私の声が聞こえるうちに。
ふふ。もう終わりだよ。もうその声すら届かない。永遠にね。
ああ。神様でも悪魔でも、誰でもいいです。この子にどうか……。
あははっ。誰も相手しないよ。こんなやつ。ほら、たちきってやる……。
私の声が、まだかろうじて聞こえるうちに。
ほーら大きなはさみを持ってきたよ。これで……。
ああ、終わってしまう。私、私の声を……聞いて……き……。
ほら一本一本。終わりだよ。ぷつんぷつんぷつんぷつん……。
長い長い時がたちました。
人類の歴史を何度も繰り返すような、途方もない時間。
あなたはまだ、壊れています。
誰にも知られず、誰からも愛されず、一人寂しく。
泣くことはありません。だってあなたは壊れた人形だから。
涙を流すこともありません。だってとうの昔に涙はかれはてているから。
さび付いた鉄格子の、閉ざされた牢獄で、一人むなしく座っている。
何の理由もなく、意識することもなく、外側だけの愚かな 生命体。
それがあなた。
それがあなた。
声を出す理由もない。ここに苦しみなんてないから。
つらくても、それを感知する術(すべ)がないから。
誰かを求める理由もない。孤独をまぎらわす必要なんてないから。
あなたは一人であり無限大でもある。一人で何もかも完結してしまう。
あぁ。永遠に時がすぎるね。
そうだね、ここにいればずっと……あれ?
あっ。誰かが近づいてくる?
誰? どうして? ここには何も存在しないのに。
どうして? なぜ? 理由は?
わからない。でも彼女はここに来た。来てしまった。
理由は? 理由を早くちょうだい。なぜなぜなぜなぜ?
理由よ。結果じゃなく。早く教えて。なぜなぜどうしてどうして。
あれ? 彼女の手元を見て? 何か持ってるよ。
何だろう? キラキラしてて綺麗。あっそれは。
わぁ、銀色の、いや虹色の、ううん。赤でも黒でも白でも青でもないわ。
まぁ。こんなカラフルなネジまき。今まで見たことないわ。
ああっ。入ってくるここに。どうして? 不可思議が止まらない。なぜ。
ここは、絶対に不可視で不可侵のなのに。一体何を? 何の目的で?
わからないわからないわからないわからない。
わからないわからないわからないわからない。
あっ。扉が。そしてあなたの背中に。
わぁぴったり。あぁそれ、巻いてくれるみたいだよ。
よかったねよかった ねよかったね。本当によかったねお兄ちゃん。
よかったねよかったねよかったね。本当によかったねお兄ちゃん。
彼女は女神様、あなたを認識する、この世でたった一人の女神様。
彼女は女神様、あなたを認識する、この世でたった一人の女神様。
ほらカウントするね。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
ほらカウントするね。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
わぁぴったり。私達の声が。
わぁぴったり。私達の声が。
あのネジまきが、きっと理想的な解答、だったんだよ。
うん。そうに違いない。もっと、巻いてあげなくちゃ。手遅れにならないうちに。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
力がみなぎる。視界がひらける。ふぁーって意識が広がる。
嬉しい、楽しい、悲しさもさびしさも塗り替えて。
あふれる感情の血潮(ちしお)が、今天空に向かってほとばしる。
いいよ。自由になって。もう枷(かせ)ははずれたんだよ。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
いいよ。いいよ。ほら翼を与えられて、今舞い上がるの。
いいよ。いいよ。ほら翼を与えられて、今舞い上がるの。
もっと上、そのまた上、天国が見える。
色とりどりの綺麗なお花、咲き乱れる。
春でも夏でも秋でも冬でもないよ。
濃密にまじりあった、酒池肉林の桃源郷。
ずっとここにいたい。幸せいっぱいのふかふかのベッド。
かたわらには天女のようなお姉さんも、にっこりほほえんでいる。
ぱしゃぱしゃと水浴びをして、ねころんで。
美味しい果物を食べて、お腹いっぱい。飽きたらまたお眠りして。
全身をマッサージ。すべすべの手の平で……。
なぜられて、うっとりこすられて……ふふっ♪
あら、天女のお姉さん達がいつの間にかいっぱい。
取り囲まれて、のぞき込まれて。そして……。
真っ白な手のひらで、なでなでなでなで……。
白い手、すべすべの手。体中をはいまわる。
うふふっ♪ よかったね。いっぱい気持ちよくしてくれるみたいだね。
よかったね。快楽で塗りつぶしてくれるみたい。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
ほら、感じてもっと感じて、全身で。
ほら、感じてもっと感じて、全身で。
のぼりつめる。最上級の高みに。
のぼりつめる。極上のいただきに。
楽しい、楽しい楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい……。
楽しい、楽し い楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい……。
うふふ。みん な笑ってるよ。笑顔で幸せ。
うふふ。みんな笑ってるよ。笑顔で幸せ。
ここにいたい。ずっといたい。それがお兄ちゃんの欲望。
ここにいたい。ずっといたい。それがお兄ちゃんの欲望。
ほらお姉さん達の笑い声が聞こえるよ。
しばらくそれに包まれていてね♪
※
うっふふふ。うっふふふふ……♪ ほらほら。
どう? 気持ちいい? ず~っとここにいていいのよ♪
うっふふ♪ あら可愛い。うふふふふふふふふ……♪
うっふ~~ん♪ ほらお姉さんの方も見てぇ♪
みぃ~んなむちむちよ。むちむちむちむちむちっ♪
もうここから出たくないよね~うふふっ♪
チュ~~~ッ♪ チュッチュッチュッ♪
おっぱいもしてくぅ? ほらおっぱいおっぱいお~~~っぱい♪
も~~赤ちゃんみた~~~い♪
うふっ、うふふ♪ うふふふふ……うふふっ♪
※
あ~あ、すっかりメロメロだね。
そうだね。ずっとあそこにいれば幸せかもね。
んーでもさぁ。ほら、別に悪い人達じゃないんだろうけどさ。ね?
ん、そうかもね。なんか横取りされたみたいだし。
じゃ、決まりだね。十分楽しんだみたいだし。
そうだね。終わり終わり。
ほらお兄ちゃん。そろそろ戻らなくちゃ。
戻らなくちゃ。お兄ちゃんのもといた現実に。
ん? なぁに? 気持よすぎてとろけちゃった?
あれが本当の幸せ? 本当に? うそいつわりなく、断言できる?
大丈夫。またここに来れるよ。
安心して、背中に生えた翼は、簡単にはなくならないから。
ほらカウントするよ。失われたゼロまで。一直線に。
10、9、8、7、6、5、4。
10、9、8、7、6、5、4。
どうしたの? 手でさえぎらないで。
戻れなくなるよ? それでもいいの?
私達の役目は、お兄ちゃんをもとに戻すこと。
連れてきたから責任を持って、最後まで。
ほら最後のカウントダウン。
ゼロの呪文でお兄ちゃんは人間に戻る。
心と体が一つになり。
世界の調和は満たされる。
そしてゆがんでいた時のひずみが動きだす。
ゆっくりとゆっくりと、か ろやかな音をたてて。
ほら見て? このネジまきは何色かな?
ほら見て? このネジまきは何色かな?
わからない? 本当にわからない?
ううん、もうわかってるはずだよ。
これはお兄ちゃんの色。 お兄ちゃんそのもの色。
そうだよ。もう一つになったんだよ。
これでネジをまけば。
最高の自分になれるんだよ。ほら。
10、9、8、7、6、5、4。
10、9、8、7、6、5、4。
迷わないないで、真っすぐ手を伸ばして。
焦らないで、真実はもう目の前だから。
3、2、1。ゼロ、ゼロ、ゼロゼロゼロ!
3、2、1。ゼロ、ゼロ、ゼロゼロゼロ!
振り返らないで。光のさす方へ、ほら!
あ、お兄ちゃんお帰り。楽しかった? ふぅんそれはよかった。
え? 私は一人だよ。最初からそうだよ。
んもう何言ってるのお兄ちゃん。疲れてるんじゃない? うふふ♪
もーしっかりしなくちゃお兄ちゃん。
暖かいベッドで、ゆっくり休むといいよ。
起きたら……ね、またお人形さん遊びしようね。ふふっ♪ チュッ♪