トラック1 私にかまって
ふん~ふ~ん…ふん♪
ふふふ…いらっしゃい、勇者様。今夜は月がとても綺麗ね。
妖の夜…魔の力が強くなる時間……。
こんな時間にご用はなぁに?
……ふふふ、冗談よ。魔王様を倒しに来たんでしょ?
…あら、物騒な剣…怖いわ、勇者様。
私に向けるの?それ…
ねぇ、勇者様…そんな物騒なものは床に置いて、こっちにこない?
柔らかいベッドで一緒に休みましょうよ。
魔王様を倒すなら、まずは疲れをとらないと…でしょ?
大丈夫。私は悪いサキュバスじゃないの。ただこのお城で退屈しているだけ。
魔王様に閉じ込められて、とても退屈なのよ。侵入者は殺せって言われてこのナイフを渡されたけど…ほら、捨てるわ。
これで私は丸腰…ね?だから心配しないでこっちに来て…?
私、寂しいのよ。ここでずっと一人、ただ待ってるだけ。もういい加減飽き飽きしてるの…。
……すごく警戒してるのね。…そっか。私サキュバスだもの、誘惑されないか不安…?
ふふ。大丈夫。私はただのエキストラよ。だって、貴方は魔王様を倒しに行くのが使命なのでしょう?なら、私は関係ないわ。ただ構ってほしいだけ。言ったでしょ、とても退屈で…寂しいの…。ね、勇者様…お願い、少しだけでいいの。ほんの少しだけ…私に構って?
魔王様に自由を奪われた可哀想なサキュバスだと思って…
あぁ、優しいのね…。私、嬉しいわ、勇者様♡
ほら、ここ、お隣にいらして♪どうぞ♪
ね、少しお話しましょうよ…このベッドに一緒に寝転がって…ね?
こっちよ。私の右側、ここに寝転がって。
…ふふ。勇者様、意外と可愛らしい顔立ちなのね。結構私好みかも…♪
体も、私好みの体型ね…抱きしめたくなっちゃう…
ねぇ、貴方のカラダはとっても美味しそ…あっ…!ご、ごめんなさい…私、つい…。
はぁ…ダメね。クセというか性というか…男の人の体を見ると、どうしても欲しくなってしまって…そんな目で見ちゃって…。はぁ…ごめんなさい。大丈夫。最初言った通り、貴方を誘惑したり襲ったりしないわ。だって、貴方は私の言葉に耳を貸してくれて…こうして寂しくてつまらない生活をしてる私の隣に来てくれたんだもの。絶対襲ったりしないわ。
……あ…でも、こんなことを言ってしまったし、信用できないと思ったら別にいいわ。残念だけど…自業自得よね。どうぞ上の階に上がって。私は…また誰か来てくれるまで大人しくしてる…。
…え?信用してくれるの…?…あんなこと言っちゃったのに…?
……優しい…。貴方、とても素敵な勇者様なのね。よかった。すごく寂しかったの。あんなこと言っちゃったし、貴方は絶対行っちゃうって…。
クス…貴方変わってるのね。貴方みたいな人、初めて。なんだか私まで優しい気持ちになってきて…ふふ。初めて会ったのに、貴方と恋人になったような気分だわ。
…恋人…という表現は適切でないのかしら…。恋してる…感じ…というのが正しいのかしら…それとも、片思いしてる感じ…?
うーん…人間の言葉って難しいわね。上手く気持ちを表現できないわ。
勇者様はわかる?なんとなく、こう、ちょっとドキドキしてて、優しい気持ちになって、ふわっとしちゃうようなキュン…ってなっちゃうような…。…伝わるかしら?
え…?なんとなく…?…!嬉しい…♪ふふ。勇者様、私今結構嬉しいわ♪
こんな風に自分の気持ちを相手に伝えることって今までなかったし…相手を誘惑することばかり教えられてきたけど、こんなに嬉しいのね、気持ちをわかってもらえると…!
ふふふ♪なんだか幸せ。
…え?普通の女の子みたい?
…普通の女の子…か。…私には人間の普通がよくわからないけど、褒め言葉、なのよね?
ふふ、嬉しい…♪
あ…そうだ。私…何か役に立てることないかしら…
折角勇者様がこうして私に構ってくれたんだもの。恩返し…じゃないけど、何か勇者様の役に立てたら、と思って…。
うーん…。あ、そうだ…情報とか…?
…あ…でもこれは魔王様に対して裏切りになるのかしら…。うーん…
罰を受けるのは嫌ね…。でも、勇者様には何かお返ししたいし…。
そうね…でも、少しくらいなら…。
勇者様…知ってた?ここの魔王様は特殊なのよ?
勇者様、剣を持って入ってきたでしょう?…実はね、剣だけじゃ勝つのは難しいの。
ここの魔王様って…男じゃないのよ?女なの。とっても綺麗な女のひと。
勇者様は女の人に向けて思いっきり剣を振れる?…人間の女性の形をしているのよ?
……難しいでしょう?だって、勇者様優しいもの…。貴方みたいな人が、そんなこと、できないと思う。だから難しいの。一瞬でも迷いがあれば勝てない。魔王様はその美貌で勇者を魅了し、惑わせて…少しでもスキを見つけたら容赦なく殺してしまう。
魔王様は、そんな人。
……あ…ごめんなさい。無駄に不安を煽ってしまったかしら…;
不安を煽りたかったわけではなくて…貴方に知っておいてほしかったの。
魔王様の…弱点?倒し方というか…弱い所。
どうしてって…ふふ、だから言ったでしょ?恩返しじゃないけど…私に構ってくれたお礼。
それとちょっとした期待を込めて…かな?
…こんなこと言っちゃ本当はダメなんだけど…ね。私もこのお城から抜け出したいから…。
ふふ、言ったでしょ、退屈だって。毎日毎日こんな暗くて狭い部屋でひとりぼっち。
たまに来るのは魔王様を倒そうとする勇者様たち。でも彼らは私なんて眼中にないもの。
構ってくれないわ。たまにお誘いしても、警戒して全然心を許してくれない。…まぁ、仕方ないんだけど…。だからね、もういい加減飽き飽きしてるの。
勇者様には、私をこのお城から連れ出してほしい…。
ちょっとだけ、そんな思いも込めて。
…どう?納得してくれた?
…もちろん、信用できないって言うなら話すのやめるけど…
…教えてほしい…?ええ♪もちろんよ♪いいわ。教えてあげる。
あ…でも、これを私が言ったこと、絶対に魔王様には言わないで…お願い。殺されちゃうかもしれないから…絶対に言わないでね…!裏切り者って言われたくないの…。
……ありがとう。じゃあ、こっそり教えてあげる。
魔王様はね。実はとても要求不満な方なの…。そうよ、性的な意味で。
たまにね、私がお相手をして差し上げるときもあるわ。だから知ってるの。
彼女は満たされない性欲にいつもイライラしているわ。
だからね、貴方が魔王様に出会ったら、こう言うといいわ。
「魔王様、私は今、とっても性に飢えてます。今日は魔王様を退治しに来たのではなく、私の性欲を満たしてもらいに来ました。どうか私と交わって下さい」
そして剣を目の前で捨てるの。
そうすれば魔王様も警戒を解いて貴方に近寄るわ。
そして「まずは魔王様を気持ちよくして差し上げます」…と言ってキスするの。舌を入れて、ねちゅねちゅっ…って。その後は優しく鎖骨を触って胸を撫でて…そして
「私のモノも触ってください。貴方に入るための準備をしたいのです」と言うの。
それから…。
あ…早いかしら。説明って苦手なの。ごめんなさい。覚えきれないわね。
うーん…でも私文字は書けないし…。
流れで言えば、そうやって魔王様を快楽で溺れさせてその隙に…はい。これ、使って。
私が護身用にもってる宝石。これはね、先が鋭く尖っているでしょう?これを彼女の喉に突きさすの。この方法なら多少ためらったとしても、魔王様は快楽に浸っている最中…何もできないわ。本当よ。性行為中の魔王様は本当に無力…貴方もきっと危なげなく勝てるわ。
そして勝った暁には…私を迎えに来て。貴方と一緒にこのお城を出たいの。
うん。絶対迎えに来て…。あ、そうだわ。言葉で難しいなら、実際にシミュレーションして体で覚えるっていうのはどうかしら…?私を魔王様に見立てて、実際にセリフを言ったり、私を触ったりして…私がレクチャーしてあげるわ?どう?
ふふ、大丈夫。勇者様相手にチャームかけたりしないから。だって…ね?勇者様が魔王様を倒してくれたら、私は晴れて自由の身になれるのだもの。私に貴方を邪魔する理由なんて全くないでしょう?だから、安心して。
…うん。じゃあセリフの練習からね。気持ちを込めて言ってね?
じゃあ、私が言うセリフを繰り返して。
「魔王様、私は今、とっても性に飢えてます。」
はい。
……そうそう。
じゃあ次
「今日は貴女を退治しに来たのではなく、僕の性欲を満たしてもらいに来ました。」
はい。
…うん、いい感じ。
じゃあ次
「どうか僕と交わって下さい」
…そう、そんな感じ。じゃあもう一度。
「僕は今、とっても性に飢えてます。」
はい。
…うん。
「今日は貴女を退治しに来たのではなく、僕の性欲を満たしてもらいに来ました。」
はい。
…うん。
「どうか僕と交わって下さい」
そう。上手よ。じゃあ次は全部繋げて言ってみましょう。
「僕は今、とっても性に飢えてます。今日は貴女を退治しに来たのではなく、僕の性欲を満たしてもらいに来ました。どうか僕と交わって下さい」
はい。
ふふふ…素敵。
それで剣を捨てるの。今はもう剣を持っていないし、そこは省略して…次はキスよ。上手にできる?ふふふ♪